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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
②南都攻防戦 編

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209/219

忘却

 今話から、カイセイ視点に戻ります


 ———————————————————————


 ここは南都の街を眼下に見下ろす大空の上。

 ダレモオラン草原から風魔法を使って空中を飛行し、やっとここまで辿り着いた。


「見えた! あれが王宮っス!」

 俺たちの先頭を行くパイセンが雄叫びを上げる。


 パイセンの後ろには俺が続き、俺の右後方にはヒガシノ国の新国王にして日本文化大好き少女ホホニナ=ミダ・ヒトスジー、通称ホニーとその従者シツジデス=チャン・セバスーさんとホノーノさんの姿がある。


 元盗賊のセバスーさんと長年ヒトスジー家に仕えてきたホノーノさんは、若かりし頃いろいろとしのぎを削り合った仲だが、現在は仲良く…… は、なってないか。

 とにかく、ホニーを支えるという一点においては強く結びついている…… と思う。



 左後方にはニシノ国の新国王アイシューが続く。

 アイシューは最近、平民から貴族になったため、アイアツマ=リシ・アイシューという新しい氏名を名乗るようになった。ちなみに新しい性を考えたのは俺だったりする。


 アイシューの左右には言葉責め大好き変態元教皇と、日本から来た転生者である道徳の化身、委員長——本名はキララ——が仲良く…… ということもないが、まあ、喧嘩せずに付き従っている。



 ホニー、アイシューを後方から追っているのがキタノ国の新国王シーナことココロヤサシーナ=ケド・エラインデスと、皇太弟シオスことココロヤサシオス=デモ・エラインデスのきょうだい。

 彼女らの横には近衛騎士団長ブブさんことブブズケ=デモ・ドウドス氏が明らかにビビった様子で飛翔を続けている。


 キタノ国の集団からやや遅れた位置から追従するのは、ミナミノ国のシンジテオレ=ニマ・カーセロ王とその側近たち。初めて空を飛ぶというのに、みんな全く怯えた様子が見られない。流石は武闘派集団ミナミノ国軍だ。


 その後ろに続くのは各国の家臣たち30人ほど。

 各国の王の近くにいた人々を、パイセンが適当に選んで連れてきたのだ。


 そして集団の最後尾で、ガヤガヤと賑やかに宙を舞っているのが参ノ国の姉天然ことシンジラレネーゼ=ドゥ・テンネンと、妹天然ことキサイナレード=ドゥ・テンネン、通称レネーゼとナレードだ。

 彼女たちを取り巻くおバカ家臣団が、なにやら大声で話をしている。

「姫様、今がチャンスですぞ! 早くインチキ王の側へ行き一気に押し倒して——」

 ……聞かなかったことにしよう。

 まったく、空中でどうやって押し倒すんだか。



 ♢♢♢♢♢♢



 パイセンを先頭に、俺たちは一斉に王宮の窓から室内に飛び込んだ。

 窓ガラスが激しく割れるが、誰一人として臆する者はいない。



 王宮に突入して一番最初に俺の目に飛び込んできたのは、女神様の姿であった。

 いつの間にかダレモオラン草原からいなくなったと思っていたら、ひと足先に南都へ来てたんだな。

 責任感が強いのか、それとも単にセッカチなだけなのか……



 一旦、女神様の顔から視線を外し、改めて周囲の様子を観察してみる。

 この部屋には女神様以外にも、4人の人物がいたようだ。


 あっ、あそこにいるのはコウケーツ卿じゃないか!


 北都での無血開城に尽力したコウケーツ卿は、『どのような愚王であっても、最後までナカノ国王に従うのが、我が家に生まれた者の使命』と言い残し、南に向けて旅立ったんだけど……

 そうか、ここ南都にいたんだな。


 その隣には、ちょっと老けた感じのコウケーツ卿とよく似た人がいる。

 たぶん、コウケーツ卿のお兄さんなのだろう。


 その二人の背後に隠れるように、ちょっと小太りのニーチャンがオロオロしながら俺たちを見つめている。

 コイツがナカノ国王ってことでいいんだよな?


 そして黒いフード…… は、被っていないが、とにかく黒い服を着た男が一人。

 なんだか青白い顔をしている。


 体調が悪いのか?

 いや、そんな訳ないよな。

 黒いフードを被った男は森林族の可能性があると、確かパイセンが言っていた。

 じゃあ色白なのは、きっと種族的な特徴なんだろう。

 俺、前回のターンも含めて、森林族を見るのは初めてだから、よくわからないんだよな。


 俺、森林族を見るのは初めてのはずなんだけど……

 なぜか、この男の顔に見覚えがあるような。


 顔色はともかく、特にこの瞳に見覚えがあるのだ。

 この、感情のこもっていないような冷たい切長の目は——


「あの、ひょっとして…… アンタ、魔人族四天王の一人だったりしないか?」

 俺の口から、自然と疑問の言葉が滑り出た。

 そう、前回のターンで出会った魔人族の男によく似ているような気がするのだ。


「私がどこの誰であろうと、あなたには関わりのないことだ」


 ……なんだよコイツ。エラく反抗的な態度じゃネエか。


 パイセンや女神様、それからアイシューやホニーを含めたここに集う面々は、緊迫した雰囲気の中、俺を無言で見つめている。


 そりゃそうだろう。なんたって、俺の口から突然『魔人族四天王』なんていう、突拍子のない言葉が出てきたのだから。


 多くの者が、俺の口から出るであろう次の言葉を、身じろぎもせず待っている。

 そう、一部の例外を除いて。

 その例外たちの言葉に耳を傾けてみると——


「早く寝室を探し出せ! 一刻も早くこの場で既成事実を作ってしまうのだ! お二人がコトに及んだ際、我々が部屋に押し掛けて証拠を押さえてしまおうではないか!」

「でも、部屋に鍵がかかっていたらどうする?」

「では、事前に鍵を壊しておくというのはどうだ?」

「なんと! 貴公、もしかして天才か!?」


「参ノ国のバカ家臣たち、さっきからうるさいんだよ! シリアスな展開が台無しじゃないか! ちょっとぐらい空気読めよ!」

 思わず叫んでしまった俺……


「……まったく。私は忙しいので、あなたたちのようなバカをかまっている暇はありません」

 ウンザリした様子の青白い顔をした男が、言葉を吐き捨てた。


 ここに集う参ノ国以外のメンバーは、自分もバカな仲間だと思われているようで、とても迷惑そうな顔をしている。


「それではこれで失礼します」

 そう言って、壊れた窓の方向に歩き出そうとした男の目の前に——


 ——ドッカーーーン!!!


 天から特大のカミナリが降ってきた!


 あーあ、天井に大きな穴が空いちゃった…… って、それはどうでもいいか。

 あれ?天井をよく見てみると、既に多くの穴が空いているんだけど。

 既に何発かカミナリが落とされた後なのか?


『逃げんじゃねえよ、コズールイ!』

 ん? 大空から天界にいるヒビキの声が聞こえてきたんだけど……


「キサマ、いったい何のマネだ」

 コズールイと呼ばれた男が、憎々しげな表情で天井を見つめる。


『岸さんが何でコイツのことを知ってるのかわかんないけど、コイツはコズールイと言って、魔人族と森林族のハイブリッド種族の男なんだ。それから、さっきコイツは『自分は魔人族四天王の一人であり、森林族の種族会議のメンバーだ』とも言ってたよ』


 なるほど。今までこの場で交わされていた会話を、ヒビキは天界から聞いていたのか。


「黙れ、この裏切り者! 誰がキサマの話など——」


 コズールイと呼ばれた男の話をさえぎり、ヒビキは更に続ける。

『それからコイツは、悪魔教徒の首魁でもあるみたいだね。ちなみに、黒いフードはさっき自分で引きちぎってたよ』


「そんな証拠、いったいどこに——」


『部屋の中に、壊れた魔道具があるだろ? さっきウチが天界からカミナリを落として壊したんだよ。コイツはその魔道具を使って、南都の人たちからマナを奪い取ろうとしてたのさ。だからウチが壊してやったってワケ。残念だったなコズールイ、クックックッ』


 ヒビキってば、やってることは良いことなのに、なぜか下っ端の小悪党のような印象を受けてしまう。


「マナを奪い取る魔道具などとデタラメを言いおって。そのような証拠がいったいどこに——」


 今度はパイセンがコズールイの言葉をさえぎる。


「ここにある魔道具の残骸は、以前旧ナンバーズ諸国の鍛治師から押収した物と同じっス。マナを奪う魔道具で間違いないっスね。それにしても、悪魔教徒の首魁がハイブリッド種族のコズールイだったとは。コイツの悪名は、昔、ヒビキから聞いてたのに…… 迂闊うかつでしたね」


 そう言って、パイセンは同意を求めるような視線を女神テラ様に送る。

 しかし、肝心のテラ様はというと——


「え? コズールイ? えっと…… そ、そうですね、確かに迂闊でしたね。ええ、そりゃもう、迂闊でしたとも。私としたことが、なんと迂闊だったのでしょう!」


 …………あなた、絶対コズールイのこと忘れてたでしょ? と言いたいところだが、言ってしまうと女神様の思惑通りになりそうで、なんだか釈然としない。



 そんなことより、俺としてはコイツが魔人族四天王の一人だということが気になって仕方ないんだけど……

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