Episode 18 秋人視点③
12時35分00秒、4限終了のチャイムが鳴り響いた。
初めての環境だからなのか、だいぶ疲れが溜まっているのがわかった。
ふと隣に座る野上さんをちらみすると、教科書を閉じて、カバンからスマホを取り出していた。
野上さんはスマホの画面をじっと見つめながら、眉間にしわを寄せていた。
なにか指で素早く打っているのはわかるけど肝心な内容が見えなかった。
俺はつい気になって、椅子を少しだけ寄せてスマホの画面を覗き込んでしまった。
スマホの画面には生存確認という謎の単語が書かれていた、とりあえずばれないように椅子を元に戻した。
野上さんは生存確認と打ち終えた後、バックから弁当箱を取り出して手を合わせ、小声で「頂きます」と言う。
コメを食べようと箸で掴んだ瞬間、野上さんは固まった。
視線はスマホに向いていた。返信が来たのかな?
横からでもわかるくらい、彼女の眉間のしわがさっきよりも深まっていた。
そんなに難しい顔をされたら、放っておけるはずがない。
俺は勇気を振り絞り、声を上げた。
「どうしたんだ? 難しい顔して」
「へっ!?」
野上さんの口から、素っ頓狂な声が飛び出した。野上さんもこういう風な声を出せるんだと思った。
「野上さんもそんな声だすんだ」
からかうつもりはなかったけど、あまりのギャップについ心の声が漏れてしまった。
「に、人間誰しも失敗はあるの」
「何の話だよ! まあそんなことは一旦置いておいて、なんかあったのか?」
俺がそう尋ねると、野上さんは「な、なに? あなたはその本でも読んでなさいよ、関係ないでしょ」と焦ったような声で言う。
「俺もしかして野上さんに嫌われてる!?」
「今頃気づいたの?」
ふと、野上さんの手元でスマホが震える。
俺はすっと画面を見ると、愛子という名前の相手から、連絡が来ていた。
「お姉ちゃん、既読無視とは……もしかして図星だったか……」
「ちょ、読まないで!」
野上さんは慌ててスマホを俺に見えないように遠ざけた。
「まあまてってば、ここはこう返信してみるのはどうだ、私はボットではありません。愛子の安否という最重要課題に取り組んでいるだけですって、ロボット風に言うんだ、笑い取れるかもだぞ」
野上さんは少しの間考えてから、口を開ける。
「思いつかないからもうそれでいいわ」
俺のアドバイスは採用された。俺が言ったとおりの文字を打ち込み返信した。
すると、秒で既読が付いた。
「お、すぐ既読になったな」
「お姉ちゃん面白過ぎ笑、コーヒー噴き出したじゃん笑」
お姉ちゃんと呼んでいるということは、今連絡しているのは妹さんということか?
すると野上さんの表情が、すっと緩んだのがわかった。
「秋人くん……ありがと」
「え? おう」
不意に名前を呼ばれ感謝までされて、俺の心臓がドクンと跳ねた。
俺は照れくさくなって鼻の頭を指で掻く。
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