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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
②南都攻防戦 編

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パイセンの判断

 俺はコズールイとパイセンを追って、城の窓から華々しく飛び出した。

 しかし、ざっと周囲を見渡したものの両名の姿はどこにも見えない。


「あれ? もうどこかに飛んで行っちゃったのか?」


 マズい。

 俺に任せろ的な雰囲気を出して颯爽と飛び出したのに、二人を見つけられませんでしたなんてこと、言えるはずがない。

 きっとホニーやアイシューはあきれるだろうな、なんてことを考えていると——


 何やらうっすらと、人の声が頭上から聞こえてきたので見上げてみた。


 すると、もうすぐ頭に雲が届くのではないかと思えるほど、かなりの高所で二人が言い争っている様子が見えた。


 俺は急いで、二人がいる上空目指して舞い上がる。

 あっという間に、雲に手が届きそうな高さにまで到達した。


 パイセンとコズールイは、5mほど距離を挟んで睨み合っている。



 天界の規則上、女神の使徒が下界の住人に攻撃することは許されない。

 しかし、パイセンならたとえ規則を破ってでも、必要とあらばコズールイを攻撃しかねないだろう。


 ここは絶対、パイセンに攻撃をさせてはいけない。

 俺は急いでパイセンに向け言葉を放った。


「パイセン、俺がやる! お前は下がれ!!!」


 しかし、パイセンは俺の言葉に反応を示さない。

 コズールイに向けた視線を外そうとしないのだ。

 一瞬の隙をついて、また逃げられることを恐れているのだろうか。


 俺は宙に浮かぶパイセンの1mほど前に、自分の体を滑り込ませた。そして——


「約束は守れよ。どうしても戦闘を避けることが出来なかった場合、先ずは俺が戦うって言っただろ?」


 パイセンは覚えていないかも知れない。

 だが、『女神の部屋』で初めてパイセンと出会った時、俺は言ったんだ。


 戦わずに平和な世界を築くという女神様のご意志には心から賛同する。だが、どうしても戦闘が避けられない事態が生じたならば、その時は俺が真っ先に戦うと。



「チッ……」

 俺の顔を憎々しげに睨みながら、コズールイが軽く舌打ちする。


「まったく、女神の使徒を背にして何をカッコつけているんだか。キサマはいくら攻撃を受けても、後ろにいるその女にヒールをかけてもらえるでしょう? そういう台詞は一対一で戦う時に言うものです」


「べ、べつにカッコいい台詞なんか、言ったつもりなんて——」


「カイセイ氏、落ち着いて。アイツの挑発に乗っちゃ、ダメっす」

 パイセンが小声でつぶやいた。


 危ない。思わず『一対一で戦ってやるよ!』と、言いかけてしまった。


「アイツは絶対に逃げるつもりっスから、アイツが動いた瞬間を狙って——」


「黙れ、この忌々しき者どもめ!!!」

 コズールイが怒りに任せて大声で叫んだため、パイセンの言葉が途中でかき消されてしまった。


「欲にまみれたけがらわしき異邦人め! キサマなど、所詮この世界の部外者ではないか! キサマはどれだけこの世界の安寧をかき乱せば気が済むのですか!」


 どうやら今度はコズールイの怒りの矛先が、俺へと向けられたようだ。

 別にそれは構わないんだけど……

 なんだかコズールイのヤツ、激オコじゃないか。


 これはひょっとして、ワザと感情的になったフリをして、俺から平常心を奪う作戦なのか?

 よくわからないが、ここは冷静な対応が必要な気がする。


 そう言う訳で、俺は努めて冷静に口を開くことにした。

「何がこの世界の安寧だよ。人間族からマナを奪おうとしてたヤツがよく言うぜ。お前が願っているのは、自分と自分の仲間だけの安寧じゃネエか」


 俺の言葉を聞いたコズールイが、大きくため息をついた。

「まったく、私にはキサマという人間がサッパリ理解できませんね。部下の報告では、女神の使徒やパーティメンバーに対しては、どうでもいいことですぐにキレるという話だったのですが……」


 言っておくが、ロリコン疑惑をかけられるのは、どうでもいいことじゃないからな?

 人間誰しも、ロリコンって言われた時は激怒すると思うぞ?


「まったく…… キサマさえいなければ、こんなことにはならなかったものを」

 なにやら、コズールイが自分勝手なことを言い出した。


「ちょっと待てよ。それじゃあ、まるで俺が全部悪いみたいじゃねえか」


「ええ、その通りですが何か? キサマがこれほど暴れ回らなければ、私もこんな危険な行動を起こさなくてもよかったんですよ。キサマがすべていけないのです。いいですか? キサマは自滅の道を勝手に歩んでいたナカノ国をアッサリと滅ぼし自ら王位についたかと思えば、瞬く間にナンバーズ諸国とキタノ国を手懐けた。更にはニシノ国とヒガシノ国の王位をキサマの側近に簒奪させ、挙げ句の果てにはミナミノ国の王まで屈服させる始末。人間族が結束すれば、他の種族の脅威になるということが、どうしてわからないのですか?」


 あれ?

 もしかして俺がやりすぎたせいで、こいつの不安を煽ってしまったということなのか?


 いや待て、それはおかしいぞ。


「いい加減なこと言うなよ! 俺が国王になる前から、お前は悪魔教徒として人間族のマナを奪おうとしてたじゃネエか!」


「フフ…… 私はもっとスマートに、じっくりと人間族を滅ぼそうと考えていたのですよ」


「そんなのお前の自己都合だろ? 言っておくが、自己都合で退職した場合、失業保険は3ヶ月待機なんだからな!」


「何を言っているのですか?」

「なに言ってんスか?」

 自分でもなに言ってるか、ワカんなくなってきたよ……


「カイセイ氏、もういいよ——」

 パイセンが熱のこもった口調で俺に語りかける。

 ただし、コズールイに聞かれない程度の小声で話すことは忘れていない。


「——これ以上の話し合いは無意味だ。アンタが魔法を放った瞬間、アタシがコズールイに突進するから——」


「そうはさせませんよ!!!」


 チッ、コズールイのヤツ、どんだけ耳が良いんだよ。

 森林族はみんな、地獄耳なのか?


「遅かれ早かれ、人間族は滅びる運命なのです!!!」

 コズールイはそう叫びながら、自分の胸の前で両腕を交差させた。


 マズい、これは攻撃の準備動作だ。

 俺も魔法で反撃せねば!


 と思った次の瞬間——


 コズールイはあっという間に両手を広げたかと思うと、直径1m程ある大きな光る玉を10個ほど発現させ、なんとそれを——


 眼下に広がる街を目掛けて、撃ち降ろしやがった!



 ……あっという間の出来事だった。


 俺とパイセンが光る球に目を奪われた刹那、コズールイは急上昇を始め、あっという間に雲を突き抜けこの場から離脱してしまった。


 一瞬、コズールイの後を追おうとしたパイセンであったが、

「カイセイ氏、このままじゃ街が危ない!」

 そう叫ぶと、光る球目掛けて急速に下降を始めた。


「そ、そうか、あの球をなんとかしないといけないんだな」

 我に返った俺も、パイセン同様地上目掛けて急下降した。

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