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君想う故に私在り (:D)  作者: 連星霊
ギター狂想曲~夢幻~
20/23

第20話【打算的求愛?】

 ライブまで残り1週間を切った金曜日。


 ここ1ヶ月で、金糸雀の周りにはまた人が集まるようになっていた。

 金糸雀はバンドを組む前のあの時と同じように、誰に対しても作り笑いを振り撒いている。

 そんな金糸雀の様子を乙女は度々横目に見ながら日々を過ごしていた。



「──かな」


 休み時間、日花は金糸雀に話しかけた。


「どうしました?」

「合計30以上はチケット売ったよ」

「30人!?凄いですわ、頑張りましたわね日花」

「うん。《《私》》頑張った」

「そうですわね」

「……あ、あのさ、かな!放課後、少し、付き合ってくれない……?」


 日花は食い気味に金糸雀に迫った。


「……今日の放課後ですの?」

「……うん。今日の放課後」

「そうですわね……問題はありませんわ」

「ほんと?」

「わたくし嘘は付きませんわ」

「よし……。ありがとう。また放課後ね」

「ええ」


 日花は嬉しそうな顔をして金糸雀の席の前から離れていく。


「…………」


 そんな様子を遠目から見ていた乙女は窓の外へと目を逸らし、頬杖をつきながら「面白くない」と言わんばかりのため息をつく。


「……いいわね、幼馴染ってご身分は」


 そう、零した。


 ここ1ヶ月間、乙女や金糸雀だけではなく、ザハラ日花もまた、元の立ち位置に戻っていた。


 元の、幼馴染という立ち位置に。


 以前の乙女が宣戦布告と受け取ったあの顔も、変な笑いも、きっと思い過ごしだった。

 寄辺数ヴァイオリンに嫉妬したあの時と同じように、また誰かを勝手に恋敵だと誤認しただけなのだ。

 実際日花は乙女を敵視していたが、それはきっと、純粋に、金糸雀の幼馴染というプライドのようなものが暴走していただけなのだと乙女は思う。


 金糸雀は誰のものでもない。


 だから、きっと、大丈夫。




◇◇◇




 放課後。


「かな。行こ」

「ええ」


 日花に誘われた金糸雀は、日花と共に教室を出た。


「喫茶店……行こうと思う」

「いいですわね」


 そして金糸雀は日花に連れられながら、目的地まで歩く。


「……ここ」


 駅の近くの、洒落た喫茶店。カランというベルの音を立てて中へ入る。慣れない苦い匂いがする。

 流れているのは優雅なクラシック。

 内装は、むき出しの木の色が温かい印象を感じさせる。


「いらっしゃいませーお好きな席へどーぞっ」


 店員のお姉さんが可愛らしい声で挨拶をしてくれた。


 金糸雀と日花は奥の窓際の席へと進んだ。

 向かい合って座る。

 メニューブックを見てすぐ、日花は自分は決まってるというように金糸雀に伝えた。


「……私はミルクレープとオリジナルブレンド」

「え、あ、ではわたくしは……」


 金糸雀はメニューブックを見た。


「……」


 バリエーション豊富なパフェの数々、チーズケーキ、ミルクレープ、プリン等。

 スイーツはどれも美味しそうだが、ドリンクのラインナップを見て金糸雀は店内の苦い匂いの正体に気付くと同時に、このカフェについても理解する。

 コーヒーばかり。というより、コーヒーしかない。


「……日花、どれがおすすめですの?」

「無難なのはチーズケーキ。コーヒーはブレンド」

「では……わたくしはそれで」

「ん」


 日花は呼び出しのベルを軽く叩く。先程のお姉さんが注文を取りに来た。


「ご注文は」

「チーズケーキとミルクレープひとつ、オリジナルブレンドふたつ」

「チーズケーキおひとつミルクレープおひとつ、オリジナルブレンドがおふつでお間違いないでしょうか」

「はい」

「はーいっ。しばらくお待ちください」


 そしてしばらく待てば、注文はすぐに届いた。


「……」


 金糸雀はコーヒーを見て思わずほんの少しだけ顔をしかめてしまった。

 テーブルの端からミルクと砂糖を取って入れて混ぜ、コーヒーカップに口をつけた。

 だいたい30度程度の角度でカットされたチーズケーキにフォークで入刀。刺して口へ運ぶ。かなり柔らかく、溶けるような質感で美味しい。


「……かな」


 チーズケーキが半分ほど減ったところで、日花が金糸雀を呼んだ。


「はい?」

「今……大事な話してもいい?」

「まあ……かまいませんわ」

「……」


 日花は深呼吸をした。そして金糸雀の目をまっすぐ見つめ口を開く。


「私、かなのことが好き」


「……そう。それは嬉しいですわね」


「ライクじゃない。恋愛対象としてかなが好き。私と付き合って」


 金糸雀はただ、呆然としたままその言葉を受け取った。


「……わたくしも──」


「──」


 ──日花の目が見開かれる。だが。


「──日花のことは好きですわ。だけど、おかしいですわ。女の子同士で恋愛なんて」


「っ……かな、私は本当に……好きで……」


「幼馴染だから特別に想うだけではなくて?」


「それは……」


「わたくしも……日花の事は、大切に思っていますわ。良き友人として、バンドメンバーとして。……だからこの先も付き合いは続いていく。それで十分ではなくて?」


「……そっか」


「ええ。だから──」


「──じゃあ暁乃乙女のことも、好きなんかじゃないよね?」


「…………」


 金糸雀の眉がピクリと動いた。


「……何故、乙女の名前が出てくるのです」

「……別に、なんとなく」

「……おかしなことを」


 金糸雀はチーズケーキを食べ進める。


「……そもそも。わたくしに恋愛なんてできませんわ。……そんなこと許されていませんもの」


 コーヒーに口をつけ、歪んだ表情をカモフラージュする。


「……日花。代金はわたくしが出します。期末考査の勉強があるので帰りますわ。また明日、バンド練習で」



……To be continued

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