知らない天井
....
「あれ、ここどこだ」
気がついたら、私は白いベッドの上で知らない天井を見つめていた
「目が覚めた?」
声の方を向くと、黒髪ロングヘアで大きなリボンを身につけた女子高生が、椅子に腰掛けていた。リボンの色を見るにきっと高校3年生の先輩だと思う
「ここ、保健室だよ。入学式の途中で倒れちゃったって」
「……あ、そうなんですね」
喉が少し痛かった。泣いた後の感じに、よく似ている
「びっくりした? 私も最初、知らない場所だと焦るんだよね」
「……はい」
「大丈夫。入学式、もう終わったし」
「……迷惑、かけちゃいました」
「ううん、しょうがないよ。緊張する日だし」
その言い方が、やけに自然で、少しだけ肩の力が抜けた
「私、朝倉しおりって言うんだ。3年生だよ」
「さ、佐倉……花奏です」
「花奏ちゃん、ね」
呼ばれた名前が、やけに優しく聞こえた
「体調、もう平気そう?」
「……はい。たぶん」
先輩はそれ以上、何も聞かなかった
私たちの間に、少し沈黙が落ちる
「私、これから部室行くんだ」
「部室……ですか」
「うん。スクールアイドル同好会」
その言葉に、胸の奥が、わずかに揺れた
「……大会とか、出るんですか」
自分でも、どうして聞いたのか分からなかったが聞いてしまった
「出ないよ」
「え……?」
即答だった。思わず驚きの声が漏れてしまった
「好きな時に歌って、踊って、楽しむだけ」
「……そうなんですね」
「うん。そうだよ」
先輩はまるで当たり前のことかのように言った
「あの、もし、時間あったら」
そう言って私はベッドから立ち上がる
「うん、もちろんだよ」




