合宿をしよう
「みんな、ちょっといい?」
朝倉先輩が、いつもの柔らかい声で切り出す
自然と、部室の空気がそちらに集まった
「次のライブまで、あと三日だね」
「え、もう?」
「時間経つの早すぎ!」
「うん。だからね、少し練習のやり方を変えたいなって思ってて」
星野先輩は少し考えるように視線を落とし、それから私たちを見た
「……合宿、しない?」
一瞬、間が空く
「がっしゅく?」
「泊まり込み!?」
「え、めっちゃ楽しそう!」
星野先輩が一番に食いついた
「歌の練習も集中できそうだね」
手を合わせてエルナ先輩も賛同の意を示す
「場所はまだ決めてないけど、学校に申請すればいけそうかなって」
朝倉先輩はそう言って、私の方を見る
「花奏ちゃんは、どう思う?」
「……え?」
急に振られて、少し戸惑う
合宿
泊まり込み
ずっと一緒
楽しそうと思う気持ちと同時に、胸の奥が小さくざわついた
(ちゃんと、ついていけるかな)
それでも
「……やってみたい、です」
自分でも少し驚くくらい、言葉は自然に出てきた
「そっか」
しおり先輩は、嬉しそうに微笑んだ
「じゃあ、決まりだね」
「やったー!」
「お泊まり会みたい!」
みんなの声が弾む中、私はその輪を見つめながら、静かに息を吸った
——きっと、この合宿で
何かが、変わるかもしれない
そんな予感だけが、胸に残っていた




