op12 花音のための場所
「さっきは冷たくしちゃってごめんね。色々あって・・・あ、この場所は気に入ってくれた? マリア専用の場所を作るの、結構難しくて」
デウスエクスマキナの後ろを花音が歩いていく。
「私、花音だよ。マリアって慣れなくて」
「わかった、花音ね。ここはエジプトの様式も取り入れてるの。落ち着くでしょ?」
「えっと・・・この場所は・・・?」
花音が戸惑いながらこめかみを掻く。
「花音のための場所だよ」
「私の・・・」
デウスエクスマキナが花音に用意したのは、王宮の中庭のような場所だった。
花と花の間を、蝶が飛んでいる。
装飾の施された柱が並び、庭を囲むように清らかな水がさらさらと流れていた。
「花のある場所は落ち着くでしょ? 私のいる歯車の部屋だと、自由にできないし、ここなら私もすぐ来れるから」
デウスエクスマキナが赤い薔薇を出して、中央の丸テーブルの上に置いた。
ハーブティーを注いで、お菓子を置く。
「モニターも表示できるようにしたから試してみて。制限はあるけどね」
「あ、うん」
花音が指を動かしてモニターを表示した。
「配信もしたければしていいよ。配信は花音の力になるから。魔法は制限してる。ここから出たり、攻撃したりする魔法は全て封じてるの」
「リリス、どうして? みんなのところに戻っちゃ駄目なの?」
「デウスエクスマキナって呼んで」
デウスエクスマキナがほほ笑む。
「私は機械仕掛けの神デウスエクスマキナだから」
髪を耳にかけた。
「じゃあ、デウスエクスマキナはどうしてこんなことを?」
「花音の安全性を確保するため」
「私の安全性?」
「そう。ここを離れて、魔法少女戦争に行けば、呪いがある限り、リリスの目の前で死ぬことになるから」
デウスエクスマキナが薔薇の花びらに触れる。
「運命は変わってきてる。だからこそ、花音には慎重に進んでほしい。そうそう、アヌビスも連れてくるね。この庭は・・・」
「ふふ・・・」
花音が力が抜けたように笑う。
「デウスエクスマキナもここに座って?」
「え?」
花音が丸テーブルの椅子に座って、正面を指す。
「そんな固くならずに、ラフに話そうよ。リリス・・・じゃなくて、デウスエクスマキナを疑ったりしないから」
「ちゃんと疑わなきゃ駄目」
「わっ・・・」
デウスエクスマキナが花音のおでこを人差し指で突く。
「花音はそうゆうお人よしなところがあるから、足元すくわれるの」
「私だって信じられる子しか信じないよ」
「はぁ・・・・」
「あ、待って」
デウスエクスマキナが丸テーブルから離れる。
「ちゃんと話そうよ」
「今度ね。それより、花音の主を変えなきゃいけないの」
「えぇっ!? カイトから? どうして?」
花音が勢いよく立ち上がると、テーブルがガタガタ揺れる。
「カイト・・・に何かあったの? 無事だよね?」
「もちろん。でも、花音がこのままサマエルと契約していたら、運命は同じルートを辿ることになる。歯車の動きは変えられない」
「それって・・・・・」
「花音はリリスの前で死ぬことになる」
「っ・・・」
花音が口をつぐむ。
「人間になったサマエルと、主の契約を結ぶのは花音にとって良くない」
「でも・・・本当に死んじゃうかな? って、あまり信じられなくて。カイトは幼馴染だし、気心知れててやりやすいんだけど・・・・」
「花音はカイトのこと好きだもんね?」
「そ、そ、そうゆう意味じゃないよ!」
花音が顔を赤らめて両手を振った。
「わかってる。マリア・・・花音とは長い付き合いだもの。魔法少女戦争に勝ちたいでしょ?」
「・・・・うん。自分の使命だと思ってる」
花音が俯いて、小さく頷く。
「じゃあ、主はカイトじゃダメ。私がちゃんと主を用意するから、しばらくここでのんびりしていてね」
「あ・・・・デウスエクスマキナ」
花音が諦めて、座っていた。
デウスエクスマキナがふわっと飛んで、中庭から出ていく。
デウスエクスマキナが地面に展開した魔法陣から、歯車の部屋に移動していた。
長い瞬きをして、髪を後ろにやる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
「いい感じに回ってるね」
歯車ひとつひとつを確認しながら歩いていた。
「エレノア、来てくれてありがとう。『死者の国』でサマエルとは会ったんでしょ?」
「デウスエクスマキナ・・・・」
「怖い顔しないで。悪い話じゃないから」
デウスエクスマキナが椅子に座って足を組んだ。
「あ、元々熾天使なんだもんね。白い翼がしっくりくるね」
白銀の髪を赤いリボンで結んだ少女、エレノアが立っていた。
背中には純白の翼が生えている。
「私に何の用?」
エレノアが警戒しながら。デウスエクスマキナに声をかける。
「ちょっと待ってね。んーと、ここを動かして、と」
デウスエクスマキナが機嫌よく人形をつまんでいた。
テーブルに置いたボードの人形を一つ動かしてから、エレノアのほうを向く。




