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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第十章 夢幻泡影

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146 告白

「魔法少女はいないみたいだな」

「あまり、魔法少女とも遭遇しなくなったんだよね」


 歌を歌っている魔族を横目に歩いていた。

 ちょっとしたライブ会場にも見える。


「昨日、シロナとレベッカがだいぶ遠くまで確認してくれたんだけど、それらしき信号は無かったって。魔法少女戦争も終盤になってきてるのかもね」

「いよいよって感じだな・・・」

「うん、あ、このパン木の実が入ってる。見慣れない木の実だから、魔界のものを再現してたりするのかな?」

 リリスが黒っぽい緑色のパンを食べながら言う。

 原材料はわからないが、パンの甘い香りがした。


「それ・・・美味しいのか?」

「美味しいよ。食べてみる?」

 リリスが少しちぎって、こちらに差し出してきた。


「いいよ。腹壊しそうだし」

「魔界の懐かしい味がするかもよ?」


「魔界にいたときのことなんてほとんど覚えてないからな」

「どうかな? カイトは私に隠し事しようとするから」

 冗談っぽく笑った。


「・・・それはお互い様だろ?」


「私は別に隠してないよ」

「嘘が下手だな。無理に探らないから安心しろ」 


 少し間が開いて、リリスがちぎったパンを口に入れていた。


「・・・・・・」

 街はお祭りのように賑わっている。


「ん?」

 突然、ゴブリンの集団が正面から走ってきた。

 行き交う者たちが、一斉に道を開けた。


 ドドドドドド


「わっ・・・」

「っと・・・」

 リリスを引っ張った。

 前から走ってくる雪男3体を避ける。


「危ないな。しかも、なんか寒い・・・つか、あいつらが通った後、氷が落ちてるんだが・・・・」

「何やってるのかな?」

「知らん。でも、こうゆう意味の分からないことが起こるのが魔界らしいよ」

 頭を掻いた。


「電子世界と魔界って、もしかして相性いいのかな?」

「まぁ、SNSもある意味魔界みたいなものだしな」

 

 隣にいた尻尾の生えた者と、角の生えた者がちらちらこちらを見てくる。


「あ、もしかして、サマエル様じゃない?」

「本当だ。失礼します!」


「・・・・」

 無言で手を振る。


 歩いていると、たまに、深々と頭を下げられた。

 面倒だから、フードを深々と被っていた。


「カイトにとっては歩きにくそうだね?」

「ぶっちゃけ、あまり騒がしいところは通りたくないけどな。でも、今日はリリスが主役だ。リリスの好きなところに行こう」


「ありがと。ふふ、デートって楽しいなぁ」


 最後の一口を食べて、満足そうにしていた。





「夜になったら花火が上がるみたいだよ。さっき、どこの魔道具の店長に聞いてきた」

「へぇ・・・花火かぁ」

 大きな木の下でリリスが待っていた。


「それまでに魔法少女が来たらどうする?」

「全力で逃げるか」


「勝てる戦闘に逃げるなんてもったいないなぁ。私は別に、魔法使ってもいいんだよ?」


「倒すのなんて、明日でも明後日でもいいだろ?」

「・・・まぁね。今回は確実に手ごたえがある。魔法少女アカデミアで、いろんな魔法少女を見てきたけど、私より強い子いなかったんだ。前回、勝ち抜いたファナより全然弱かった」

 リリスがベンチに座って足を伸ばした。


「勝てる気がするよ」

「あまり自信ありすぎると、足元すくわれるぞ」


「そうだね。魔法少女が絞られてきた今こそ、ちゃんと気を引き締めなきゃ」

 隣に座って、後ろに手をつく。


「ねぇ、カイトは七陣魔導団ゲヘナに来てよかったと思ってる?」


「俺は入るよう決められていたんだろ?」

「・・・・そうだったのかもね」


 リリスはおそらく何かを隠している。

 ずっと前から、な。


 風が吹くと木が大きく揺れていた。


「七陣魔導団ゲヘナはクリフォトの魔神たちがいるしな。遅かれ早かれ、関わることになっていただろ。居心地もいいし、よかったと思ってるよ」

「確かにカイトはモテるし、7人の魔法少女全員、カイトのこと好きみたいだし、楽しいよね」

「ん・・・・?」

 リリスが少し頬を膨らませる。


「やきもちか?」

「やきもちだよ」


「今更どうしたんだよ」

 サファイヤのような瞳に、俺が映る。


「カイトはみんなのことを考えてくれるけど、私のことは全然考えてくれないし。別にいいけど、私は強いから」

「まだ根に持ってるのか」

「・・・・・ううん・・・」

 リリスが視線を逸らす。


「はぁ・・・そもそも俺がリリスを好きなことはわかってるだろ?」

「私がサマエルに願ったから、好きなだけだよ」

「そうじゃないって。好きじゃなきゃ、とっくに契約破棄して、美憂と一緒に脱走してる」


「・・・・・・」

 息をついた。


「好きだよ。俺が好きなのは、リリスだけだ」


「そう・・・・・」

「疑うなら何でも言ってやる。好きだ、好きだ、好きだー、リリスが・・・」


「わー、や、やめて、もう恥ずかしいから!」

 リリスが顔を赤らめて、手を振った。


「そ・・・そう思い込んでるなら、別にいいけど」


「・・・・俺が『ロンギヌスの槍』の持ち主になって、魔法少女戦争を終わらせるんだろ?」

「うん。絶対に、やり遂げなきゃ。今度こそ、絶対に」

 自分に言い聞かせるように話していた。


「あ、デートなのにカイトと話すと魔法少女戦争の話になっちゃうね。違う話にしよ。えーっと、ゲームの話とか・・・」

「リリス」

 手を組んで、地面を見つめる。

 街の喧騒が一瞬途切れたような気がした。


「魔法少女戦争で俺が『ロンの槍』を手に入れたら、リリスはどうなるんだ?」

「不老不死の呪いは解けて、めでたしめでたしって感じかな」


「リリスは死ぬのか?」


「え・・・・・・」


 リリスが驚いたような表情でこちらを見ていた。


「そ、そりゃ、死ぬよ。不老不死じゃなくなるんだから、人はいずれ死ぬものでしょ?」

「終わったら、すぐに死ぬんだろう? 14歳のリリスのまま」

「・・・・どうしてそう思うの?」


「ただの勘だよ」

 ひらひらと落ちてきた木の葉を掴む。


「死ぬんだな?」

「怖いなぁ、さすがサマエルだね」

 リリスが明るい口調で言う。


「そう、死ぬよ。魔法少女戦争で、カイトが勝って『ロンギヌスの槍』を手に入れれば、私は死ぬの。寿命はとっくに過ぎていて、三賢の呪いだけで生きてきたから」

 間を置いて、ほほ笑む。


「魔法が使えなくなって、普通の女の子として死ぬの。でも、嬉しいことなんだよ。やっと、魔法少女戦争から解放される」

「じゃあ、なんで泣くんだ?」

「え・・・・」

 瞬きをすると、リリスの瞳から涙がこぼれた。

 リリスが慌てて両手で拭った。


「な・・・なんでだろう。魔法少女戦争を終わらせたい気持ちに偽りは無いの。本当だよ、本当に無いんだよ」

「わかってる」

 リリスを抱きしめる。


「でも、魔法少女戦争で私たちが勝利すると、もう、メイリアにもマリアにも会えなくなる。サマエルに・・・カイトに会えなくなっちゃう」

「あぁ・・・」

「本音を言うと、少しだけ寂しい。普通の女の子みたいに、カイトと一緒に歳を取って、カイトと大人になってみたい。でも、魔法少女戦争に勝つって意志に、曇りは無いんだよ・・・・」

 リリスの体は温かかった。

 蒼いワンピースを着たリリスは、本当にただの14歳の少女に見える。


「勝つよ。絶対に勝つ。勝たなきゃいけないの。魔法少女戦争を起こしてしまった罪を・・・最初に魔法少女になってしまった罪を償わなきゃ。じゃなきゃ、メイリアにもマリアにも・・・魔法少女をたくさん殺してきたことも・・・」

「もういい。ごめん。わかってるよ」

 リリスの髪を撫でる。


「安心しろ。もう、リリスを独りにさせないから」


「・・・今度こそ・・・・?」

「あぁ」

 リリスは俺ができるかどうかは、疑わなかった。


「リリスといるよ。魔法少女戦争を終わらせても、リリスといる。一人にはさせない」

 声を低くする。


「だから、泣くな」

「うん・・・・」

 リリスの震えが、少しずつ収まっていった。

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