op 14 主変更
「ナナキ、配信してる魔法少女が激減してる気がするよ」
『魔法少女も少なくなってきたんだろ』
「いつの間に、こんなに減ったのかな? 魔法少女アカデミア終了から急激に・・・?」
『さぁ』
「・・・いろいろあったもんね。私が見えるところでも、見えないところでも」
『・・・・・・』
人の姿に戻ったナナキが肘をついて視線を逸らす。
テーブルの端には、ハーブティーとカップが置かれていた。
花音が目の前に表示したモニターを覗き込んで、魔法少女配信者のSNSを確認している。
「SNSも荒れてるよ。急に推しの更新が途絶えたって、大混乱だ」
スクロールして、ランキング詳細の画面を開いた。
ランキング上位の魔法少女は、配信がしばらく止まっている子ばかりだった。
「この子たち、魔法少女戦争で負けちゃったのかな?」
『だろうな』
「そういえば、えりえり配信もなくなっちゃったもんね。うんうん、★アクト★さんわかるよ。寂しい気持ち、すごくわかる。でも、えりえりは泉の女神に戻ったから仕方ないんだよ」
えりえりのファンを名乗るアカウントに語りかけていた。
『そういえば、自分のリスナーは気にしなくていいのか?』
「さっき、SNS更新したんだ。トラブルがあってしばらく配信できなかったけど、再開しますって宣言してきた」
『仕事が早いねぇ』
「配信者になりたくて、魔法少女になったんだから当然だよ」
『あ、そう』
花音が自慢げに話す。
「ナナキはこの場所慣れた?」
『まぁ・・・懐かしい匂いはするよ。うっすらとこうゆう場所で過ごしたことあるの覚えてるから』
「宮殿の中庭って感じだよね」
『ったく・・・デウスエクスマキナもどうゆうつもりなんだろうな。檻に入れたと思えば、花音にこんな場所を用意するなんて』
ナナキがエジプト様式で装飾された柱を見つめながら言う。
「デウスエクスマキナにもきっと理由があるんだよ」
『花音は相手を信じすぎるんだよ』
「はは、デウスエクスマキナにも言われた」
花音が軽く伸びをする。
「でも、本当にデウスエクスマキナを信じてるの。彼女は間違いなくリリスだよ。どうして、リリスが2人いるのかはわからないけど、リリスは騙したりしない」
『確かに似ているけど、魔力が全然違うだろ。完全に別人が化けてるんだろ?』
「ううん、魔力が違っていてもわかるよ。きっとね、私、リリスが大好きだからわかるの。本当に不思議なんだけど、ずっと昔からリリスに憧れてた気がする」
『・・・・・・』
「あーあ、魔法少女戦争に関係なく、リリスと友達になれたらよかったのにね。映画言ったり、恋バナしたり・・・あ、恋バナは難しいか。リリス、カイトのこと好きだもんね」
花音が苦笑いする。
ナナキが黙ったまま、花音の目を見つめていた。
ブワッ
「!?」
エレノアが白い翼を広げて降り立つ。
魔法陣を展開すると、瞬時に白い翼は光の中に消えていった。
「て・・・天使?」
花音が驚いて立ち上がる。
ナナキは冷静にエレノアに視線を向ける。
「はじめまして、じゃないんだけどね。花音だよね?」
「え・・・・あ・・・うん、もしかして」
『熾天使までデウスエクスマキナについてるのか』
ナナキが頬杖をついて、息をついた。
『弱みでも握られtのか?』
「エジプト神アヌビス、人の姿に戻れたんだ」
『フン・・・・』
ナナキが不貞腐れていた。
「花音って呼んでもいい?」
「も、もちろん。私の・・・・新しい主? でも、天使の姿を・・・」
言葉を選んでもごもごしていた。
エレノアがふっと噴き出す。
「今は人間だよ。天使は自在に人間になれるの。ミハイルがそうだったでしょ?」
「あ、そっか」
花音が口に手をあてる。
「じゃあ、本題だけど・・・」
エレノアが胸に手をあてて、深呼吸をした。
「私と主の契約をして、花音」
『花音、デウスエクスマキナの策略に乗ったら駄目だ。奴は何を考えているかわからない』
「えっと・・・・」
ナナキがエレノアと花音の間に入る。
「サマエルと主の契約をしていたら、花音はリリスの目の前で死ぬことになる。デウスエクスマキナは、このルートを潰したいと思ってる」
「でも! ほら、メイリアの石化は解けたでしょ? 何か変わってきているのかもしれないし」
「呪いは簡単に解けるものじゃない。メイリアだって、今だけ、監視の目をうまく避けられているのかもしれない。本当はわからないの」
エレノアが真剣な表情で言う。
「・・・・・・」
花音が下を向く。
「花音の願いを聞かせて」
ナナキを避けて、花音に近づいた。
「主になる前に、貴女の願いが知りたい」
「私は・・・・魔法少女戦争の勝者になって、魔法少女全員を助けたいの。過去の魔法少女もみんな助けたい。だって、みんな普通の女の子になりたいでしょ? 私にそんなことができるのかわからないけどね」
花音が自信なさげにほほ笑む。
「・・・・・!」
花音が放つ黄金のような魔力が、エレノアには見えていた。
少し驚いた後、長い瞬きをする。
「デウスエクスマキナにも、見えていたのね」
「ん?」
花音が首を傾げた。
「ううん、何でもない。私ね、昔の魔法少女戦争の勝者だったの」
「えっ!?」
『!?』
ナナキと花音が同じように目を丸くしていた。
「私じゃ、魔法少女戦争を止めることができなかった。きっと、三賢ほどの力が無かったのね。そうだ、少し話しましょう」
エレノアが白銀の髪をリボンで結び直す。
「アヌビスの許可ももらわなきゃ、契約してもらえそうにないからね」
『・・・・・・・』
ナナキが無言で、テーブルの前に椅子を出した。
「ナナキ!」
『言っておくけど、話し聞くだけだから』
「うん。よろしくね、エレノア」
エレノアが椅子に座って背もたれに寄りかかる。
「あ、エレノアもハーブティー飲む?」
「うん。いい匂い、ローズマリーかな?」
「当たり。デウスエクスマキナが調合してくれて、ミントも少し入ってるよ」
花音が慣れない手つきで、デウスエクスマキナの用意したハーブティーを入れていた。
軽くテーブルに飛び散っている。
「おっと、もしかして注ぎすぎたかな?」
「大丈夫、大丈夫。ありがとう」
食器のカタカタする音に、エレノアが笑いながらカップを受け取っていた。




