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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
②南都攻防戦 編

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カッコいいところ

 コズールイの魔法攻撃は、女神様が作り出した魔法防壁によって阻まれた。


 だが、見た目だけでいうと、コイツの魔法はとてつもなく強力であるように思われた。

 なんか白っぽい光線がゴワーッと押し寄せてきたのだ。


 こういうのを、なんと表現すれば……


「なんだか、ヤ◯トのハドウホ◯みたいだったワ……」


 ナイスだ、ホニー! そう、それだよ。まるでハド◯ホウみたいに…… って、ホニーは宇宙戦艦ヤマ◯まで知ってるのか、という話は置いといて。


 おそらく、コズールイが今使った魔法は、森林族特有の魔法なのだろう。

 俺は前回のターンで魔人族とは嫌というほど戦ってきたので、ヤツらのことならたいがいは理解していると言っていい。

 しかし魔人族の連中がこんな魔法を使った場面を、俺は一度も見たことがないのだ。



 これはコズールイという男のことをもっと知るべきだ。

 ちょっとビビりながらそう思った俺は、ユニークスキル『人物鑑定』を使って、コズールイの能力を把握することにした。


 人物鑑定スキルを使ってみた結果は次の通り。


 MP: 不明

 俺たち人間族が使う魔法と森林族が使う魔法では、根本的な原理原則が違うのだろうか。俺の人物鑑定スキルではコイツの魔力の総量を測ることは出来ないようだ。


 レベルについても同様に判別不能であった。

 俺たち人間族の強さの尺度とは異なる基準があるのだろう。


 しかし、HPは確認できた。HPの基準は両種族とも同じであるらしい。

 でも…… コイツのHP、俺の約1.5倍もあるんですけど……



 俺は視線をコズールイに戻す。

 コズールイは魔法を防がれたというのに、余裕の表情を浮かべていた。


「どうしました? 反撃してこないのですか、使徒殿? いや、巫女殿だったかな?」

 女神様を見つめニヤリと笑うコズールイ。


 差し出がましいことを言うようで申し訳ないんだけど……

 テラ様は女神であって、使徒でも巫女でもないんだけどな。

 本当にコズールイは、コテラが実は女神テラ様だってことに気づいてないのか?

 ここにいる女神様とはあまり関わりのない人間族の多くのメンバーでさえ、女神様の小芝居に付き合って差し上げているというのに。

 実は悪魔教徒たちの情報網って、案外ザルだったりするのかも。



「おとなしく投降して下さい。無駄な争いをしたくはありません」

 女神様はコズールイを諭すように言葉を紡ぐ。しかし——


「天界の手の者は、人界の者に直接的な危害を加えてはいけないという決まりがあると、以前女神の使徒ヒビキが言っていましたが…… やはりあの話は本当だったようですね」


「アイツ、余計なことを言いやがって」

 パイセンがボソりとつぶやいた。


『……申し訳ない』

 天界から、ヒビキの声が聞こえた気がした。


「ふふ、そう言えば、あの愚かな使徒ヒビキでさえ、私に直接カミナリを落とすことは出来ませんでしたからね。まあ、私の近くにカミナリを落として威圧しようとはしましたが」


 あれ? 以前ジョーキューシャーの街で、女神様ってば俺の頭にカミナリを落とさなかったっけ?

 まったく女神様ったら、本当にオチャメさんなんだから。

 あの日のことは、俺の胸にそっとしまっておいてあげよう。

 大天界にいるという大女神様に知られたら、大変なことになりそうだからな。



「それならジブンの攻撃をくらってみるっスか?」

 今度はパイセンがコズールイに向けて挑発の言葉を投げかけた。


「あなたが着ている服から察するに、あなたも女神の使徒か巫女なのでしょ? それならあなただって私に攻撃できないはずです。ふふ…… あなたも愚かなる使徒ヒビキと同様、お芝居が下手クソですね」


「ヒビキと一緒クタにすんじゃネエよ! ジブンはアイツほど、壊滅的に芝居が下手クソじゃネエよ! ……っス!」


『ヒドイ……』

 またヒビキの声が……


 でもちょっと待て。以前、確かパイセンは自分が戦闘に参加して、この世界の禁忌を犯すことになったとしても、今度こそこの世界の平和を守ると言っていた。


 パイセンのヤツ、本当に攻撃するつもりなのか?


 いや、それはダメだ。

 俺はパイセンの背中越しに、彼女の肩をつかんだ。


「おい、パイセン。お前の気持ちを否定するつもりはないけど、今はまだその時じゃないだろ? この先どんなことが起こるかわからないんだ。今は自重すべきだよ」


「…………そうっスね。ガラにもなく、ちょっとアツくなっちまったス。それじゃあ、ここはカイセイ氏にお任せするっスよ」


「え? 俺がやるの?」


「……チッ。一瞬でもアンタのことをカッコいいと思った自分を、ブン殴ってやりたいっスよ」


 ちょっと待ってくれよ。

 アイツのHPって、俺の1.5倍もあるんだよ?

 それなら攻撃力だって、俺の1.5倍あるんじゃないの?


 しかし——


「バ、バカ、誰がやらないって言ったんだよ! 今のはちょっと急だったからほんの少しだけ驚いただけだ。あ、ああ、やってやるよ、やってやるとも!」

 ああもう、ここまできたら引き下がることなんて、出来ないじゃないか!


 それに俺の後ろには、アイシューやホニーもいるんだ。

 ここは一丁、カッコいいところをあの二人に見せてやろう!


「おい、そこの悪魔教徒! ここからは俺が相手だ!」

 俺は声高らかに叫んだ。しかし、コズールイは——


「……女神の使徒たちの後ろに隠れたまま、そんなカッコいい台詞を言われましても…… そういう台詞は、魔法防壁を出てから言って欲しいのですが。なんですか、あなた。女神の使徒どもに守ってもらう気満々じゃないですか」


 だって仕方ないじゃないか。コイツの攻撃力がどれぐらいかわからないんだから……


「……魔法防壁の中から攻撃しても、壁に阻まれてコズールイの所まで魔法が届かないっスよ」

 あきれ顔でパイセンが、そうつぶやいた。


 なんだよ、早く教えておいてくれよ……



「大変ヨ! なんだかカイセイの顔が真っ赤だワ! アンタ、ひょっとして体調が悪いの?」


「もうホニーったら、余計なこと言わないの。カイセイさんは単に恥ずかがってるだけだから」


 ホニーとアイシューに、全然カッコいいところを見せられなかった……



 俺の顔を真っ赤にさせたコズールイに憤ったのか、女神様が再び口を開いた。

「カイセイさんに精神攻撃を加えるなんて…… あなたはなんてヒドい人なんでしょう!」


「キサマにだけは言われたくない!」

 まあ、そりゃ、そうだろうけど……


「だいたい、あなたは——」

「なんだと! キサマこそ——」

 再び女神様とコズールイが口喧嘩、いや、舌戦を始めた隙に、俺は後ろの方からコソッと魔法防壁の外に出た。


 そしてササっと壁の側面に回り込み、3種混合超級魔法を放ってみることにした。


 今回のターンで出会ったレベル85のドラゴンでさえ、俺が放った超級魔法一撃では倒せなかった。

 そういう訳だから、コズールイが俺の超級魔法をくらっても、一撃で即死ということはないだろう。

 流石に命を奪ってしまっては、女神様に合わせる顔が無くなってしまうからな。


「俺の渾身の魔法をくらいやがれ!!!」

 コズールイに向け魔法を放つと同時にカッコいい台詞を残し、俺はまたヒョイッと魔法防壁の中に戻る。


「ぐぇぇぇーーーーー!!! キ、キサマはいきなり、何をしやがるんですか!?」


 あっ、結構効いたみたいだ。

 スキル『人物鑑定』を見ると、コズールイのHPが1割ぐらい削られている。


 なんだか俺、結構活躍したんじゃないか?

 きっとホニーやアイシューも、さぞ俺のことを見直しただろうと思い二人を見てみると——


「……アンタ、なんで超級魔法を放って1秒もしないうちに、魔法防壁の中に戻って来るのヨ」


「コソコソ立ち回るところが、カイセイさんらしいと言えばらしいんだけど……」


 全然大切なことではないが、もう一度言おう。

 ホニーとアイシューに、カッコいいところを全然見せられなかった……

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