Episode2
私は目の前の男子生徒がどんな目的で連絡先を交換する行為を求めているか考えた、考えた結果、何も思いつかなかった。
意味不明過ぎたので瞬時に「キモ」という言葉を放ってしまった。
「急でごめん! さっきの事後でちゃんと謝りたくて、だから連絡先を教えてほしいんだ、あれがもし当たっていたら君は骨折してたかもしれないし、本当にごめん!」
深々と頭を下げ、両手を合わせて謝ってきた、私は別にもう何にも思ってないんだけどこの場合どうすれば正解なのだろうか? 承諾すれば時間が合わなくなることを予想されるので絶対に断りたいけど。こうも真剣に謝ってくると断りづらいな。
「あら、そろそろ門を開ける時間だわ、ちょっとごめんね」
「あ、お願いします」
「え……」
現在時刻7時29分00秒、時間は大丈夫だな。
ガチャっと門のロックを解除する音が聞こえ、ゆっくりと門が開いた。
「どうぞ中に入っていいわよ」
「ありがとうございます」
よし、早くこの場から去ろう、自分の教室に行ってしまえば勝ちだ、この人は私の教室で見たことがないから他クラスなはず……。
私は急ぎ足で昇降口に行き、外履きを脱ぎ、かかとを揃えて下駄箱へ。そして上履きを履く。紐の結び目が左右対称であることを確認する。
「よし、完璧」
あの男子生徒は自転車置き場に駐車させるという作業があるのでまだこちらには来ていない、今のうちに教室へ行けば会うことはない。
急ぎ足で階段を上がる。私のクラス、1年3組は2階にある。それも階段を上ったらすぐ右横にあって移動が楽でよい。
教室のドアの前に到着。ドアを10cm程だけ開け、室内に人がいないかチェックする。
「いないな……?」
人がいないことを確認して入室。自分の席へ直行する。
私の席は窓際の後ろから2番目。この席は先生に見つかりにくくて内職がしやすいから良い。
カバンを机の左側に吊るし、着席。背筋を20度の角度まで伸ばす。
1時間目の準備、教科書とノートを机の左上にズレなく配置し、予習を開始する。
「キーンコーンカーンコーン」と朝のホームルームの時間を知らせる音が鳴り響いた。
教卓を見るとすでに先生が何かの紙を持って立っていた。
「よーし、ホームルーム始めるぞ、みんな席に着け!」
このクラスの担任は岡崎歩先生という背が小さく丸眼鏡の男性先生だ。
生徒のみんなが陰で岡崎先生の事を背が小さいと馬鹿にしているらしい、人の悪口を言って何が楽しいのか全く理解できない、それこそ時間の無駄だ。
「えー、今日は皆さんに嬉しいお知らせがあります! うちのクラスになんと転校生がやってきます!」
ん? 転校生……?
周りがざわざわしている、「誰だろう?」「女子!?」「イケメン?」「かわいい子こいっ!」等聞こえてきた。
「じゃあ入ってきてください、みんな盛大な拍手を!」
パチパチパチと拍手をする音とともに扉が開いた。
教室に入って来たのは、さっき急に連絡先を聞いてきた男子生徒だった。
嘘、でしょ……?
私が男子生徒を見て固まっていると、完全に目が合った、相手は目をガン開きして私を見ていた。
お願いだからみんなの前で何も言いません様に……。
「よし、自己紹介してくれるかな?」
「あ、はい! 親の事情で富山県から来ました、福田秋人といいます! これからよろしくお願いします……。あと、さっき可愛い子こいっていってた奴、聞こえてるからな! 男子で悪かったな!」
そう放った瞬間、教室中が笑いに包まれた、因みに私は笑っていない。
「えー、じゃあ秋人君に質問ある人いるかな?」
「はい!」と隣の席から高声が聞こえてきた。
「青柳さん」
よりによって隣の席の人が質問するのか、嫌だな。
「秋人さん、私の方をずっと見ていましたが何か付いていましたか?」
青柳さんの問いに、教室がわずかに色めき立つ。
……え? これは盛大な勘違いをしてるな。お願いだから黙って。余計なことは言わないで。
秋人は目をぱちくりさせてから口を開いた。
「えっと、ほんとごめん! 違うんだ、君の隣のストップウォッチの子を見てたんだけど……さっきばったり会ったから同じクラスなんだなって思ってさ」
――終わった。
31人の視線が、一斉に私へ向けられた。
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