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第2巻第15話:『日常の帰還、そして横浜羅刹の分裂』

数日後――。

 あの激しい抗争の夜が嘘のように、正義たちは何気ない日々に戻っていた。

「いやぁ、それにしても兄貴! あのゾンビ鮫島を真正面から叩き伏せるなんて、マジで最強すぎますよ!!」

 いつもの街並みを歩きながら、谷中が興奮気味に正義の強さを称える。

 その隣では、全身に包帯を巻いたヒロが、痛そうに顔を顰めながら愚痴をこぼしていた。

「あー、クソッ、身体中が痛え……。あの長浜って奴、マジで強かったすよ。最後は本当に気合いだけでしたわ」

 そんな仲間たちの賑やかなやり取りを聞きながら、正義は歩みを止め、遠くを見つめるように視線を鋭くした。

「ああ、鮫島は倒した。……だが、まだだ」

 正義の低く冷静な声に、谷中とヒロの表情が引き締まる。

「武田がまだいる。奴らがこのまま横浜に撤退したかもわからない。だから、まあ油断は禁物だ」

     *

 一方その頃――横浜にある羅刹の拠点では、すさまじい怒号が飛び交っていた。

「おい、鮫島よぉッ!!」

 高級スーツに身を包んだ男――武田が、デスクを激しく叩きつけて怒狂っていた。

「オマエらが負けたせいで、せっかくの東京侵攻も失敗だ! この損失をどうしてくれるんだッ!?」

 しかし、包帯だらけの身体でソファに深く腰掛けた鮫島は、鼻で笑って言い返した。

「知るかよ。だいたいなぁ、東京侵攻なんてのも、オマエが薬の利権を広げたいだけだろ。誰がそんなもんのために命張るかよ!」

「なんだと……!?」

 互いに一歩も引かない激しい口論。それは、羅刹という組織を根底から叩き割る引き金となった。

 元々、純粋な暴力を求める鮫島と、金儲けのために組織を利用する武田の間にあった溝が、ついに完全に決裂したのだ。

「オマエみたいなただの喧嘩屋なんざ、もう我が羅刹にはいらん! 消え失せろ!」

「ああ、そうかよ! この金持ち野郎がっ!!」

 この激しい喧嘩を契機に、鮫島、そして彼を熱狂的に慕う北山や長浜を含めた総勢二百名の精鋭が、一斉に羅刹を離脱した。

 激怒した武田は即座に命令を下す。

「離脱した鮫島派の羅刹を一人残らず叩き潰せ!」

 だが、鮫島たちがただ黙ってやられるはずもなかった。

「売られた喧嘩だ、徹底的に報復するぞ!」

 武田の指示を受けた武田派羅刹の襲撃に対し、鮫島派羅刹もまた猛烈なカウンターを開始。横浜の闇社会を巻き込む、最悪の内部抗争が勃発したのだった。

 分裂する巨大半グレ集団。その火の粉が再び東京へ、そして『遊侠』荒川正義のもとへと降りかかるまで、そう時間はかからなかった――。

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