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第4話 奇跡の代価

ブクマありがとうございました。

なかなか毎日更新のペースに戻れなくてすみません。


 互いに抱き合ったルナとパルネ。

 二人だけの時間が過ぎてゆく。

 優しさや愛情の交換を終えた後も二人はそのままに。


「「うううっ」」


 どれくらいの時が経ったろうか、いつしか二人は声を詰まらせてむせび泣いていた。


 そんな二人を座り込んでじっと見つめるガスパルとデュオ。インフィニティもルナの気持ちが伝わるので静かに漂っている。

 騒ぎが治まった事を感じたのか、クララや囚われていた娘らも一人二人と集まって来ていた。


「なあ、爺さん。あの子にあの飛んでるのは何なんだよ?」


「ルナか……。わし等の希望になるのかもしれんな」


「希望? よく意味が解んねえけど。でもさっきの金色の光は……たしか神の色、その使いかなにかなのか?」


「ふっ、そうかも知れんし、そうでないかもな。痛たた」


 デュオの質問に答えていたガスパルだったが、彼の体も今回の争いの中でかなりの傷を負っている。そんなガスパルに気づいた妖精が二人に近寄って来た。


「うわ! マジかよ。おまえ妖精か? お伽話じゃねえのかよ」


「私は、インフィニティだ。しっかり名前を覚えてよね。それよりも爺様の怪我は酷そうだね。うんやっぱり酷いし、何か染みついてるみたいだ」


 インフィニティは、デュオへ偉そうな態度をとっていたが、ガスパルの様子を見てルナの側へ飛ぶと名を呼んだ。


「ルナ、そろそろいいだろう。こっちへおいでよ、爺様が大変だよ。さあ、早く」


 その声に、顔をあげたルナとパルネの二人。そろって泣き顔が酷い。


「もう、いつまで泣いてんの。ほらこっちこっち」


 なぜか、ルナに接する態度がいつもと少し違うインフィニティだった。


「あ、うん。ごめんね。いま行くよ。さあ、パルネも行こう」


 ルナが促すとパルネもコクンと頷き二人は立ち上がった。手をギュッと繋いで歩き出すと……。


「ほんとに二人は仲良しさんだね。いつまでもべたべたして……」


 インフィニティが二人の目の前でなにやらしゃべりながら飛び交っていると、心で深くつながっているルナへインフィニティの感情が伝わったようだ。


「ん、なあにインフィニティ、なんで怒ってんの?」


「知~らない!」


 二人の会話にパルネも話し出した。


「ルナ、この妖精さんは一体……」

「あ、後で話すよ」

「パルネと言ったね。私は、インフィニティだ! ルナの大の仲良しだからね」


 そんなやり取りをしていたがルナはガスパルの怪我が酷い事を思い出して急いで歩き出した。


 ガスパルの身体状況は本当に酷かった。顔面の火傷に似たただれや黒ずんだあちこちの皮膚。全身打撲といくつかの裂傷がみられ亀裂骨折もある。さらに感じるいびつな影があり浴びた呪いの残滓のようだ。


 ルナはガスパルの側にしゃがみ込んで、その顔にそっとふれるとまた一筋の涙が頬を伝った。


「なんて酷い顔なのガスパル。……いつも私やパルネを助けてくれてありがとう」


「何を言う。まさかお嬢に助けてもらうとは、わしも思わんかったわ。すまんの」


「そんな事ない。ここまで来れてパルネ達を助けられてのはガスパルのおかげだよ」


「ほう、少しはしおらしくなったようじゃな。ふふっ」


「ばか! ばか!」


 そこまで言うとガスパルの胸に飛び込んでいたルナ。それを愛おしくも思うガスパル。パルネもそんな二人のむつまじい姿に、まだ聞けてはいないが、それなりの事が沢山あったのねと感じているようだった。


「さあ、ガスパルの怪我を戻そう」

「うん」


 インフィニティの言葉に目元をこすりながら頷いたルナは、ガスパルに手を添えて意識を整えると精神集中を高めて行いった。

 胸元へ原初の素粒子(インフィット)を集めると、キラキラと光が胸の〝∞〟の印からもれはじめその光が手を伝いガスパルの体を包んでゆく。


 それは今までとは違う力の使い方だった。


 無意識のうちにインフィニティの〝神と悪魔の力〟を行使する事から始まり、家屋を破壊するなどコントロールが出来ていなかった力が、パルネを救出するために多くの経験や苦労を積みインフィニティもルナと共に成長をしている。


 インフィットを自らの体に集めて自分をガスパルに繋ぐことで、もたらされる恩恵は単なる肉体の修復ではなく、祈りや願いが込められた〝癒しの力〟に違いないだろう。


「おおっ」


 ルナからの温かい金色の光に包まれたガスパルの傷が見る見るうちに治ってゆく。ガスパルは驚きの声を漏らし、側のパルネはその光景に再び涙を流していた。ルナに合えた涙とは違う感涙であった。その様子にデュオも同様な思いを言葉にしている。


「ルナ、あなたは……女神様のよう」

「まじかよ、信じられんがこれは奇跡だ……」


 フ――ッとガスパルを包む光が消えると全ての怪我が癒えていた。

 そしてその奇跡の瞬間を目にした多くの者たちは、感動して言葉も漏らさずにひざまずく事さえ始めていた。


 そんな時間をパチパチッと焚火の音と揺れ動く灯りだけが包んでいた。




「ルナ、上手に出来たね」


「ふう、インフィニティのおかげだよ。んっ……あれっ?」


 急にルナは目の前が暗くなりそのまま倒れ込んでしまった。

 慌ててガスパルが支えて抱きかかえる。


「どうした。大丈夫か」


「あ、ちょっと疲れたのかも……」


「そうか、色々無理しすぎじゃぞ。休むがいいルナ」


「そうだね……ごめん、もう寝むくてダメみたい」


 本当に無理もない話だった。救出に挑む中で変質狂のウヌムに死の淵まで追い込まれ、インフィニティに助けられて傷は治ったが、体力や精神的な負担は大きく蓄積しそう簡単には回復はできないものだ。


 さらに、新たな癒しを与える為に自らの体へ原初の素粒子(インフィット)を取り込んだ事が、知らぬ間にその身を削る大きな負担となりルナに重くのしかかっていたようだ。


 パルネがそんなルナをガスパルから受け取ると、そっと抱きしめたがすでにルナの意識はなく満足そうな顔で、すやすやとと寝息を立て眠りについている。膝枕へと態勢を変えたパルネは、ルナの顔や髪をさすりながら思う。



 おやすみルナ……、随分がんばったんだね。



 周囲の皆もゆっくりと立ち上がり、ルナとパルネらを目指して歩き出した。身重の娘二人さえも体を起こして歩もうとする。

 その二人に気づいたデュオやクララや他の娘達も手伝い、いつしか生き残った全ての者が輪を描くように集まっていた。



 希望の子、ルナの元へ……。


インフィニティの力を自ら取り込み癒しと変えたルナ。希望の子は、この世界に何をもたらすのでしょうか。



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