Episode 12 秋人視点②
運命って、本当にあるんだな。
俺は心の中でガッツポーズを決め、先生に指示された席へ向かった。
俺が席に着くと、野上さんから微かに石鹸のような清潔感のある香りがした。それだけでさっきまでの疲れも吹き飛ぶ気がした。
「はいじゃあ英語コミュニケーションの教科書出してください」
岡崎先生の声で、俺は現実に引き戻された。やばいぞ、そういえば俺、まだ教科書を持ってないんだった。
「先生! 教科書ないです!」
俺は慌てて先生に教科書がないことを報告した。
「ああそうか、まだ教科書届いてなかったのか、じゃあ前にいる野上、見せてあげて」
「先生、青柳さんでもいいですよね?」
……俺もしかして嫌われてるのか?
隣の席の青柳さんが「?」っちを見ている。
「いや、面識あるみたいだし、そっちの方がいいかなと思ったんだけど」
青柳さんが野上さんに小声で何かを囁く。すると野上さんは「わ、わかりました、後ろ行きます」と言い、移動する準備を始めた。
俺の隣に野上さんが座った所で、俺は挨拶をした。
「野上さん、よろしく」
「まあ……よろしく」
野上さんは俺の机の端に教科書を置いた。
「本当ごめんだけど、教科書見えずらいからもう少し近づいてくれない?」
俺は目が悪いから、教科書の字がこの位置じゃあとても見えない、なのでこれはお願いするしかなかい。
野上さんは無言で椅子を俺の方に寄せ、俺が教科書を見やすいように調整してくれた。
「さんきゅ!」
「はい、それでは授業進めていきます」
――キーンコーンカーンコーン。
9時35分、一時間目が終わって10分の休憩時間になった。
野上さんはカバンから素早くスマホを取り出し、指先を高速で動かしている。
……生存確認メール?
画面からうっすら文字が見えたけど、内容はよくわからなかった。
「あの! 野上さん、少し話したいんだけど……?」
俺はなにをしているのか気になり話しかける。だけど、反応はなかった。
「え、無視?」
思わず本音が漏れた。
すると、野上さんは指を止め、俺の方を見た。
「すいません、ちょっとやることがあるので、失礼します」
それだけ言い残すと、野上さんは立ち上がって、教室を後にした。
「え!? いやちょっと待ってよ!」
俺が立ち上がった時には、野上さんの背中はすでに廊下に消えていた。
俺は慌ててその後を追う。廊下に出ると、野上さんの制服の背中が女子トイレへと吸い込まれていくのが見えた。
「……ああ」
トイレに入られたら、俺は何もできない。一旦教室に戻るか。
俺は教室に戻り自分の席に座って考えた。
今朝のことだ。連絡先教えてっていうタイミングは確かに早かったかもしれない。でも、同じクラスになれたんだ。ここから挽回すればいい。
そんなことを考えていると、野上さんの隣に座っていた青柳さんが俺に話しかけてきた。
「ねえ秋人さん、よかったら連絡先交換しない?」
「……え?」
まさか、転校初日に逆ナンか!? いやそんなわけないか。
「あ、えっと……なんで?」
「ほら、秋人さんって転校してきたばっかりだから学校のことでわからないこととかあるでしょ? 私でよければ教えるよ!」
まてよ、ここで青柳さんと交換しておけば、野上さんに関する情報も聞けるかもな、どうしょう。
俺は悩んだ末、連絡先を交換することにした。
「うん、ぜひ。よろしく!」
俺はスマホを取り出して、青柳さんと連絡先を交換した。
「これからよろしくね!」
「よろしく!」
青柳さんは用事が済んだのか、机でうつ伏せになる。
俺は授業が始まるまで、小学生の頃初めての誕生日プレゼントでもらった小説を読むことにした。
この本は暗記するくらい何回も読んでいる。好きでつい読んでしまう。思い出の本だからいつも持ち歩いている。
この本読んでると、落ち着くなー。
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