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Episode 19 秋人視点④

 8時38分00秒、俺は急ぎ足で階段を上り、1年3組を目指していた。


 ――完全に寝坊した。


 昨日、野上さんからの連絡にあったあの命令のせいで、寝付き悪くなったのが原因に違いない。

 いや、もともと俺は前の学校で遅刻魔って先生に言われてたから今のは言い訳だ。


 ようやく2階に辿り着き、1年3組のドアの前に着いた。


 俺は素早く教室のドアを開けて、自分の席へと直行した。

 椅子に座ると同時にカバンをフックに掛ける。


 8時39分25秒。ギリギリセーフ。俺は遅刻してない! よし。


 俺の隣は空席だ。この前野上さんが教科書を見せるために一時的に座っていた場所だけど、なんだか寂しく感じてしまう。

 肩で息をしながら、俺は目の前に座る野上さんの後頭部を見つめながら考える。


 ……寧々さんと付きあって。


 冗談であってほしかったが、野上さんは冗談なんて言わないのはわかる。

 チラリと野上さんの隣に座っている寧々さんを見る。


 寧々さんはじっと先生のいない教卓を見つめながらシャーペンをクルクルと回していた。

 今日の昼休み、俺は野上さんの指示通り寧々さんに告白するつもりだ。

 そして、ホームルームのチャイムが鳴り響く。それと同時に、ドアが開き、岡崎先生が教卓に立つ。

 岡崎先生の声が聞こえる中、俺は前の席に座る野上さんのことだけを考えていた。つまり岡崎先生の話は聞いていない。

 

 12時35分00秒、4限終了のチャイムが鳴り響いた。


 俺はすぐに席を立ち、野上さんの隣に座る寧々さんの元へと向かった。


 「寧々さん、ちょっといいかな」


 寧々さんはシャーペンを回す手を止め、ゆっくりと俺の方を振り返った。


 「あ、秋人くん! どうしたの? 真剣な顔して」

 「……話したいことがあるんだ。ここでは、ちょっと言いにくいんだけど」

 「わかった。じゃあ……中庭に行こうかな? あそこなら今の時間、人が少ないだろうし」


 寧々さんは素早い動きで席を立ち、先導して歩き出す


 中庭に足を踏み入れると、春の日差しが目に染みた。

 寧々さんは桜の木の根元で足を止めて、すっとこちらを振り返り、口を開いた。


 「……それで、話ってなにかな、秋人さん?」


 俺は大きく息を吸い込んで、吐いた。

 野上さん……本当に言うぞ。


 「寧々さん。俺……」


 寧々さんは小首をかしげ、言葉を待っていた。


 「俺と、付き合ってほしい」


 ――俺は、言い切った。


 寧々さんの目が、大きく見開いた。


 「……秋人くん、それって本気?」

 「俺は、本気だ」


 本当は全部、嘘だ


 「嬉しい。私、秋人さんのこと、ずっと気になってたんだよ!


 その答えを聞いた瞬間、俺の頭の中に浮かんだのは、今日の朝野上さんの言ったことだった。

 秋人なら寧々さんと付きあえるわ、そこは問題ないわよ。と……


 俺、これからどうすればいいんだろう。

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