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『慈愛の王妃 アゼリア物語』 〜なんで本の主人公に!?こんな本、ぶっ壊してやるっ!〜  作者: てちてち


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04 



「私はこの理不尽に抗うつもりよ」


 ジェロームは額に手を当てフム、と頷くと「旦那様はどうなさるおつもりで?」目がキランッと光った。


「あの二人は今日、何をしているのかしら?」まぁ、知っているんだけど。


 トビーに階段から突き落とされた後、誕生パーティーが開かれるのよ。私が出られないのを知っていて。


「お嬢様と坊ちゃまの誕生パーティーの為のドレスを買いに出掛けております」やっぱりね。


 もちろん、私のドレスでは無い。ミザリーのドレスだ。


「では、あの二人が今日買った物は全て返品してちょうだい。我が家の財政は破綻しかけているわよね?無駄使いは許さないわ」


 私の言葉にジェロームがニヤリとする。


「他にはごさいますか?」


「ええ。私達の誕生パーティーは中止よ。私は体を起こせないほど酷いケガなのよ?なのに、そのままパーティーを開くなんてありえないわ。トビーだけを主役にして、さらにあの二人は、私をどこかの貴族と婚約を引き換えにお金をもらうの。トビーは誕生月じゃ無いし、私をお金に変えるなんて、絶対に許さない」


 ジェロームもトビーも、驚き過ぎて言葉が無いみたい。


「あの二人がそんな愚か者だとは…」


「母上…」


 二人の顔を見ながら次の指示を出す。




◆◇◆◇◆◇



「ジェローム、その水を調べることは出来る?薬が入っているのよ。用意したのはミザリーよ」トビーがウンウンと頷く。


「それと…痛み止めの薬はあるかしら?少し体が辛くて…」


「はい、すぐご用意致します。他には?」


「ミザリーが連れてきたメイド達をクビにして、部屋を調べて。お母様のアクセサリーを持っているわ。ミザリーが口止めに渡したのよ。もし無かったら売ったか何かしてるから、どこに売ったのか聞き出して」


「かしこまりました」


「トビーには辛いかもしれないけど…。ミザリーの部屋から取り返して欲しい物があるの」


「フリージア様の宝石箱でしょ?」


「そうよ。あれだけは絶対に取り返したいの、お願い。濃い紺色の箱よ。銀で細工を施してあるの。ミザリーの部屋のクローゼット、引き出しの下から2番目に入っているはずだわ」


 ここまで話してさすがに疲れてしまった私は、少しの食事と薬を飲み眠りについた。


「後をお願いね…」二人ならちゃんとやってくれるだろう。


「姉上、ゆっくり休んで」


「お任せ下さい、お嬢様」




◆◇◆◇◆◇



 次に目覚めた時は、あれから二日が経っていた。


 トビーがベッドの脇にいて、すぐ私が起きた事に気づいた。


「ずっとここにいてくれたの?」


「もちろん。父上と母上が姉上の所に怒鳴り込もうとしたからね。ジェロームと僕とで追い返したよ。姉上の事は僕が守るから」頬を赤らめて俯きながら、トビーがそんな決意を述べた。


 コップに手から魔法で水を入れ、渡してくれる。


 腕を動かすと痛みが引いていた。


「体の痛みが減っているわね…?」


「ホント?あ〜、良かった。僕、治癒魔法を急いで覚えたんだ。今までは母上が攻撃魔法しか覚えたら駄目だって言うから出来なかったけど、これからは色んな魔法を覚えるよ」


 好奇心旺盛な少年のように、トビーが快活になっている。


 元の本には“母親の後ろに隠れて出て来ない子”なんて書かれていたのに。この変わりようは嬉しいわね。


「ありがとうトビー。あの二人、なぜ私の所へ来ようとしたの?パーティーの中止とか、買い物の返品の事かしら?」


「そうだよ。父上が「私は当主だぞ!」って言うのをジェロームが「違います。あなたはただの入り婿です」って言ったんだ。面白かったよ」クスクス笑いながらトビーが言う。


 ジェロームもやってくれたわね。私まで笑ってしまう。


「アハハッ、楽しいわね」




◆◇◆◇◆◇




「姉上、コレ」と、トビーが紺色の宝石箱を差し出す。


「あ、お母様の…。ありがとう嬉しいわ」


 私は体を起こし、宝石箱を開けた。中身が少し減っているが、後で取り返すとして…あった!


 ゴソゴソと中を探り、乳白色の三日月のペンダントを取り出す。


「あー、良かった。これを探していたのよ」箱から出し、トビーに見せる。


「綺麗だね〜。ソレは?」


「お母様が亡くなるまで、肌身離さず着けていたのよ。アーチーが柩から盗ったのを私は見ていたの。私に渡してくれるものと思っていたのに、自分のポケットに仕舞ったままだったから不思議に思ったのよ。」そう。本のアゼリアはまたしても黙ったままだった。


「実はコレね、当主にしか着けられないペンダントなのよ。アーチーは着ける事が出来なかったから箱に入れっぱなしになったのね。ミザリーが売り払わなくて良かった」


 手に取った乳白色の三日月は、フリージアを思い出させる。


「お母様……」指でなぞりながら私は涙を零す。


 その一滴が三日月の上に落ちた。


 すると…


 七色の光がパァッと放ち、黄金の光の粒が雨のように降り注ぐ。


 まるで女神からの祝福のようだ。


 私とトビーは口をあんぐりと開けたまま、その光景を眺めていた。


 やがて光の粒が失くなると、二人で見つめ合った。


「何だったの今の?すごく…不思議だったわね…?」


「でも綺麗だったね〜、僕、こんなに綺麗なもの見たこと無いよ〜」トビーがキャッキャッと喜ぶ。


 私はペンダントを首に掛けた。フゥ〜、と一息付き、三日月の部分を両手で包む。


(お母様。今までとは違う生き方をするけど許してね。自分の足で、私が幸せになりたいの)


 心の中で謝罪をしていると、頬を柔らかな風が撫でて行った。


〈愛しい娘よ。あなたの幸せを祈っているわ〉


 そんな優しい声が聞こえた気がした。




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