失敗したって
午後になって、ようやく少し落ち着いた頃
ピンポーン
インターホンが鳴った
びくりと体が跳ねる
ピンポーン
もう一度、鳴る。私は重い体を起こした
「……はい」
小さな声で答えると、聞き覚えのある声が返ってきた
「花奏ちゃん、るなだけど……お見舞い、来ちゃった」
玄関のドアを開けると、私服の星野先輩が立っている
いつもの明るさは少し控えめで、でも変わらず柔らかい顔で笑っていた
「急にごめんね。しおり先輩たち、今日はどうしても外せない用事があるみたいで」
「……い、いえ」
部屋に通すと、先輩はきょろきょろと周りを見てから、ベッドの端に腰掛けた
私はお茶を淹れて、テーブルに置く
…
少しの沈黙
「……無理に話さなくていいよ」
その言葉に、胸が少しだけ緩む
「でもさ」
星野先輩は、足をぶらぶらさせながら続けた
「花奏ちゃん、最近ずっと頑張りすぎてたと思う」
「……」
「失敗しないように、失敗しないようにって顔、してた」
図星だった
「私ね」
先輩は少し間を置いて
「一年生の頃、失恋してさ」
と言って、軽く笑って見せた
「え」
意外な言葉に、顔を上げる
「めちゃくちゃ落ち込んで、何もしたくなくなって。可愛いとか言われても、全然嬉しくなくて」
「……」
「そんな時に、エルナ先輩としおり先輩たちのライブを見て、笑って踊って、楽しそうな姿見たら自分もやりたくなって、それでスクールアイドル始めたの。初心者だったし、全然うまく踊れなかった」
「...」
「でも、私が楽しそうにしてると、周りも笑ってくれるし、私自身が嬉しいから、自然と心から笑えて、自信が湧いてくるんだ」
胸の奥が、少しだけ温かくなる
「花奏ちゃんは、考えすぎなんだよ」
先輩の視線が、真っ直ぐ向けられる
「自分が失敗することで、誰かが悲しむのが怖いんでしょ」
言葉を失う
「でもね」
先輩は、そっと続けた
「花奏ちゃんが一生懸命やってる姿で、不安になる人なんていないと思う」
「……」
「失敗したって、みんなで笑えばいいじゃん。だって、同好会だよ?」
その言葉に、胸がきゅっとなった
「完璧じゃなくても」
星野先輩は、少し照れながら言った
「ありのままでいるのが一番可愛いって思うよ、私は」
部屋に、静かな空気が流れる。気づけば、喉の奥に詰まっていたものが、少し溶けていた感じがした
「先輩、もしよかったら踊りの練習見てくれませんか?」




