先輩の決意
練習はこれまで以上にやった。唯一の三年生として、期待に応えなきゃと思ったし、手を抜くなんてできなかった
大会は成功だった。歓声も、結果も、ついてきた。センターで踊る景色は眩しかった
けれど、ステージの上でふと、隣が空いている気がした
本当は、そこにいたはずの誰かを、私は思い出していた
大会が終わって、私は唯一の最上級生になった。名門校から推薦の話も来た
誇らしかったし、嬉しかった
でも
私はもう、あのやり方でスクールアイドルを続けたくなかった
努力は間違っていない。選ばれたことも、悪いことじゃない
それでも、私は守りたかった約束を守れなかった
「みんなで」
そう言いながら、最後はひとりで立っていた
その事実が、ずっと胸に残っていて
だから推薦は断った。スクールアイドルは、もうやらないつもりだった
この高校に入学して、普通の学生生活を送るつもりでいた。
そんなとき、純粋に歌うことが好きなこと出会った
あの子は、ただ歌うのが楽しいという顔をしていた。順位も評価も関係なく、好きだから歌っているという顔だった
それを見たとき、思い出した
私も最初はそうだった
誰かに勝ちたかったわけじゃない。ただ、歌うのが楽しくて、みんなと踊る時間が好きだった
私は、その気持ちをどこかに置いてきてしまっていた
だから同好会を作った
今度は、誰かを置いていく場所にはしたくなかった
上手い人だけが立つ場所じゃなくて、みんなと一緒に立つことを大事にできる場所にしたかった
努力を否定するつもりはない
本気になることは、きっと間違いじゃない
でも、本気だからこそ、ひとりで背負わなくていい
私は、あのときひとりで立とうとしてしまったから
もしあの頃の私に声をかけられるなら、きっと
大丈夫。隣を見ていいよ、って




