↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第九章 心恋

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

166/206

135 黒い薔薇

「美憂、向こうに行ったら絶対に俺の言うことを・・・」

「もう、何度も聞いたってば」

「・・・・・・」

 美憂がツンとしていた。


「ね、シロナ」

『そうですね。でも、カイト様はシスコンなので仕方ありません』

「シロナ・・・・」


「やっぱり、シロナもそう思う? おにい、過保護すぎるんだよ。あと、シスコンって表に出さないでね。恥ずかしいから」

「・・・そこまでしつこくないだろ?」


「私が彼氏作っても口出さないで・・・」


「はぁ!? 誰だよ! 七陣魔導団ゲヘナの中にいるのか!?」


 美憂に詰め寄ると、呆れたような顔をした。


「彼氏作ったっていってないでしょ? シロナ、第三者の目から見て、おにい、どう思う?」

『カイト様、年頃の女の子に彼氏ができるのは普通です』


「って、まだ、早すぎるだろ。中学生だぞ」


『妹の恋愛に口出す兄は嫌われます。これは統計情報による結果となります』

「ほら、おにい、気を付けてね」


「っ・・・・・」


 シロナは淡々としていたが、明らかに不機嫌だった。

 美憂が勝ち誇った目でこちらを見てくる。


「好きな奴ができたのか・・・?」

「さぁ」

「と・・・とりあえず、できたら報告しろよ」


「なんで?」

「潰してやる」


 一瞬、七陣魔導団ゲヘナにいる男たちを思い浮かべていた。

 いや、相手が人間とは限らないか。

 魔界の者? 美憂には近づけていないはずだが・・・。


『カイト様、よろしいでしょうか?』


「ん? あ、あぁ」

『では、接続準備を進めますね。アイリス、ロックを解除し、暗号化したコードをこちらに送ってください』

『今、暗号化してるんだけど。かなり複雑に組んでるから遅くて・・・あ、70%までいったよ』

 シロナが正面のモニターにアイリスを映して、右のモニターにコードを映していた。 


「美憂、今回は逃げたくなったらちゃんと言ってくれ。危険な場所だからな」

「うん」


 美憂の魔法少女の服は、少し変わっていた。

 メイリアと同じように、背中に黄色のリボンをつけている。


 メイリア曰く、お守りみたいなものらしい。

 本当は、美憂が行くのを反対したいんだろうな。


『準備完了だよ』

 アイリスが言うと、地面に幾何学模様のような魔法陣が展開された。


『では、転移させます。カイト様、どうか気を付けてください』

「あぁ、ありがとう。シロナ」


 ぶわっ



「わっ・・・」

 魔法陣が光を放つ。

 美憂が服の裾を掴んだ。



 シュンッ



 重苦しい魔力を感じる。


「カイト!!」

「アイリス・・・」

 目を開けた瞬間、アイリスが抱きついてきた。


 ベッド2つ置けるくらいの広さの部屋に、多くの魔法陣が張られていた。

 でも、俺たちに害を成すものは無い。


 アイリスを守るための結界のようだ。

 部屋にはアイリス一人しかいなかった。


 モニターには、軽く伸びをするシロナが映っている。 


「待ってた・・・来てくれてありがとう」

「ねぇ、アイリスはメイリアの石化を解く方法を教えてくれたって聞いたんだけど・・・おにいとどうゆう関係?」

「あ・・・・」

 美憂がアイリスに詰め寄ると、アイリスがぱっと離れた。


「えっと、腐れ縁?」

「縁っていうか、ゲームのバグだっただろ。厄介だったんだよな、テストのエビデンス取るのに邪魔で」


「バグじゃないってば。遊びに行ってたんだもん」

 アイリスが水色の長い髪を後ろに流す。


「アイリス、穢れは祓えたのか?」

「・・・・・見ての通りだよ」


 アイリスの手を掴んで、指先を見る。

 穢れはかなり薄くなっていた。


「危ないけど、結界が間に合ったから。あと、前回の魔法少女戦争に敗れて、電子世界にずっといたから、耐性があるほうなんだと思う」

「なるほどな」


「サクラ・・・・なわけないよね。びっくりしちゃった」

「え・・・・」 

 アイリスが美憂を見つめる。


「貴女が如月美憂ね?」


「そ・・・・そうだけど・・・・」

「本当に、サクラにそっくりだね。カイトはお父さん似だったんだね」


「ぞくっとするようなこと、さらっと言うなよ」

 息をつく。


「お母さんのこと知ってるの?」

「うん。あ、でも、やっぱりお父さんにも似てるか」

 アイリスが美憂の頬を撫でながら言う。


「お父さんとお母さんのこと・・・・どうして?」

「だって、サクラは魔法少女戦争で共に戦った仲間だもん。懐かしい・・・」

 目を細めてほほ笑む。


「カイト、話してなかったのね。私のパパとカイトたちのお父さんは親友だったんだって」


「おにい、アイリスの言ってること、本当なの?」

「・・・まぁな。アイリスま前回の魔法少女戦争の敗者だ。アイリスは魔法少女戦争で負けた後、如月タツキが魂を電子世界に押し込んだんだろ?」

 アイリスが少し驚いたような顔をしてから、距離を取った。


「あれ? どうしてわかったの?」


「あいつの持ってたロストグリモワールに記載があった。禁忌の魔術だな」

「・・・・そっか」

 小さく頷く。


「でも、私、パパの前で成れ果てた魔女になりたくなかったから、自分からお願いしたの。パパはずっと、私が『黄金の薔薇団』にいたこと知らなかったんだけどね」


「お父さんが・・・?」


「そう、すごく感謝してるの。サクラもずっと友達でいてくれた。電子世界にいる私に、こっそり話しかけてくれてたんだよ。私、2人のこと、大好きだったよ。今も大好き」

 アイリスがほほ笑む。


 アイリスがパパと呼ぶのは、ペルロ=ヴェルネスという名前の者だ。

 『ロンギヌスの槍』を守る司祭になったらしいが・・・。

 

「・・・・お母さん、お父さん・・・」

 美憂がはっとして、目を擦っていた。


 キィアアアアアアアア


 ガタガタガタガタ


「!?」

 美憂がびくっとして杖を出す。


「”成れ果て”の気配だよね?」


「そう・・・気を付けて。特に美憂は魔法少女だから。カイトの後ろにいてね」


 アイリスが軽く飛んで、窓に張られた結界に手を触れる。

 窓が開いて外の光景が露になった。


 ザァアアア


 空気が張り詰めた。



「黒い・・・薔薇の花・・・・?」



 中庭らしき場所に、巨大な黒い花が咲いていた。


 地面には泉のような穢れが渦巻いている。


 イヤアアァアアアアア


「!?」

 

 花びらが動いて、黒い少女の体が現れた。


 天を仰いで何か言うと、そのまま花びらの中に消えていった。

 反対側でも少女の体が浮き上がっている。


「美憂、杖のクリスタルを変えろ。少しでも自分の魔力が揺らいだら言え」

「わかった」

 アイリスの傍に寄る。

 

「随分、不気味な"成れ果て"だな。エリンとはずいぶん違う。アイリスがここにいて何ともないのが奇跡みたいだ」

「あの花が咲いてから、状況が一変した。どんどん取り込んでいって・・・止められなかった。みんな、数日前までは普通の魔法少女だったんだよ」


 水色の髪を揺らして、こちらを向く。


「・・・これが罰なのかな・・・って。前回魔法少女で、負けたにも関わらず、"成れ果て"になりたくなくて電子世界を彷徨っていた罰・・・」

「罰なわけないだろ。"成れ果て"になることが間違ってるんだよ」

 

 『ロンギヌスの槍』を巡る魔法少女戦争の中で、戦闘を放棄して逃げ出す魔法少女を抑制するために作られたルールだ。

 神々は魔法少女戦争のルールを全て説明せずに、願いを叶える。


 疑いは"成れ果て"を生み出すきっかけになるからだ。


 魔法少女戦争はクソみたいなルールばかりだ。


「あの花はどんどん、魔法少女を呼び寄せてる。おそらく、もう少し魔法少女を取り込めば・・・・」

「アイリス、持っていかれそうなら殺す、でいいな?」


 低い声で言う。


「うん、そうしてほしくて、呼んだの。私が取り込まれれば、"成れ果て"は成長速度を確実に速めるから・・・」

 アイリスが結界を張って、窓を閉じた。


「・・・これが、魔法少女戦争だよね。経験したのに・・・苦しい思いたくさんしたのに、忘れちゃってた」


 瞬きをすると、アイリスの目から大粒の涙がこぼれた。

 部屋の外では魔法少女だった"成れ果て"の悲鳴のような声が響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。