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『慈愛の王妃 アゼリア物語』 〜なんで本の主人公に!?こんな本、ぶっ壊してやるっ!〜  作者: てちてち


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07 



 少しして、訝しげな顔をしたミザリーとアーチーが、食堂に入って来た。


 ミザリーは相変わらず似合わない化粧と、金色を纏った下品なドレス。装飾品は全て取り上げられているから、一つも着けていない。道化師だな。


 アーチーはオドオドと、ミザリーの顔色だけを伺っている。


 その後ろには、私が呼ぶように言っておいた騎士、侍従、侍女、メイドが数名ずつ。それと家令…ね。


 ま、私が怪しんでいる人達を呼んだのだ。


「閣下!いらしていたとは…。ご無沙汰しております」と、騎士団長のヒューイが胸に手を当て頭を下げた。


「ヒューイか、久しいな。息災か?」


 その声を聞いてヒューイは嬉しそうだけど、顔を真っ青にして引きつらせているヤツがいる。


 まず一発目が決まったわね。


「お二人共お座り下さい。“私の誕生日”パーティーを始めますわ」


 アーチーを私から見て左に、ミザリーを右にと、分かれて席に座らせた。


 予めジェロームに指示しておいたのだ。


 アーチーは「義父上、な、なぜここに…」と、口唇と体を小刻みに震わす。


 ミザリーはそれを聞いて、誰だか分かったようだ。


「まぁ!フリージアのお父様ですのね!私はアーチーの現在の妻ミザリーです。お見知りおきを」と満面の笑みでお祖父様に挨拶をしたが、まるっと無視された。


 まるでそこには誰も居なかったように一瞥してから「アーチーお前、誰に断りを入れて愛人を連れ込んでいる?俺は許した覚えは無いが?」お祖父様に鋭い眼差しを向けられたアーチーは、既に息も絶え絶えだ。


「あのっ、…それ、それは…っ」額から流れる汗を拭うことも出来ずに、泡を食う姿はとても滑稽だ。


「後で覚えておけっ!」お祖父様の雷が落ちた。


 ざまぁみろ。




◆◇◆◇◆◇



「お食事の前に話があるの。二人に、ね」包帯に包まれて、私がどんな顔をしているのか分からないだろう。


「アゼリア?あなたもうケガは治ったのかしら?横になっていた方が良いのではなくて?私が連れて行ってあげるわ」と、ミザリーが私の腕を掴もうと手を伸ばす。


 そこへすかさずお祖父様が、パンッと音を立ててミザリーの腕を叩いた。


「私の孫に触るな!」地獄の底にも響きそうな、ひっく〜い声でミザリーを一喝した。


 ひっ、とミザリーが小さく悲鳴を上げた。


 せっかくお祖父様に存在を認めてもらえたと言うのに、浅はかな女だ。


「わ、私はただ、部屋へ送ろうと…」


「黙れっ!誰が口を開いていいと言った!」お祖父様が爆発しそうだ。まだ怒りを抑えてもらわなきゃ。


 私はジェロームに目配せをし、ハーブティーをそれぞれの席に運ばせた。


 私は目の前のティーカップに口を付ける。


 それを見たアーチーとミザリーも、口を付けた。


 二人がちゃんと飲んだかを確認。少し時間が欲しかったので、体が痛むフリをした。


「うっ…、ちょっと体が辛いけど…。二人に確かめたいことがあるの。この家で起きていることをね?」二人の顔を交互に見やり、意味有りげに伝える。


「お前、まだ体が痛むのだろう?無理して出て来なくて良かったのだぞ?誕生パーティーなら私とミザリーで続けるから、お前はベッドに戻るんだ」いかにも心配しているかの様にアーチーは見せているけれど、その手には乗らないわよ。




◆◇◆◇◆◇



「あら?一度も部屋にお見舞いに来なかった人が、何を言っているのかしら。私がいなくなれば、我が家の財産を好きに出来るとお思い?そんな事許すわけ無いでしょ!」


「お、お前、な…に…を…」


 どうやら始まったわね。


「あ…、私の…か…ら…だ…が…」


 お祖父様とトビーがニヤリと笑う。


「どうしたのかしら?このお茶、ミザリーが私の部屋に用意してくれたお水で淹れたのよね?ジェローム?」


「はい。今は水一滴でも無駄に出来ぬ程、財政がひっ迫しております。ただ捨てるのはもったいのうございます。その為、お嬢様がお使いにならなかったので、今日こちらに使用致しました。申し訳ございません」と、下げなくてもいいのに頭を下げるジェローム。


「ミザリー、水に何を入れたのかしら?自分の口から言ったらどお?」私は少し、バカにした言い方をする。


 すると、ミザリーの顔が怒りで真っ赤になった。


「この…っ、小娘が!…わ…私を…呼び捨て…に、す、するな…ん…て…、なま、い…きよっ」体の自由が効かないのに、口数は減らないのね。呆れた。


 これで二発目が決まったわ。


「あらそう?なら、そのままでいなさいな。私は何も困らないもの」


 アーチーも中身を知っているみたいだ。チラッと視線を移すと、ガタガタ震えている。


 放っておこう。


「さて、ミザリー。ただの愛人が自分の息子を連れて、我が家に居座った経緯を話してもらおうかしら?」


「あ、愛…人…じゃな…いわっ。結…婚し…た…のよっ」


 ヨシッ!これだけの大人数の前で虚偽申告。それだけでも王宮に通報できる。


「結婚?誰と?書類を王宮に提出したのかしら?誰にサインをもらったの?」


 アーチーは麻痺薬入りのハーブティーを飲んで、体の自由を奪われてパニクっているみたい。こちらの話が聞こえていない。





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