ライブをしよう
部室の外から差し込む夕日が、床に長い影を落としている。練習終わりによくある少し汗の混じった空気の中で、私たちは丸くなって座っていた
「さてさて」
朝倉先輩がパンと一度手を叩き、ホワイトボードのペンを手に取ると
"次のライブについて"
と大きく書き出した
「今日は次のライブについてみんなで話そうと思いまーす」
「ライブ!?」
星野先輩が立ち上がり目をキラキラさせながら机をドンと叩く
「いつ!?どこ!?衣装は!?」
「落ち着いて、るなちゃん。どうどう」
エルナ先輩が暴れ馬を落ち着かせるように星野先輩の背中を撫でる
「だって可愛いあたしをまた見てもらえるってことじゃないですか!?」
「それだけじゃないよ」
エルナ先輩がくすっと笑いながら口を挟む
「歌えて、踊れて、みんなが笑顔になる」
「……それも含めてです!」
星野先輩は胸を張って言い切った
そのやり取りを私は少し後ろから見つめていた
“次のライブ”
その言葉を聞いただけで、胸の奥が小さくざわつく
「今回はね、商店街のイベントに呼ばれてるの」
朝倉先輩の声で意識が現実に引き戻される
「大きなステージじゃないけど、その分お客さんとの距離が近い。新入生歓迎会とか文化祭とかとはまた違う雰囲気になると思う」
「えー、じゃあ余計に可愛くしなきゃじゃないですか!」
「るなちゃんはいつもそう言うね」
「だって大事ですよね?第一印象!」
「第一印象だけじゃないけどね」
エルナ先輩はそう言いながら私の方をちらっと見る
「……?」
目が合って、私は慌てて視線を逸らした
「曲はどうするの?」
エルナ先輩が自然に話題を進める
「前回と同じ曲もいいけど、新しい曲も入れたいよね」
「新曲!?それは萌えますね!」
るな先輩が立ち上がりそうな勢いで身を乗り出す
「振り付けも変えませんか?あたし、センターでこう、キュッてして、バーン!って感じのやつやりたいです!」
「全然伝わらないけど、元気なのは伝わるよ」
朝倉先輩が苦笑する
「花奏ちゃんはどう思う?」
突然名前を呼ばれて、ドキッとした
「え、あ、えっと……」
みんなの視線が一斉に集まる
(...)
嫌じゃない。でも、少しだけ息が詰まる
「……新しい曲、いいと思います」
絞り出すように言うと、るな先輩がぱっと笑った
「でしょ!?新しいのやろうよ!」
「花奏ちゃんがそう言うなら、なおさらだね」
エルナ先輩の声は相変わらず優しかった
「じゃあ、新曲メインでいこうか」
朝倉先輩がライブの方針をホワイトボードに書き出す
「衣装はどうする?」
「明るいやつがいいです!絶対!」
「動きやすさも大事だよ」
「可愛さと動きやすさ、両立させればいいと思います!」
三人の会話は止まらない。その中心にいながら、私は少しだけ距離を感じていた




