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Episode 16

 あっさり醤油ラーメン。

 私は最初に、レンゲで黄金色のスープを掬い、一口含んだ。

 煮干しの風味が鼻を抜ける。動物系のコクが後からくる。


 ――美味い。


 「……うまっ! なんだこれ、あっさりしてるのに、めちゃくちゃ深みがあるな! 永遠に啜っていたい!」


 秋人は手が止まることなく、無我夢中で食べ進めていた。


 「秋人さんの口に合ってよかったです、新潟の食べ物はどれも美味しいので、色々食べてみてください、私のおすすめは魚類です。」

 「栞さんは食べ物に詳しいんだな、俺も魚好きだから今度おすすめの店とかあったら教えてほしいかな」

 「安くて、それでいて美味しい店を今度教えます」


 秋人はやったー! と声を上げ、ガッツポーズをした。


 「秋人さん、そろそろ味変してみない? コショウとかあるよ!」


 寧々さんはコショウを手に取って、秋人の近くに置いた。


 「確かにそろそろ味変も有りだな、コショウつけるか、ありがとう」


 秋人はコショウを取り、時計回りで一周分コショウを振りかけ、啜った。


 「うおっ、コショウを入れたらガツンときて最高だ!  寧々さん、ありがとう!」

 「良かった、秋人さんって本当に美味しそうに食べるから、みてるこっちも幸せになるわ」


 すると、寧々さんはふいに顔を上げ、私の方をじっと見つめてきた。


 「智乃さん。そんなに時計ばかり見ていたら、せっかくのラーメンが伸びちゃうよ? ほら、智乃さんのところにもコショウ、回してあげようか?」


 寧々さんはコショウの瓶を私の目の前へすっと滑らせてきた。


 「大丈夫よ、私は素材本来の味で食べ続けるわ」

 「でも野上さん、このコショウは付けないと後悔する!」


 そう言って、秋人は笑いながら麺を啜り上げる。


 「うん、美味しい!」


 そんな会話をしながらラーメンを食べ勧めていたら、気づけばもう知スープのみになっていた。

 私は最後の一滴までしっかりと飲み干して、完食した。


 私は静かに手を合わせてから、口を開く。


 「……ごちそうさまでした」


 12時27分45秒、完食した。

 すると、まだ半分ほどの麺を残した秋人が、驚いたように目を丸くしているのがわかった。


 「え、野上さん、もう完食!?  早すぎだろ! もしかしてフードファイター?」


 「ルーティンがあるから、スピードを速めただけよ、ここから駅まで約10分。電車の待ち時間と、駅から自宅までの徒歩約15分を計算すれば、13時ちょうどにはほぼ確実に間に合わない。でも、13時以内には必ず家に着いていたいわ」

 「でも、そんなに急がなくてもいいんじゃないか……?」

 「……いいえ、良くないわ」


 私は頭の中で英単語の勉強を開始した。


 オプティマル、オプティマル。意味は……最適な、最善の、最も有利な。ね。


 私は周囲に目線をやりながら、頭の中でひたすらと英単語を練習した。

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