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Episode 13

 「秋人、早くしなさい。みんな待ってるわよ」

 「ねえ野上さん……98点の後に歌うのはめっちゃ恥ずかしいんだけど?」


 そういいながら、秋人は震える手でカラオケ専用タブレットを操作し始める。


 10時34分00秒。


 秋人は送信ボタンを押した。モニターの右上に表示された予約曲のタイトルを見ると、予想外の歌が表示されていた。


 『水平線のパノラマ』


 一瞬、思考がフリーズした。


 「秋人、あなた、入力ミスかしら……?」

 「いや……ミスじゃないよ。野上さんの歌があまりに凄すぎて、俺もこの曲、俺なりに歌ってみたいなって思ったんだ」


 私の『98.241点』という点数を見た直後に、同じ土壌に上がるなんて、意味がわからないわ。


 「秋人、ルール知ってるの? 95点以上を取った人はそれ以下の点数の人に何でも1つ言うことを聞く権利が与えられるのよ?」


 私の問いかけに、秋人はマイクを握る手に力を込め、少しだけ苦笑いを浮かべた。


 「知ってるよ、でもこので勝負したいんだ」


 カラオケモニターに音程バーが表示される。


 「どこまでも続く定規の線……」


 10時37分00秒。


 カラオケモニターの画面が切り替わり、採点 Ai による結果が出される。


 『93.432点』


 カラオケモニターに表示された数字は、私の『98.241点』には届かなかったものの、あまりに高い点数だった。


 「……あーっ、惜しい!  95点いかなかった!」

秋人は悔しながらも、マイクをテーブルに置いた。


 すると愛子が、「でも秋人さん! 今の歌凄い良かったよ! 正常時だったらもしかしてお姉ちゃん超えられるんじゃない?」と身を乗り出してフォローを入れている。


 「正直、僕はもっと低い点数だと思ってた、やるね、秋人くん」

 「さて、秋人くん。ルールはルールよ、私は95点以上出した。あなたは95点以上出せなかった。したがって、私には言うことを聞かせる権利が出来たわ」

 「わかった、なんでも言ってくれ!」


 秋人は唾をゴクッと飲む。


 「……ここでは言えない事だから、後で連絡を送っておくわ」

 「ここでは言えない事……?」


 秋人は鸚鵡返しで呟く。


 「安心して、みんなが考えてるようなことは一切やってもらわないから」

 「わかった、連絡待ってるよ!」


 10時59分00秒、全員が歌った後、少し喉を休める為休憩を挟むことになった。


 因みに私の『98.241点』を超えた人はいなかった。95点以上を取ったのは栞さんだけだった。


 そんなことを考えていると、隣に座っていた栞さんが私の方へ少しだけ身を寄せてきた。


 「智乃さん、少しだけ……お話ししてもいいですか?」

 「いいわよ、なにかしら」

 「ありがとうございます。実は……寧々から聞いたんですが」

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