第19話【本格始動】
「さて。これで本格始動できますわね!」
金糸雀はベースを構え、嬉しそうな笑顔で他3人を見た。
乙女は可愛いなぁと思いながらも、何をし始めるのかをちゃんと聞く。
「本格始動……って、具体的にどうするの?」
「決まっているでしょう?ライブですわっ!」
「ライブ……」
乙女は、SKYSHIPSやBluelossのライブを思い返した。
赤や青に光るステージで放つ、息のあった爆音。
アレを、自分も。
「ライブハウスの目星はついてるの?」
乙女は金糸雀に聞く。
「ええ。高校生でも使いやすいと評判のライブハウスがありますのよ」
金糸雀は携帯を取り出し、地図を開きその場所をタップしメンバーに見せる。
「『八王子リフレイン』。初心者高校生も気軽に出演OKとのことですわ」
「へー、なかなかよさげじゃん」
数も納得したようだった。
「それで、ライブはできれば、対バン形式にしたいと思っていますわ。あまり大きなライブハウスではありませんが、それでもわたくしたちにできる集客はせいぜいクラスメイト数人が来てくだされば良い方ですわ。路上ライブやSNSを活用したとしても、どれだけ集まるかはやってみない事には分かりませんし」
「そうね……」
乙女は頷くが、数は何か言いたげにふたりを見た。
「それは構わないけど、そんなに人来ないものなの?花葉も暁乃も美人だし、クラスメイトとか、特に男子は誘えばすぐ来てくれるんじゃないの?」
「それはちょっと……」
乙女は顔を顰めた。
金糸雀もあまり乗り気ではい顔をしている。
確かに金糸雀も乙女も、同級生の男子からの人気は高いが、今の今までふたり揃って男子からの告白は振りまくっている。金糸雀は高嶺の花、乙女は棘のある薔薇のような存在。思わせぶりな態度は絶対に取りたくない。
そして乙女はザハラ日花の嫌がらせ行為の影響や、男子からの人気により「お高くとまっている」として女子からはあまりよく思われておらず、金糸雀もまた、味方のフリをした馬鹿共を敵に回して乙女を庇ったために、今まで寄って集ってきていた取り巻きが消失している。
先週、いや、もっと前。乙女が金糸雀を好きになってしまったがために。金糸雀は誰からも愛される存在から変わってしまった。
そう思うと、乙女は途端に申し訳なくなってしまった。
もっと平然として、金糸雀とも普通の友達として接することができたなら、クラスメイトをライブに誘うことなど容易かっただろうに。
そこで声を上げたのは日花だった。
「私が誘ってみようか?」
「日花……」
「かなが話しかけに行ったら思わせぶりになるかもしれないけど、私が誘えばそんなことも無くない?」
「……確かに、そうかもしれませんわね。日花、お願いしてもいい?」
「任して」
日花は微笑む。
しかし、乙女には、その顔がどこか邪悪なように見えた。
「……さて、ではライブの日程などは追々。集客は出演日が決まってからですわね。恐らく1ヶ月以上先にはなると思いますわ。その出演日までの間、わたくしたちは新たなオリジナル曲の製作と、演奏の腕を磨き、路上ライブやSNSを通してバンドの知名度を上げ、チケットを売る。このような活動となりますわ。異論はありませんわね?」
「ええ」
異論は無かった。ただ乙女は、ザハラ日花だけが気がかりだった。
◇◇◇
ライブの日は、約1ヶ月後、6月終わりの木曜日に決まった。
その間、DAYBREAKはライブへ向けて練習、そして宣伝に力を入れて、バンド活動を続けた。
中間考査を跨いで、期末考査直前という微妙な時期だが仕方がない。乙女は自分なりに勉強と音楽を頑張った。
金糸雀は更に、『Dawn』だけだったオリジナル曲に新曲を2曲作り上げ、ライブへ向けてDAYBREAKを更に強化。
数は数で、2年生を何人かライブに誘うことに成功。
日花は約束通り、男子含むクラスメイトたちにチケットを売りつけた。
そうして、DAYBREAKの1ヶ月はすぐに過ぎていった。
……To be continued




