#6
オレが思いついたルゥ専用の武器。
それはかつて映画で見たSF武器であるライトセイバーやビームサーベルといった、エネルギーを筒状にした武器だ。
それらの武器はルゥの丸棒のように刃筋を持たない純粋なエネルギー棒であり、どの角度から一撃を加えてもダメージは同じ。
普通の剣士であれば扱いに戸惑うか、あるいは刃がないアドバンテージを活かせないところだが、ルゥは違う。
……しかし問題はそんな武器がこのファンタジー世界には存在しないということで、シェラザードには合理的な理由でダメだしまでされてしまった。
「まぁ、無いなら仕方ない。作らせるぞ」
「作らせる、ですか?魔法の剣を?」
「ああ。魔法剣というより魔導具の応用だな。明日にでもマードック商会へ出向いて部品を漁る。適当なものが見つかれば、サブル・カムルにでも組み上げさせるさ」
「はぁ?あの詐欺師に?ボス、やめたほうがいいですって!」
コーディリアはエルフの魔導技師サブル・カムルに良い感情を抱いていない。
ヤツの発明はつい先日、アーノルドのヤツをやり込めるのに役立ったというのに、だ。
「それにマードック商会で売っているもので何とかなるんですか?」
「まぁ、結果はご覧じろだ」
「はぁ……」
「コーディ、主殿のことだ。きっと我らには思いもよらぬ勝算があるのだろう」
「そうだといいんですけど……でもシェラザード、ボスはビジネスには悪魔的な冴えを見せますが、魔法や魔導具については全くの素人ですよ?」
コーディリアは呆れたようにそう言うが、得てしてこの手の事柄は、素人の方が柔軟な発想をもって良い成果を導き出せるというものだ。
ただ、そのことを今は口にしない。なにせ大口を叩いて失敗すれば、オレのメンツが丸つぶれになるからな。
そして翌日の昼過ぎ。
オレはマードック商会で購入したある魔導具を手にサブル・カムルの工房を訪れた。
コーディリアから場所は聞いていたが、オレが直接出向いたのは今回が初だ。
「これは工房というより屋敷だな……。研究支援と称してカネの無心に来る割にはいい所に住んでいる」
思わずそんな言葉が漏れる。
「おや、賢き金貸しのお方ではございませんか。我があばら屋へようこそおいで下さいました」
にこやかな表情でオレを出迎えたのは青年に見えるエルフだ。
保有する知識――まぁ随分と偏ってはいるが――や技能から考えれば、実年齢は不明ながら100歳は下らないだろう。
「今日はサブルさんに頼みたいことがありましてね」
「ほう、私にお話ですか。良いお話を聞かせて頂けることを期待しておりますよ」
そう言うとサブルはオレを屋敷へと案内した。
通されたのは応接室ではなく、窓のない車庫のような空間だ。
室内にはいくつかのテーブルが置かれ、それぞれのテーブルにはガラクタにしか見えないものが多数置かれている。
中には見覚えのある魔導具、伝令板の改良品とおぼしきものも転がっているようだ。
「どうですかな、賢き金貸しのお方。何か興味を惹かれるものはございますか?」
「色々と興味深いんですがね、今日はサブルさんの技術をお借りしてある魔導具を組み上げて貰いたいんですよ」
「ほほう……。それはどのような?」
魔導具と聞いてサブルの目が輝く。
さすが生粋の魔導技師というべきか。
オレはそんなサブルの前に2つの品を置いた。
「これは……『魔力の杖』……いえ金属製の短杖ですから『魔力のロッド』と呼ぶべきですか?チャージ式のものではなさそうですが……。それにそちらは収束具ですね?」
「一目で正体を見抜くとは、さすがですね」
「まぁ長く携わっておりますので。それで、これをどうされるのですか?」
さて、ここからが本番だ。
サブル・カムルは通信用の魔導具を開発することに情熱を傾けているが、本来であればそういった雑貨よりも武具の方が需要は高い。
もしサブルが本気で金策をするつもりなら、オレのような金貸しにパテントを売り込むよりも適当な武具を作って商会なり、商業ギルドなりに持ち込めば良いはずだ。
だがサブルはそうせずに商業ギルドから融資を受け、融資が焦げ付いた後は金貸しであるオレの元へ借金を申し込みに来た。
それはつまり、こいつが武器を作ることを禁忌としている可能性がある……とオレは考えている訳だが。
「こちらの『魔力のロッド』を解体して、魔力の矢を生み出す機構だけを取り出すとすれば、どの程度のサイズになりますか?」
「……そうですね。チャージ式と違って魔力回路は単純ですから、巧くまとめれば小指の先ほどになるかと」
なるほど、魔力の矢を生み出す魔導具は基本的にダンジョンで産出する品だが、サブルはその内部構造をも熟知している訳か。
そして今の話だと、攻撃アイテムについての話題を忌避している様子はない。
「ではその魔力回路をこちらの収束具と組み合わせることは?」
「それは……可能ですが、収束具の持つ機能によっては必ずしも効果が増幅されるとは限りませんよ?」
サブルが言うように、収束具というものは蓄積や増幅、凝縮といった効果を発揮する魔導具の部品……らしい。
ダンジョンで産出される魔導具の中にも指輪や護符のような形状の収束具が混じっていて、オレの商会でもいくつか冒険者から買い取ったことがある。
むろん買取時に鑑定は行っており、それがどのような効果を持つのかは把握しているし、汎用的に使えそうなものであればマードック商会に流す商材としている。
中でもサブルが言うような増幅効果を持つものは魔法を使う冒険者にとっては必須アイテムといえる人気魔導具らしいが、今回オレがサブルに示したものはそういった類いのものではない。
サブルに示した収束具は一見すると大ぶりなナット――確かJIS規格だとM48だったか――に似た形状で、ミスリル製であるため見た目に比べると随分と軽い。
以前、組の仕切る工事現場で見たM48のナットは1kg近くあったが、こいつはその1/3程度の重さだ。
まぁ、収束具が魔法使いのための道具である以上、重すぎるとひ弱な連中は持ち運びに困るというのもあるだろうが……。
いや、今サブルが問題にしているのは重さではなく、この魔導具の効果の話だったか。




