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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第九章 心恋

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op10 処刑

 ヴェルネスがガラスの中にいる如月サクラを見上げていた。

 サクラの足からは黒い蔦が伸びて、床に突き刺さっている。


「ペルロ=ヴェルネス」

「貴女様が来ましたか」


「メシェトが来ると思った?」


「・・・そうですね。短い間でしたが、お仕えしていましたから。私の心臓を貫くなら、メシェト様かと」

 聖杯の聖霊ルピスが杖をヴェルネスに向けていた。


「せめて、娘が戻ってくるまで待っていただきたかったのですが、仕方ありませんね。アイリスはもう一人じゃないので、大丈夫でしょう」

「・・・・・・」

「残せるものは残せました」


 ヴェルネスが机の端小さく立てかけられた、アイリスとサクラの写真を見つめていた。


「司祭だった者が、"成れ果て"を放置し、魔法少女戦争に不浄をもたらした。禁忌魔法所有の罪にも該当する。元は貴方が仕組んだものではないのはわかっているけど、契約は契約・・・」


「『聖杯』の聖霊ルピス様、貴女様は愛をご存じですか?」


「え・・・・?」

「はははは、わかりませんか」

 ヴェルネスが笑いながらルピスの言葉を遮った。


「何がおかしいの?」


「私は、ずっとこの時を待っていたのですよ。黄金の薔薇が闇に染まる日を」


「?」

 ルピスが目つきを鋭くする。


「魔法少女、全員が"成れ果て"になってしまえばいい。そうすれば、この憎き魔法少女戦争も勝者なしで終わります。魔法少女の勝者が現れなければ、『ロンギヌスの槍』は形を保てない」

 ヴェルネスが両手を広げた。


「・・・だからって、魔法少女を"成れ果て"にしていくことは許されない」


「"成れ果て"にそんなに嫌悪を抱きますか? "成れ果て"は魔法少女の叫び。神への失望。行き場のない想いですよ?」


 どこからともなく、金切声が聞こえてくる。


 ヴェルネスの腹の中では、怒りがとぐろを巻いていた。


「・・・・・・・」

 ルピスが無視して詠唱を始める。


 ― XXXXXXXX XXXXXXX XXXXXX -


「私は、アイリスが"成れ果て"になりかけても、一秒も嫌いになったことはありません。どんな姿になっても、可愛い可愛い、何よりも大切な娘です」


「そう」


 ルピスがクリスタルのような剣を空中に浮かべた。

 刃先をまっすぐヴェルネスのほうへ向ける。


「でも、契約は契約だから、違反者である貴方を処刑する」


「はははは、魔法少女が死ぬことは受け入れても、"成れ果て"になることは許せないのですね。貴方たちにとって都合がいいほうを正義と捉える・・・・・」


 ザッ


「!!」

 ヴェルネスの呼吸が止まる。

 ルピスの剣がヴェルネスの胸を貫いていた。


「契約って言ったでしょ? 私も時間が無いから」


「・・・・・」

 ヴェルネスはふっと笑って、光の粒になって消えていった。



「・・・・あと、愛は知ってるよ。『聖杯』は全てを見てきた。全て知ってる・・・」

 ルピスが宙を舞う光の粒に、指先で触れながら言う。


「複雑なもの。呪いであり、祝福であり、魔法少女戦争の根源となるもの」



 タンッ


 ルピスと同じ顔をしたメシェトがふらっと、部屋に入ってくる。


「メシェト」

「ルピス、そろそろ出なければ。僕たちはここにいられない。『ロンギヌスの槍』にも、『聖杯』にも穢れをもたらしてしまう」


「如月サクラの"成れ果て"を見た?」

「見たよ。禁忌魔法だね・・・禁忌魔法を使用すること自体、神に背く行為、穢れは益々重いな」

 メシェトとが顔を上げる。

 ガラスの中にいるサクラは、まだ普通の人の形のままだ。


「サマエルはあの花から戻って来れるのかな?」


「さぁな。僕は正直、無理だと思うけど、デウスエクスマキナは戻ってくると言ってたよ」

 メシェトがルピスに手を差し伸べる。


「奴が言うなら戻って来れるんだろう」

「デウスエクスマキナに会ったの?」


「あぁ、わざわざここまで見学に来てたからね」

 ルピスがメシェトの手を取って、窓から外へ飛んでいく。


「デウスエクスマキナの歯車は順調に回ってるんだよね?」

「順調すぎるくらいだ。加速している。僕もそろそろ『ロンギヌスの槍』の準備をしなければいけない」


「今度こそ・・・・きっと運命は変わる。『聖杯』は信じてるよ。三賢とサマエルが奇跡を起こして、魔法少女戦争が終わるって」

 ルピスがメシェトの手を離す。


「信じてるから」


「・・・・・・・・・」


 メシェトが視線を逸らして、魔法陣を展開していた。


 サアアアァア


 風が吹くと同時に、2人が別々の場所に戻っていった。

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