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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第十章 夢幻泡影

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145 デート

 ― リリスには気をつけろ ―


 "成れ果て"から出たときに、一瞬だけ父さんの声が聞こえたような気がした。

 今思い返せば、気のせいのようにも思えるが・・・。


「カイト、待たせちゃってごめんね」


「・・・・・・・」


 リリスが海を溶かしたような蒼いワンピースを着ていた。

 唇がほんのりと赤く色づいている。

 

「あ・・・・・」

 一瞬固まってしまった。


「・・・えっと、黒いローブのほうがよかった?」

「似合ってるよ。たまにはいいじゃん、そうゆう服も」

「そ・・・そっか。そうかな?」

 リリスが少し頬を赤らめた。


 ロストグリモワールを消して、頭を掻く。


「でも、デートって言ったってどこに行けばいいんだろうな。ここ、電子世界だし・・・セレーヌ城は出なきゃいけないだろ?」

「カイトはどこか行きたいところある?」


「そうだな・・・」


 ラインハルトに聞いてみればよかったな。

 普通のデートなら、映画とか遊園地とか行くんだろうけど、ここは電子世界の中だし、下手に動けば、いつ他の魔法少女と戦闘になるのか・・・。


 魔法少女戦争中にデートすること自体、無理がある気が・・・。


「じゃあ、こっち」

 リリスが北東を指さす。


 カプリニクスのダンジョンがあった方角だった。

 魔法少女アカデミアが作られて以来、どうなっているのかはわからないけどな。


「了解。転移魔法は無いし、飛んでいくか」

「待って」

 自分に浮遊魔法をかけようとすると、リリスが止めた。


「デートなんだよ。歩いていこうよ」


「歩いて?」

「デートは歩くものじゃないの? みんな、歩いてデートしてたでしょ?」

 不思議そうに聞いてくる。


「普通の人間は魔法を使えないから、歩くしかないんだって」

「あ、そっか」

「じゃあ、リリスは今日1日、魔法無しってことにするか」


「えっ!?」


 リリスが着なれないワンピースを押さえて、俯く。


「魔法無しは難しいな。自然に使っちゃうんだよね」

「なるほど。自然とねぇ・・・」

 腕を組んで、セレーヌ城の敷地内から出ていく。


「ねぇ、2人で歩いてると、カイトと電子世界に入ったばかりのとき、思い出さない?」

 リリスが指をくるっと回していた。


「そうだな・・・」

「なんかドタバタで入っちゃったもんね」

 風が草原を撫でていく。




「どうしてこっちの方角なんだ? 何かあるのか?」

「魔法少女アカデミアにいたときにね、一緒のクラスだった魔法少女の子に聞いたの。小さな街があって、美味しい食べ物や魔道具がたくさん置いてるんだって」

 リリスが嬉しそうに話す。


「そうゆう場所なら、魔界の住人が居そうだけどな」


「私もそう思ったの。魔道具もあるなら、魔界の住人が好きだよね。そういえば、魔界の子とも仲良くなったんだよ。小さい子が5人くらい来て、ステラと部屋荒らしちゃって大変だったの」

「奴ら、いたずらが過ぎるんだよ」

 うっすらとした記憶をたどって、息をついた。


「魔界の子が面白がって枕を投げてきたの。そしたらステラもやり返して、いつの間にか全員で枕投げのゲームになっちゃってね・・・」

「はは・・・・」


「え? どうしたの?」

 思わず笑うと、リリスが不思議そうにこちらを見た。


「なんか、魔法少女じゃないリリスと話してるみたいだなって思って」

「やっぱり、この服、似合わないかな? いつものローブのほうが・・・」


「そうじゃないって」

 リリスの手を掴む。


「カイト・・・?」


「美憂にエスコートしろって言われたからな。魔法が必要だったら俺が使う。今日はリリスは魔法使わなくて、普通の女の子でいろよ」

「だって、魔法少女だもん・・・」

 リリスが力なく笑う。


「魔法が染みついてるんだから」

「じゃあ、今日は魔法使わないように、努力をすること」


 地面を蹴って、魔法陣を展開する。


 ― スレイプニール ―


 魔法陣の中から鬣の艶やかな黒い馬が飛び出してくる。

 背中の翼を大きく広げていた。


「久しぶりだな、スレイプニール」


『サマエル様が、私を召喚するのは珍しい。何か困ったことでも? 戦闘であれば、力になりますよ』

「戦闘で呼んだんじゃないって」

 笑いながら、スレイプニールの鬣を撫でる。

 

「北欧神オーディンの・・・どうして、カイトが召喚できるの?」


「たまに魔界に遊びに来てたのを思い出したんだ。本当はダメなんだよな。オーディンから怒られるから内緒にしておいてくれ」

『よろしくお願いしますね』

 スレイプニールが背筋を伸ばして、リリスのほうを見る。


「もちろん、言わないよ。それに、私、オーディンと接点ないしね」

『ん・・・・?』


「スレイプニール、ここをまっすぐ北東に連れて行ってくれ」


『あの・・・・貴女は三賢の魔法少女リリスですよね? リリスの魔法より素早く動ける自信はありませんが・・・』

「わかってるって」

 スレイプニールがリリスを警戒しているのが伝わってきた。


「俺たちデート中なんだよ」


『デート!? サマエル様が? 魔法少女戦争中に・・・ですか?』


「息抜きもたまには必要だからね。俺はいいけど、リリスに魔法を使わせないように行きたいんだ。乗せてもらえる?」


『も・・・もちろんでございます。よろこんで』

 スレイプニールが少し驚きながら快諾した。

 俺とリリスの背の高さにあわせて屈む。


「よっと・・・」

 軽く飛んでまたがった。


「さんきゅ。ほら、リリス。絶対に、魔法は使うなよ」

「え・・・あ・・うん」

 リリスの手を引っ張り上げて、俺の前に乗せる。

 素早くワンピースの裾を直していた。


「魔法を使わないってこんな感じなんだ。変な感じ」

「ちゃんと捕まって。スレイプニールの速度って早いから、振り落とされるからな」

「うん」

 リリスがこくりと頷いて、鬣を握り締めた。


『今回の魔法少女戦争は荒れてますね』

「電子世界だからな。なんでもありなんだろう」

 スレイプニールが空を駆けていく。


「速いね! スレイプニール」

『リリスには敵いませんよ』


「今は魔法禁止だから、スレイプニールに負けちゃうよ。私こんなに早く走れないもん」

 リリスが楽しそうに遠くを見つめていた。

 サファイアのような瞳がきらきら輝いている。

 




 カプリニクスのダンジョンがあった場所に、小さな街があった。

 大きな木を囲むようにして、建物が作られている。


「ありがとな。会えてよかったよ」

『こちらこそ。デートを楽しんでくださいね』

「あぁ」


 シュンッ


 魔法陣を閉じるとスレイプニールが消えていった。

 リリスが蒼いワンピースをなびかせて、こちらを振り返った。


「ねぇ、美味しそうな匂いがするよ。シナモンの効いた甘い香り・・・」

「美味しそうっていうか・・・カオスだな」

「確かに、カオス・・・・かもね」

 リリスが若干圧倒されていた。


 街では魔界の者たちが音楽を奏でて、歌ったり、踊ったり、魔法を空に打ち込んだりしている。

 喧嘩している怒号もい、肩組んで歌ってる奴らもいる。


 種族は様々だ。


 人間も多いが、ゴブリンの子供もいれば、ゴーレムや雪男、形の保てない黒い影のような奴もいる。 

 インターネットを使えるようになったばかりのコンテンツは、こうゆう感じだったと噂で聞いたことがあった。


「その魔法少女の子も、よくこんなところを勧めたな」


「でも、私はこうゆう街、好きだよ」

「デートって感じじゃないだろ」


「私、不死だから魔界に行ったことないから」

 ワンピースのリボンに触れながら言う。


「サマエルのいた世界、見てみたいの。魔界ってこんな感じなんだよね?」

「今の俺は如月カイトだからな」


「ふふ、ごめんごめん」


 リリスがふわっと浮くように走り出した。

 一瞬、魔法を使ったのかと思った。


「早く行こう! いろんなところ回りたいの」

「あぁ、急いでぶつからないようにな」

「うん」

 はしゃぐリリスに続いて、街の中に入っていった。

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