op15 入れ替わり
ゴゴゴゴゴゴ
歯車の回る広々とした部屋でデウスエクスマキナがソファーに寝転がっていた。
あくびをしながら、本を読んでいる。
ジジジ ジジジジ・・・
突然、魔法陣が展開されて光りだした。
「っ・・・デウスエクスマキナ!」
魔法陣から現れたリリスが怒って、デウスエクスマキナに近づいていった。
蒼いワンピースをなびかせていた。
「へぇ、そのワンピース似合うね。黒いローブじゃないなんて珍しい。このローブじゃなきゃ魔力が安定しないのに」
デウスエクスマキナが本に栞を挟んで起き上がる。
「デートは楽しかった?」
「急に転移させるなんて、どうゆうこと!?」
「デートが終わるまで待っててあげたんだよ。AIルルから文書はもらっていたでしょ? 同意したじゃない」
「そ・・・そうだけど・・・! まだ、余韻を楽しんでた!」
「ごめんごめん」
リリスが頬を膨らませる。
「どんなデートだったの?」
「花火を見たの。すごく大きくてね、ドーンって音が鳴って、花火が夜空をぴかっと照らすの」
「そんなの魔法でよくやるじゃない」
「デウスエクスマキナはわかってないなぁ。好きな人と見るから楽しいんだよ」
「ふうん」
デウスエクスマキナがつまらなそうにした。
「・・・カイトといるのは、やっぱり楽しいね。カイトの前世も、そのまた前世も、ずっと楽しかったのを思い出した」
リリスが胸の前で魔法少女の鍵を握り締める。
「・・・もう少し、いたかったな」
「私だって花音といたいよ。でも、大きな歯車が回りだして、時期が早まった。花音はエレノアと主の契約を結んだ」
「エレノアって、ファナの前の魔法少女戦争の勝者だよね?」
「そ、彼女ならうまく花音を守ってくれるはず」
「・・・そっか」
リリスの表情が曇っていった。
デウスエクスマキナが立ち上がって、リリスの傍にふわっと飛んでいく。
「リリスはデウスエクスマキナとしてここにいる」
「デウスエクスマキナは私、リリスとして、魔法少女戦争に参戦する」
サァア
2人が両手を合わせると、服が入れ替わった。
リリスが魔法少女の鍵をデウスエクスマキナに渡す。
「リリスがいると、呪いが発動して、花音は死んじゃうから」
「デウスエクスマキナなら呪いは発動しない。"成れ果て"は魔法少女にカウントされないもんね」
黒いローブになった、リリスが力なく笑う。
「ちゃんと私らしく振舞ってね。魔力も変えて」
「もちろん。そっちも、歯車の動き確認してね。動かない歯車があったら外すのに、ボードの・・・・」
「やり方はわかってるよ。500年前にやったの覚えてるから」
リリスがゆっくりと中央に歩いていく。
「・・・あのときは失敗したけど、今回は間違えない。絶対に」
「本心?」
「本心だよ」
リリスがボードの前に座ってほほ笑む。
「お互いに何考えてるか、わかっているようでわからないね」
「デウスエクスマキナと私は正反対だからね」
「あと、このワンピースは変えなきゃ。さすがに、動きにくい・・・・」
デウスエクスマキナが顔をしかめて、黒いローブに戻していた。
リリスがため息をつく。
「ふぅ、落ち着いた」
「カイトとイチャイチャしちゃ駄目だからね」
「どうかなぁ。リリスらしく振舞うんでしょ? 難しいかもよ?」
「私、そんなにイチャイチャしてない!」
「あ、そう」
デウスエクスマキナがいたずらっぽく笑いかける。
「じゃ、何かあったら・・・すぐね、すぐ入れ替わってね」
「はーい」
デウスエクスマキナが手を振った。
転移魔法陣を展開して、音もなく瞬時に消えていった。
「あーあ、寂しいなぁ」
リリスが背もたれに寄りかかって歯車を見つめる。
「AIルル」
リリスが小さく呟く。
『はい。どうしましたか?』
AIルルはすぐに現れた。
「私、デウスエクスマキナに見える?」
『ん? どうされましたか? デウスエクスマキナ様はデウスエクスマキナ様ですよ』
「・・・よかった」
リリスが悲しそうにAIルルを見つめる。
『どうしたのですか? デウスエクスマキナ様、さっきまで元気だったのに』
「楽しい思い出があるから、私は大丈夫だよ」
自分に言い聞かせるように言う。
『ん? 楽しい思い出?』
「そう。ねぇ、私、蒼いワンピース似合うと思う?」
『もちろんです。でも、デウスエクスマキナ様が服に拘るのは珍しいですね』
「そうだよね。たまにはいいかなって・・・思ったの」
AIルルが首をかしげていた。
でも、長らく会話しても、リリスとデウスエクスマキナが入れ替わっていることには気づかなった。




