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Episode 9

 今日は愛子とカラオケ当日の日、そして私の初カラオケの日にもなる。

 6時40分00秒、私は右手をグーにしてドアを3回ノックした。


「はーい」


 扉の奥から小さな声で返事が返ってきた。


「私」

「お姉ちゃん! 今開けるね!」


 そう聞こえてから3秒後、扉がゆっくりと開いた。


「お姉ちゃん、おはよう! 今日はカラオケの日だね! 楽しもう!」


 愛子、今日はこの上なくテンションが高いな、そんなにカラオケが楽しみなのか。


 「そんなにカラオケが楽しみなのか……」

 「楽しみだよ! だってお姉ちゃんの歌声が聴けるんだよ!? 楽しみだな~!」

 「95点、取るわ」

 「お姉ちゃんやる気あっていいね! あ、そういえばお姉ちゃん、言い忘れてたことがあるんだけ――」


 愛子が言いかけたその時、愛子の机に置いてあったスマホから「ブーブー」と音が鳴った。


 「愛子、電話?」

 「誰からだろう?」


 愛子は机に置いてあるスマホを取って確認した。


 「あ、栞さんからだ、出てもいい?」


 私は首を縦に振る。

 それを確認した愛子は、通話ボタンをスライドさせて右耳に当てた。


 「あ、栞さん!  おはよう! うん……待ち合わせはそこで大丈夫だよ!」


 私は愛子の明るい声を聴きながら無意識的に左腕のアナログ時計に目をやった。6時42分15秒。今のところスケジュールに大きな狂いはない。


 「それで人数の確認なんだけど、私と栞さん、お姉ちゃん、秋人さん、三浦さんの合計5人で間違えないよね……?」


 え? 秋人もいるの? あと三浦さんって誰? 初めましての方ね……。


 「愛子、なんで秋人くんがいるの? あと三浦さんっていうのは……」

 「あー……、秋人さんはね、栞さんのお姉ちゃんからカラオケの情報を聞いて、お姉ちゃんに会いたいからって言うことで参加することになったんだよ。あと、三浦さんは青柳さんの幼馴染の男の子だよ! 栞さんが秋人さん男1人だと嫌だろうからって気を利かせて呼んでくれたらしいよ!」


 秋人……いつの間に青柳さんの連絡先を交換していたのね。


 「……あ、うん! じゃあ10時に会おうね! またね!」


 愛子は通話を切ってスマホを机に戻した。

 6時48分05秒、50分にキッチンへ行って朝ご飯を作らないといけないから一旦出よう。


 「私、朝ご飯作ってくるから、7時には降りて来て」

 「わかった!」


 私は愛子の部屋を後にした。


 6時49分50秒、キッチンへ到着。今のところ順調にいっている。

 朝ご飯はいつもハムチーズトーストと決まっている。ハムチーズトーストは作るのに手間があまりかからないし時間も10分未満で作れるため好きだ。ちゃんと味も美味しいし。

 私はいつもの作業を手際よくこなし、6時57分45秒には愛子と私の分のハムチーズトーストが出来上がった。


 「よし、完璧」


 私は余った時間で頭のなかで英単語を練習する。


 6時59分45秒。


「ダダダ」と階段を駆け下りる足音が聞こえ、リビングの扉が開いた。


「お姉ちゃんお待たせー!  お、今日も完璧な焼き加減だね!」


 愛子が椅子に座るのを確認し、私は手を合わせる。同時に愛子も手を合わせた。


「頂きます」


 私はハムチーズトーストを咀嚼しながら、頭のなかで今日の完璧である私をシュミレーションしていた。完璧を想像することで現実化するというからな、やって損はない。


「……愛子。両親は?」


「お父さんなら今日は漫画の締め切り前で担当編集さんに連れてかれたって連絡あったよ。今頃、缶詰部屋で必死にペン回してるんじゃない? お母さんは漫画の取材で東京に行ったって!」


 「把握したわ」


 父はアニメにもなった累計2000万部を誇る大ヒット作品を描いていて、母は父親の影響で3年前くらいに漫画を描き始め、累計100万部を最近達成した期待の新人として活躍している。


 「愛子、ご飯食べ終えたら8時30分00秒に私の部屋へ来て。今日着ていく服装を選ぶから」

 「わかった! 可愛い服装選ぶね!」

 「いや、カラオケに行く程度の服装で大丈夫よ、気合が入った服装で行ったら凄い楽しみにしてる感が出て嫌だわ普通でいいのよ、普通よ」

 「なんで2回言ったの!?」

 「重要だから」


 7時15分10秒。朝食を食べ終え愛子と一緒に私の部屋に直行する。

 私はクローゼットを開け、整然と並んだハンガーを一瞥した。

 私の私服は機能性と目立たなさを重視していて、色は白と黒、ネイピーの3色が基本。

 この色ならどんな組み合わせでも外にいて変に思われることはない。つまり普通。


 「お姉ちゃん、相変わらずだね。服にこだわりないの昔から変わらないなー」


 愛子が少し寂しそうに言う。おしゃれな服って基本高いし、それを買うなら少し安くて機能性もまあいい物を買った方がいいと私は思う。

 私はクローゼットから、いつものネイビーのカーディガンと黒のスラックスを手に取ろうとした。が……その指先が届く前に、愛子の手が素早く割り込んできた。


 「駄目! 今日はカラオケなんだから! お姉ちゃん、お母さんが最近買って置いてくれた、このサクラ色のブイネックニット使うの!」

 「却下よ、その服を着たら周りから変に注目されるわ、後ポッケ付いてないじゃない」

 「下はこっちのオフホワイトのフレアスカートね。絶対に会うから今日だけでいいから着て! お願い!」

 愛子の猛烈なお願いに、私はどうすればいいか考える……。愛子の強いお願い、これは聞くしかないという決断になった。

「わかったわ、今回だけよ」

「やったー! お姉ちゃん大好き!」

  

 サクラ色のブイネックニットと、オフホワイトのフレアスカート。

 着用してみると、驚くほど軽かった。


「お姉ちゃん、すごーい! 春っぽくて最高に可愛いよ! これなら秋人さんも3度見くらいするよ!」

「1度で十分よ……」

「あ、あとポケットがない問題は、この小さめのショルダーバッグで解決!」


 いや、これバックって言えるの? 小さ過ぎるわ……。

 愛子が差し出してきた小さ過ぎるバッグに、私は即座にストップウォッチ、財布、スマホを入れた。

 8時50分00秒、準備は完了。


「よし! お姉ちゃん行こう! 今日は最高の日にしょうね!」

「95点を取れるように最善を尽くすわ」

「全力で応援するね!」


 愛子と一緒に玄関へ行き、右足から靴を履いて玄関の鍵を閉め、ドアノブを3回引いて施錠確認をした後、深呼吸を3回してから、歩き出した。

 

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― 新着の感想 ―
朝から愛子のハイテンションに巻き込まれつつ、主人公の“普通でいたい”抵抗が全部押し流されていくのが面白い回。強制春コーデも笑うし、秋人参戦のカオス感も最高。次は絶対波乱の予感しかしない。
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