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21、アプルゴルド星 〜露店の準備

「うわぁっ、みんな大きいのじゃ!」


 猫耳の少女は、神都アプルの大きな門をくぐると、目をキラキラさせて叫んだ。僕も、思わず同じことを言いそうになったけど、必死にこらえた。


 想像していたよりも、何もかもが大きい。まるで僕達が小人こびとにでもなったかのような感覚だ。


 門から真っ直ぐにのびる道は、灰色っぽくて、舗装されているように見える。横断するのが大変なくらい道幅が広い。


 左側には、道に面して大きな建物が並んでいる。しかも、コンクリートっぽい質感の灰色の建物だ。神アプルゴルド様が鉱物系の種族だということに、僕は思いっきり納得した。


(落ち着いたオシャレな街だな)


 道と建物は灰色に統一されていて、それ以外の地面は白っぽい。だけど砂や土ではなく、やはり舗装されているように見える。


 右側の白い地面には、いくつかの露店が出ている。魔物の皮の敷き物に、売り物を並べるスタイルのようだ。店の人は地面に座っているけど、それでも、僕の背丈ほどはあるよね。


(何を売っているのだろう?)


 この場所は、門に通じる街道のような感じだな。神が住む街は、さらにこの先にあるようだ。はるか遠くに、さらに大きな門が見える。



 僕達がキョロキョロしていたためか、大きな獣人達の視線が突き刺さる。あっ、別の門から入った獣人達が、僕達を待っていたようだ。


 だけど、僕達を怖がらせてはいけないと感じたのか、距離を取っている。街に居た人達が僕達を見つけると、近寄りすぎないようにと注意を促す声も聞こえてきた。


「クラちゃん、なんだかすごく注目されてしまいましたね」


「マスターもシャインくんもティアちゃんも、すっごく可愛いからよ。だけど近寄って来ないから、安心して」


(うん? なんか変な言い方だな)


「クラちゃん、なぜ、皆は近寄って来ないのじゃ?」


 猫耳の少女がそう尋ねると、魔帝クラリス・ロールさんは、少し困ったように微笑んでいる。彼女が一緒だからだろうか? 皆は魔帝を恐れている?


(あっ、違う!)


 僕達が宇宙海賊かもしれないからだ。


 門番に、僕はポーションの行商人だと言ったけど、門の前でそれを聞いていた人達も、近寄って来ない。


 イロハカルティア星に観光に来る人達とは、明らかに反応が違う。僕の街では、大きな獣人達は、小さな種族を見てデレデレとしていた。だけど、この神都アプルの人達は、僕達を心配してくれるけど、信用はしていないんだ。


 この神都にも宇宙海賊が現れるのだろう。そして何より、神アプルゴルド様が姿を消していることが、不安なのだと思う。あっ、でも神がどこかに封じられていることは、住人は知らないかもしれないな。



「うーん、みんな、人見知りなのかもね〜」


「ふむ、恥ずかしがり屋さんなのじゃなっ」


「ええ、そうかもね〜」


 クラリスさんは、笑ってごまかしている。


 女神様は、僕の考えを覗いているだろうし、もともと理由がわかっていたかもしれない。あえて質問するのは、クラリスさんの反応を確認しているのかな。




「クラちゃん、行商をするには街の許可が必要ですか?」


 僕は、大きな声でそう尋ねた。周りの人達に警戒を解いてもらいたいと思ったからだ。


「ふふっ、マスターってば、張り切ってるわね。マスターの街とは違って、ここには管理のための施設はないの。道の上はダメだけど、道端なら自由に店ができるわ。この場所は、街への通路だから、街の中に移動しよっか」


「なんとっ! こんなに大きいのに、まだ街の中じゃないのか?」


(わざとだよね)


 猫耳の少女は、手に持っていた白い小さなスケルトンを放り投げてしまった。魔王カイさんは、また地面に落ちてバラバラになっている。


「あらあら、ティアちゃん、びっくりしちゃったのね。また、お人形がバラバラになってるわ〜」


 クラリスさんは、どうしようかと思案顔だ。


「大丈夫じゃ。カイは、こんなことでは壊れないのじゃ。ふむ、では、あっちの空いている場所で、露店じゃな」


 猫耳の少女は、タタタと駆け出した。白い骨は放置だ……。自由奔放なその行動に、クラリスさんは、湖上の街にいたときのようなデレデレとした表情を浮かべていた。


(これが狙いみたいだな)


 女神様は、大きな獣人の彼女を笑顔にしようとしているようだ。魔王カイさんは、気の毒すぎるけど……。白い骨はふわりと浮かびあがり、小さなスケルトンに戻った。



「ティアちゃん、そんなに走ると転んでしまうわ。ここは草原と違って、転ぶと痛いわよ」


(転ばないよ。もし転ぶなら、わざとだ)


 うん? と振り返り、誰かにぶつかっている猫耳の少女……。これは、やらかしたな。


「のわっ!? ごめんなさいなのじゃ」


 一応、謝って、走り去る猫耳の少女……。完全に逃げたようにしか見えない。


「いや、ひゃっ、こ、こんなに小さな子が……」


 ぶつかられた獣人さんは、まるで雷に打たれたかのように硬直している。僕は慌てて、駆け寄った。


「すみません、前を見てなかったみたいです。お怪我はありませんか」


「あ、あぅ、あ、また小さな子が走って……」


 僕の後ろからついて来たシャインを見て、再び固まっている獣人さん。


(うーん? あれ?)


 僕は、念のため、獣人さんのゲージサーチをしてみた。すると、体力はオレンジ色になっている。魔力は青色なのに、まさか女神様が激突したことでダメージを受けたのかな。


 周りにいる人達も見ていくと、この人だけが特別ではないことがわかった。みんな体力は、オレンジ色か黄色だった。


 ゲージの色は残量が、80%以上なら青、60%以上なら緑、40%以上なら黄、20%以上ならオレンジ、それ未満なら赤だ。そして死亡時は、体力ゲージが黒くなる。


 みんな体力が減っているのは、なぜだ? クラリスさんは、青色なのにな。



「ライト! はよ、並べるのじゃっ! はよ終わらせて、神竜の試練に行って、リボンをもらうのじゃ〜っ」


 場所取りをすると、ぴょんぴょんと飛び跳ねて、謎の威嚇をしている猫耳の少女……。いつの間にか、テーブルも出してある。


(はぁ、マイペースだなぁ)


 クラリスさんは、クスクス、ニヤニヤ、デレデレと笑っている。まぁ、いっか。



「すみません、これは、お詫びです。僕は、ポーションの行商人ライトと申します。少しですが、使ってください」


 僕は、モヒート風味の10%回復ポーションを3本、獣人さんに手渡した。これでも全快はしないけどね。


「えっ? あ、いや、ええっ? これはイロハカルティア星のポーションじゃないか。こんな高価な物は、もらえないよ」


 確かに、このモヒート風味の10%回復ポーションは、僕の店では、1本、銀貨1枚で売っている。この星の貨幣価値はわからないけど、安くはない。銀貨1枚は、日本円なら1万円くらいだ。


 ちなみに通貨は、黄の星系では似たような物を使っている。どこも、銅貨、銀貨、金貨が発行されていて、銅貨100枚は銀貨1枚と、そして銀貨100枚は金貨1枚と同じ価値だ。


 だから、銅貨1枚は100円くらいで、金貨1枚は100万円くらいなんだ。



「いえ、僕が魔道具で作っているので、気にしないでください。あっ、今から販売会をするので、よかったらお知り合いに……」


「ええっ!? この伝説のポーションを売りに来たのか。しかも、こんなに小さな子達が?」


(あっ、マズイかな)


 子供を働かせることが罪になる星かもしれない。


「この子は、僕の息子です。そして、あのぴょんぴょん飛び跳ねているのは……」


「ええっ? 坊やの子供? 子供が子供を……」


(どうしよう)


 クラリスさんは、女神様の方へ行ってしまったしな。


「ライト! はよはよ。早く並べるのじゃ! シャインが眠そうじゃぞ」


(助かった)


 僕は、固まっている獣人さんに軽く会釈をして、その前を通り過ぎた。




「はよ、並べるのじゃ!」


 そう言いつつ、地面に座り込み丸くなっている猫耳の少女……。まさか、寝てないよね? 


「むふぇっ」


 シャインが鼻を押さえた。


 女神様は、地面に何かを置いて、キュッキュとマジックを使って書いている。シンナーの臭いがくさいよな。なぜマジックなんか持ってるんだ? タイガさんが買ってきたのかな。


「ティア様、何をしてるんですか」


「むぅ? 飾りに決まっておるではないか。ほれ、シャイン、膨らませるのじゃ」


 なぜかゴム風船を手渡されたシャインは、慣れた手つきで膨らませている。そういえば、祭りのときには、風船も飾ってたっけ。これもタイガさんが買ってくるのかな。


「はぁぁ、かわいいのじゃ」


 丸い風船には、歪な形の肉球らしき落書きが描かれていた。


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