Episode 10
9時56分00秒。
私と愛子は駅の改札口を出てすぐの広場に足を踏み入れた。ここが待ち合わせ場所である。
「たぶんここらへんにいれば大丈夫だよ、ベンチあるから座って待ってよう!」
「私は立ってるわ、健康にもいいし……なによりすぐに移動できるから」
もし愛子に何かあったらすぐ動ける体制にしないと。
「じゃあ私は座ってるね!」
9時58分30秒、愛子のスマホが「ブブッ」と鳴った。
「あ、栞さん駅着いたって、今三浦さんと一緒らしいよ!」
「把握したわ」
9時59分15秒、改札から流れてくる群衆の姿があった。すると愛子が口を開く。
「栞さ――――ん! 三浦さ――――ん、こっち!」
愛子がベンチから跳ね起き、大きく手を振る。
その視線の先を見ると、こちらへ手を振る2人の姿があった。
片方は、清楚な雰囲気の女子。そしてその隣には、隣の人より頭1つ背の高い、落ち着いた雰囲気の男子が歩いてくるのが見えた。
「栞さん今日も可愛いね! 白のブラウスとグリーンのスカート似合ってるよ!」
「愛子さん、ありがとう、そして、そちらの方が愛子さんのお姉さん?」
愛子は元気よく首を縦に振る。
「……初めまして、愛子の姉の野上智乃です」
「こちらこそ初めまして! 青柳栞です、智乃さんと会えるのすっごい楽しみにしてました!」
「それはどうも」
私は軽く頷く……。そして、私は隣の男性の方に目をやった。
「あっ……初めまして、三浦です、栞の幼馴染です」
「どうも」
「……」「……」「……」「……」
10時02分00秒。あれ? 秋人が来ていない……?
そんなことを思っていると、二人の背後から走ってくる大急ぎで走ってくる男性の姿が見えた。
「みんな本当にごめん! 遅れたぁー!」
時間は2分ほど遅れたが、全員集合した。そしてなぜか秋人は制服だった。
「秋人さん! なんで制服着てるんですか?」
「いや、教科書が届いたみたいで、取り行くのに制服着ていかないと駄目だったからこういう格好になったんだよ」
愛子はとても納得した顔で首を縦に振る。
「なるほど!」
「でも、遅刻するのは良くないわね、2分あったら短い曲1つ歌えるわ」
「ごめん!」
秋人は頭を深く下げて謝罪した。
「反省してくれれば大丈夫だよ! 次から気をつけてね! ほら! 反省タイムおしまい、カラオケいくよ!」
「愛子さん……天使……?」
「愛子は天使よ、そこの解釈は一緒ね」
秋人は苦笑いしながら頭を掻く。
「お姉ちゃん褒めすぎ! 照れちゃう!」
愛子は顔を真っ赤にして言う。
「とりあえず行きましょうか、カラオケ。20分に予約を入れてあるので少し急いで行きましょう!」
10時18分05秒。ギリギリで予約したカラオケ店の目の前までやってきた。
「カラオケ福招き……いい名前だな!」
「ですよね! 高得点取れそうな響きですよね!」
秋人と栞さんが店名で盛り上がっている。そんな中三浦さんは盛り上がっている2人に向けてスマホを翳している。
「秋人さんに栞。盛り上がるのはあとにして一旦店入ろうか、時間やばいよ?」
三浦さんが早口でそう言うと、栞さんが慌てて三浦さんの方を向き言う。
「あ、ごめんそうだね! 早くいこう!」
自動ドアが開き、私たちは『カラオケ福招き』のロビーへと足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ! ご予約の青柳様ですね?」
フロントの店員さんが明るく声をかけてくる。栞さんが流れるように受付を済ませていくのを確認する。
「……では右通路の304号室をお使いください、ドリンクは無料ですのでご自由にお飲みください」
店員さんはそういうと、ガラス製のコップを人数分カウンターに置いた。それを栞さんが受け取る。
「よし、304号室へ行こう!」
「ドリンク無料とか凄い太っ腹だな!」
「……いいえ秋人くん。正確には、料金にドリンクバーの原価が組み込まれている。が正解よ、お客さんの滞在時間を延ばして、追加でなにか注文をさせるための戦略だわ」
「……なるほど?」
そんな話をした後、私たちは304号室へと向かった。
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