表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『慈愛の王妃 アゼリア物語』 〜なんで本の主人公に!?こんな本、ぶっ壊してやるっ!〜  作者: てちてち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/11

05 



「トビー、ジェロームを呼んで来てくれる?」


「うん、食事と薬を持って来てもらうね」


 私が微笑んで頷くと、トビーは飛ぶように部屋を出て行った。


 三日月を握りしめ(早く体を治さなきゃ)と思っていたら、体から淡い光が放った。


「うぇっ?」光が徐々に消えていくと、私のケガはすっかり治っていた。


「うわぁ~、どこも痛くないっ」思わずベッドから降りて、姿見の前に行き全身を眺めた。


 腰まであるまっすぐな金髪。瞳の色は青紫色。目はクリッとして口唇はプニプニの桃色。


 こりゃ美少女だ。


 トビーと姉弟に見える…か?皆よく信じたね。ちょっと呆れる。


 鏡の前で考え事をしていると、トビーとジェロームが部屋に入って来た。


「姉上!もう動いて大丈夫なの?まだ寝てなきゃ…っ」私は慌ててベッドに戻った。


 どこで誰が聞き耳を立てているか、分からないからね。


 私は二人に向かって「シーッ」と言い、手で側まで来るように誘う。


「あの二人はどうしてる?」


「はい。パーティーの中止と買った物を全て返品。部屋にあった金目の物も全て取り上げ、閉じ込めております。部屋の中で何やら喚いておりますが、使用人全員に従わないよう申し付けてあります。食事はパンと水のみ。部屋に運んで一歩も外に出られなくしています」さすがジェローム。


「あのメイド達は?」


「騎士を連れ部屋を捜索。三人共にアクセサリーが出ました。自分のだと言い張っていましたが、私の目に狂いはございません。全てフリージア様の物でした」


 ジェロームの内ポケットからイヤリング、指輪、ブローチ、ネックレスにブレスレットがハンカチに包まれて私に渡された。


「三人にはクビを言い渡しました。紹介状も付けませんでしたので、元いた子爵家に戻るしかないでしょうな」顎のヒゲを触りながら、ジェロームが楽しそうに言った。


 ざまぁないわね。


 子爵家とはミザリーの実家ね。没落しかけていたから、ミザリーがウチからお金を引っ張っているのよ。それも取り返さなくちゃ。


「やるわねジェローム。大満足よ」


 ミザリーが連れて来たメイドの三人は、私に嫌がらせをしてきたヤツらだ。


 服やベッドに針を仕込み、お気に入りのドレスをズタズタに引き裂き、食事の配膳中にワザと落として「申し訳ありません。本日のご用意はこれしか…」と涙ぐんで見せる。


 本のアゼリアは「あなた達はとても不器用なのね」と悲しそうに微笑む。それだけ。


 ちょっとは怒りなさいよっ!私は黙らないわ、絶対に!


 と、小学生ながら信念を持った。


 “今”の私も本と同じように、悲しく微笑んで終わっていた。


 もっと早く前世を思い出したかったわ。


 ふぅ~。




◆◇◆◇◆◇



「では次に、この家の財政を詳しく教えてちょうだい。あの二人が何にお金を使っていたのかもね?そして、お祖父様に手紙を書くわ。王都の家まで来て下さいって」


「大旦那様を?」


「うん。あの二人を追い出すのよ」


 私はニヤリと笑ってジェロームを見た。私の変わりように驚いているだろう。


 ジェロームは何度か頷き「承知しました。レターセットをご用意致します」と下がって行った。



 トビーと二人きりになったので、軽食を食べながら話をする。


 辛いことを聞かなければ。


「トビー?この家にいたい?それともミザリーと一緒にいたい?」


 卑怯な聞き方だと思う。ここにいれば多少は良い暮らしができるだろうけど、ミザリーに付いて行けば地獄しか待っていない。


 正直、本には無かった展開だ。私にも何が起こるか分からないけど、もう止まる事は出来ないのだ。


「僕…、ずっと姉上と仲良くしたかった。許されるのなら、姉上と一緒にいたい…」


「本当に良いの?もしかしたら二度とお母さんに会えなくなるかも知れないのよ?」


 トビーはまだ7才だ。母親が恋しいだろうに…


「母上は僕の事なんか気にして無いよ。何でも言う事を聞く奴隷としか思っていないよ…」


 実の子にこんな事を言わせるなんてっ…。


 マジ、ムカつく!!


「分かったわ。トビーの事は私が責任を持って守るから。安心してね?」前世アラサーだった頃を思い出し、思わず頭を撫でてしまった。


 トビーはへへへと笑い恥ずかしがったが、撫でられて嬉しそうだ。これからも時々撫でてあげよう。


 トビーは将来、王太子の側近になるハズなんだけど…。私は王太子に近づくつもりは無いから、側近になりたかったら自分でがんばってもらうしか無いわね。




◆◇◆◇◆◇



「姉上、体の方はどうなの?さっき立ち上がってたでしょ?大丈夫?」


「うん。なんか治っちゃったのよ、ホラ」とベッドから降りて歩いてみせた。


「すごい!もう治っちゃった!あのキラキラのおかげかなぁ?」


 本当は三日月のペンダントのおかげだと思うけど、今はそう言う事にしておこう。


「うん、そうよ!きっとあのキラキラのおかげよ!」


 トビーの両手を取り、二人でクルクル回って喜びを分かち合った。


「でも、この事は内緒よ?私の体はまだケガをしている事にしておいてね?ジェロームには話すけど」


「どうして?」


「まだミザリーの子飼いがいるからよ。私を売る話は無くなっていないの。誕生日の当日まで私は部屋から出られないわ。その分、トビーに色々お願いするからよろしくね?」


 トビーはキリッとした顔をして「分かった。何でもするからね」と、口元を引き締めた。






 私の誕生日は明後日だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ