第2巻第4話『うずいてしょうがない』横浜のゾンビ、宣戦布告に応じる
この鮫島のセリフ好きです
その頃、二百五十人の連合軍に包囲された羅刹の拠点ビル。
不法占拠された薄暗いフロアの窓から外を見下ろしていた幹部・鮫島は、地鳴りのように響くバイクの爆音を聞いて、興奮に顔を歪めていた。
「なんだ? おいおい、なんだなんだ……カチコミじゃねえかよォ!」
そこへ、顔中を血に染めた羅刹の末端構成員が、ドアを激しく蹴り破って飛び込んできた。
「さ、鮫島さん! 外に二百人以上の敵がいます! 見張りの連中が一瞬でやられました! 襲撃ですッ!!」
「見ればわかるさ」
鮫島は窓ガラスを指先でトントンと叩きながら、凶悪な笑みを浮かべる。
「しかし、誰だ? この大軍を率いてる親玉は……どこの組のイカれた極道だ?」
その時、鮫島のポケットの中でスマホが激しく振動した。画面の文字を見て、鮫島はニヤリと口元を吊り上げる。
「おぉ、武田。良いタイミングだな」
『——鮫島か!? 今すぐ動くな! そっちに二百人以上の敵の軍勢が向かったという情報が入った!』
電話の向こうから、羅刹のトップ・武田の焦った声が響く。
「もう取り囲まれてるさ。なぁ武田、この軍勢の親玉は誰だ? マジでここにも面白い奴がいるんだな!!」
数で圧倒されているというのに、鮫島の声には恐怖など1ミリもなかった。むしろ、待ち望んだ強者との邂逅に、全身の血が沸き立っている。
『とにかく、俺がそっちのシマに到着するまで待っておけ! 勝手に動くことは許さん!』
「は?」
鮫島は心底つまらなそうに眉をひそめた。
「せっかくの戦争なのに、出るなだと? ……断る。俺の身体がさぁ、うずいて、うずいて、しょうがねえんだからよォォォッ!!!」
『待て、鮫島——』
武田の制止を聞き流し、鮫島はスマホを床に投げ捨てて粉々に踏み砕いた。
そして、室内に控えていた数十人の羅刹の精鋭たちに向かって、耳の裏まで裂けるような狂気の雄叫びを上げた。
「よし、お前ら! 『羅刹』の名をこの東京の地に深く刻むぞ、コラァァァッ!!!」
「「「おうッッッ!!!!!」」」
「——皆殺しだあーーーッッッ!!!!!?????」
ビルの扉を蹴り破って突入してくる『元官僚のハイテンション守護神』荒川正義。
そして、ビルの奥から大爆笑しながら迎え撃つ『横浜のゾンビ戦闘狂』鮫島。
お互いに「皆殺し」を掲げる二つの本物の狂気が、ついに東京の夜の中で激突する。裏社会の歴史に永遠に刻まれる、地獄の全面戦争のゴングが今、鳴り響いた。




