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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第九章 心恋

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133 モブと主役

 魔法少女たちの主は、まばらに転移させられてきていた。

 特に、規則性は感じられない。


 ラインハルトが転移させられてから7時間後、2人が転移させられていた。


 主が戻ってくると、ほとんどの魔法少女たちはほっとしたような表情を浮かべていた。

 アクアとフィオーレとリルムでさえ、ラインハルトが戻って安心したらしい。


 ルナリアーナの主、来栖まりなも強制的にログインさせられた。

 魔法少女といる気はないようだ。

 ルナリアーナと一緒にいたくないと、別の部屋に閉じ籠っていた。


 研究室に向かっていると、ちょうど着いたばかりできょきょろしている剣士と目が合った。

 ミモザという少女の主だった。


「ん、アルバスも戻ってたのか」

「僕のこと覚えてたんですね・・・」

 17歳くらいの青年で、気の抜けた声で言う。


「そりゃ、把握してるだろ。七陣魔導団ゲヘナの仲間なんだから」

「仲間・・・ですか。僕は元々陸軍第一部隊に所属していて、何もしないのに残ってしまったんですよ」

 自虐的に笑った。


「死んでいく仲間をたくさん見ました。でも、ミモザが僕を守ったんです。本当であれば、僕がミモザを守らなきゃいけなかったのに」

「・・・・・・」

「力のない僕が、生き残って、戻ってきてしまった」

 言いながら微かに声が震えているのがわかった。


「ゲームなら、僕は完全にモブキャラですよ。魔法少女戦争が始まって、ミモザと剣技を磨いていたときは何者かになれるかと、淡い期待を持ってしまいましたが・・・」

 俯いて息をつく。


「特別な能力開花もなく、逃げてばかり。ミモザに頼りっきりで」

「逃げ切るのも才能だけどな」


「あはは・・・ミモザもモブが主じゃなきゃ、七陣魔導団ゲヘナで、7人の魔法少女の一人になれてたんじゃないかって・・・。あ、いえ、カイト様のことは、尊敬してます。魔法少女たちをここまで導いた英雄であり、このゲームの主役ですからね」

「・・・・・」

「すごいですよ、本当・・・」

 水色のしなやかな髪をかき上げて、壁に寄りかかった。

 

「モブキャラか・・・」

「はい。僕はモブとしても微妙かもしれません。主役にはなれないって、初めからわかってるんです。どうあがいて、才能には、敵いませんから」

 背筋をピンと伸ばしてから、頭を下げる。


「あ、無駄話で時間を取らせてしまい、申し訳ございません。では、失礼・・・」


「英雄か・・・・」

 乾いた笑みが漏れる。


「アルバスがモブなら、俺は主役じゃない。悪役だ」


「え?」

「主役はどこにいるんだろうな。ありがとう、面白い話が聞けたよ」


「あ・・・・」

 ポケットに手を突っ込んで、アルバスの横を通り過ぎて行った。





 研究室に鍵をかける。

 シロナがこちらを振り返った。


『カイト様、お帰りなさいませ』

 モニターが4つ開いてあり、1つはロック解除に使われている。


「魔法少女の居場所も、地図も全て書き換えられたのか」

『そうですね。カイト様がいなくなり、魔法少女のみんなが魔法少女アカデミアに飛ばされたときに、強制ロックがかけられました。どの解除キーを生成しても解けません』


「だろうな」

 息をつく。


『デウスエクスマキナ・・・という神はどんな神なのでしょうね。ネットの情報には機械仕掛けの神とありましたが、すごい知識量です』

 シロナが胸に手をあてる。


『・・・魔法少女アカデミアに飛ばされたとき、みんないなくなったのですが、私だけここに残っていました。追い出されなかったのは、デウスエクスマキナが私をAIだと判断したからですね』


「さぁ、あいつの選別は適当だろ」

『はい・・・』

 シロナの隣に座る。


『私は魔法少女にはなれないのですね。わかっていましたが・・・・レベッカも魔法少女アカデミアに行ってしまい、少し・・・そうですね。これが寂しいという感情なのでしょうか』

「シロナも正式に契約すれば、魔法少女になれるよ」


 シロナの頭を撫でる。


「魔法少女になりたいか?」

『カイト様はどうしてほしいでしょうか?』


「本音を言えば・・・悪い、シロナには本物の魔法少女になってほしくない」

『それは・・・どうしてでしょうか? 人間になっても、私の処理能力は思いますよ? レベッカがそうですから』


「違うよ・・・魔法少女は、残酷な運命を持つんだ。選択できるなら、誰にも魔法少女になってほしくない」


『・・・・・?』

 シロナが首をかしげていた。

 少しリリスに似ている。


『・・・承知しました。カイト様が言うのなら正式に魔法少女にならないほうがいい、と判断しました』

「まぁ、あまり、機械的になるなよ。希望くらいは言ってくれ。人間の感情をそぎ落として創った覚えはないからな」


『もしかして、口説いていますか?』

「飛躍しすぎだ」

 笑いながら、椅子に肘をついた。


『冗談ですよ』

 シロナが力を抜いて、笑みを浮かべた。


『ご報告です。アイリスへの接続が可能となりました』

「!?」

『正確には向こうからのアクセスが頻繁に来ておりました。カイト様と話がしたいとのことです。繋いでもいいですか?』


「いいよ。頼む」

 

 シロナの指が動く。

 正面の画面を大きくして、コードをいくつか打ってロックを解除していた。


「アイリス」

 画面に水色の長い髪をふわっとさせたアイリスが現れる。

 ゆっくりと目を開けた。


『カイト!』

 切羽詰まったような表情で、画面に張り付く。


「珍しいな。そっちから連絡してくるなって言ったのに」

『お願い、助けて!!!』


「ん?」


『ま・・・魔法少女アカデミアで魔法少女たちが集められたときに・・・魔女になった子たちがいたのは知ってる? カイトたちは”成れ果て”って呼んでるんだよね?』

 目を潤ませながら言う。


「知ってる。落ち着いて話せって。俺たちの仲間も、1人穢れを祓えなかった魔法少女がいたからな・・・・」


『パパが『黄金の夜明け団』に魔女を集めてるの!!』


「は・・・・?」


 背筋がすっと冷たくなった。

 シロナも動きを止めて、アイリスを見上げる。


『魔法少女アカデミアで穢れを纏った魔法少女を何人も連れてきた。彼女たちこそ、世界を変える存在だって・・・』

 声を絞り出していた。


「そんなことしたら『黄金の夜明け団』の魔法少女たちは・・・」

『みんな自我を失いつつある。”成れ果て”になった魔法少女もいる。でも、私、魔女になりたくない。誰かを穢す存在になりたくないよ・・・』


「!?」


『パパがどうして変わってしまったのかわからないの・・・こんな・・・魔法少女にこんなことするパパじゃなかったのに・・・』


 しゃくりを上げて泣き始めた。


「アイリス、鍵を出せ」


『はい・・・カイト・・・私、壊れかけてる?』

 震える手で鍵を見せてくる。


 魔法石はオパールのような輝きを持っていたが、今にもヒビが入りそうだった。

 放っておくと、アイリスは穢れを纏うことになるだろう。


「まだ大丈夫だろうが、時間の問題だな。そこから抜け出せるか?」

『できない・・・パパを・・・見捨てられないよ・・・・』

 目を擦りながら言う。


「じゃあ、俺がそっちに行・・・」


『カイト様、駄目です』

 シロナが俺の言葉を遮って、声を上げる。


『カイト様がいなくなったら七陣魔導団ゲヘナはどうなるんですか?』 


「『黄金の夜明け団』は俺の父親、如月タツキが核となっていた組織だ。ろくな組織じゃないだろう。早めに潰しておくのが得策だ」

『いえ、許可できません。私はこれ以上話を進めるなら、アイリスとの接続も切ります』


『嫌・・・・お願い・・・』


「シロナ・・・・」

 シロナの肩に手を置く。


『カイト様は優しいから、困ってる人を見捨てられなくて、助けようとするでしょう。でも・・・』


「いや、別に俺は情で動いていないよ。もし『黄金の夜明け団』の魔法少女たちが全員”成れ果て”になれば、数秒接触しただけで、多くの魔法少女たちが戦うことなく”成れ果て”になるんだ」


『・・・戦うことなくって・・・じゃあ、みんなが魔法少女になった意味は・・・』

「無くなる。”成れ果て”になれば、命も願いも、全て無駄になる」


『!!』


「増えれば増えるだけ、”成れ果て”になる確率は広まる。速度は時間が経つほど、速くなっていくだろう。最悪、今いる魔法少女が、戦うことなく、全員”成れ果て”になる可能性だってあるんだ」


『・・・・・・』

 シロナがキーボードに手を置いたまま固まる。

 アイリスが涙をぼろぼろ流していた。


 『黄金の夜明け団』が何をしようとしているのかはわからない。


 でも、奴らの目的を止めなければいけないことだけは確かだった。

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