op11 リリスとデウスエクスマキナ
夜空には満天の星と、大きな月が浮かんでいた。
リリスがふわっと屋根に乗る。
『デウスエクスマキナ様』
「?」
AIルルがデウスエクスマキナの指を引っ張った。
「デウスエクスマキナ」
「リリス、貴女と会うのは500年ぶりね」
デウスエクスマキナが立ち上がって、リリスと向かい合う。
同じ顔、同じ身長、同じ服、同じ声だった。
「私の"成れ果て"・・・」
「そうだったね。機械仕掛けの神だけど、元はリリスの"成れ果て"」
「・・・・・」
リリスがデウスエクスマキナに手を伸ばすと、デウスエクスマキナがリリスの手を取って、自分の頬にあてた。
「ふふ、あの薔薇のところに行かなくてもいいの? サマエルが取り込まれてるんだよ」
「私があの黒い薔薇を斬ったら、"成れ果て"もろとも死んでしまうことくらいわかってるくせに」
「へぇ、意外と冷静」
「カイトを信じてるから」
リリスが言うとデウスエクスマキナがほほ笑んだ。
「マリアは?」
「マリアは私と一緒にいる。大好きなマリア、何度生まれ変っても魂は変わらない。私にとって大切な友人であり、愛する人」
「相変わらずだね。マリアを見つけたの?」
「本当は、わかってるくせに」
「・・・・・・・」
リリスと同じ口調で言う。
『どちらもデウスエクスマキナ様? リリス?』
AIルルが2人を交互に見て混乱していた。
「どうして、今回の魔法少女戦争の地を電子世界で行うようにしたの?」
「内緒」
「マリアのため?」
「内緒」
デウスエクスマキナが指を口に当てた。
リリスの瞳がサファイアのように輝く。
「マリアを連れていったでしょ?」
「もちろん。リリスといると、マリアはリリスの目の前で死ぬからね。安全なところに連れて行ったよ」
「・・・そう、私といると、呪いが発動しちゃうもんね。カイトもメイリアも私に隠そうとしてたけど、バレバレだよ」
「サマエルだって、リリスの恐ろしさ、わかってるはずなのにね」
「わかってるから、言わないのかな? カイトの考えてることは難しいの。私にも心を開いてくれない」
リリスが寂しそうに笑う。
雲が月明かりを遮った。
「私が何度もサマエルを愛するように」
「私は何度もマリアを愛する」
リリスとデウスエクスマキナが手を合わせる。
「やっぱり、私の”成れ果て”だね。愛する気持ちはわかるよ。でも、もう終わらせようよ」
「ううん、魔法少女戦争は終わらせない」
デウスエクスマキナがリリスから離れて、魔法陣を展開した。
「魔法少女戦争がある限り、何度でも生まれ変わったマリアに会うことができる。どのマリアに出会っても愛しく感じるの。ううん、生と死を繰り返すほどにマリアへの愛は深まっていく」
胸に手をあてながら言う。
「リリスが生まれ変わったサマエルを愛するように、私はマリアを愛するの。私たちは同じだから。この愛に終わりはないと思わない?」
「私はもう、こんなの苦しいのに・・・・」
「苦しみこそが、愛だよ」
デウスエクスマキナのサファイアのような瞳が曇る。
「デウスエクスマキナ」
「この愛はリリス(わたし)以外は、誰にも気づかれてはいけない。マリアは誰にも渡さない、誰にも傷つけさせない、永遠に私のもの」
『デウスエクスマキナ様』
AIルルがデウスエクスマキナの肩に乗る。
「デウスエクスマキナと喧嘩するつもりはない」
リリスがデウスエクスマキナに背を向けた。
「でも、今回魔法少女戦争の勝者になるのは私とカイトだから」
「じゃあね、リリス。また今度」
シュッ
「・・・・・・」
デウスエクスマキナとAIルルがが消えていく。
リリスが杖を出して、地上に視線を向ける。
黒い花が中庭を突き破って、外に出ていこうとしていた。




