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第33話 文化祭の始まり

「たこ焼きいかがですかー!」

「わたあめ安いよー!!」

「ジュースいかがですかー!」


とうとう文化祭の日だ。テキ屋でも来てるのか?と言わんばかりに大量の出店が並び、クラスの生徒達が看板を持って呼び込みをする。学生達がどんどんと並び、買い、食べる。現実だと保健所に届け出出さなきゃあかんやつや!

だけどこの光景、アニメやラノベ見てて憧れてたんだよ。いやーすげえな!


「花はいかがですかー!」

「パンジーはどうですかー!」


俺と中村で必死に呼び込みをする。早坂さん山口さん、清水先輩は会計をする。

変に有名人になったのならもう開き直る!俺が額に捻り鉢巻を巻いてノート丸めて台を叩く姿が爆笑の渦を叩き出す。


「いい台座じゃん!これもいい?」

「セットで買うとお得っすよ!」

「買うよー!」


3年生の先輩が購入する。結構な売れ行きだ。溶接部の部員達も台座以外に製作した物を一緒に売り、結構な稼ぎになる。

園芸部と溶接部、本来関わることのない部活が合同で販売している光景は珍しいのだろう。意外な集客効果があり、瀬戸口先輩が驚いている。


「お!そこのカップル!マリーゴールドなんてどうでしょう、花言葉は変わらぬ愛ですからお似合いですよ!」

「何を言ってんだ!?お、俺たちは…!」

「は、恥ずかしいこと言わないでよ!?だけど買おうかな?」

「何言ってんの!?」

「相変わらずバカな事言ってるわね。」

(…なんでそんなピンポイントの言葉を知ってるんですか…)


俺の呼び込みに部員達が笑うが気にしない!売れれば良いのだ!

早坂さんは内心つっこんでいたが。変わらぬ愛だから良いのだ!可憐な愛情もあるし!


「売れれば良いのだ!売れれば良いのだ!商売繁盛商売繁盛!」


わざわざ商売繁盛と達筆に書かれた看板まで用意したのだ!(書いてくれたのは早坂さん。)

平本先輩に引っ叩かれたけどな!笑ってるけど。


前から園芸部は売れているそうだが今回は例年以上らしい。買わない生徒達も展示用の花を鑑賞し、花に興味を持つ生徒もいる。

それを背景に商人ばりの前口上を並べて単価を切る俺に瀬戸口先輩と園山先輩が笑いを堪え、緑川先生は笑いながらため息をつく。


「さぁ皆さん!どんどん買っていって頂戴!早く買わないと今日の分が無くなるぞ!」

「久川!俺たち溶接部のも頼むぜ!」

「任せといてくださいよ!こっちは溶接部で作ったオブジェだよオブジェ!この俺が掛け持ちして作ったものもあるよ!苦労したから買って頂戴見て頂戴!台座以外にも色々あるよー!」

「あの1年面白いな、買ってこうぜ!」

「見た目に違和感ないのが妙に困るね。けど面白いから買ってこ!」

「溶接部と園芸部の組み合わせってなんか不思議!」


どんどん売れていく。これはうれしい悲鳴というやつだろう。

こりゃ午前中には全部売れちまうぞ。


案の定午前中に売り切ってしまう。瀬戸口先輩と緑川先生が全員分のジュースを買ってきてくれて乾杯をして飲む。あー叫びまくったからうまい。あと昼飯用に買ってきたカップラーメンが美味い。調達してきたたこ焼きとおにぎりも。


「よく食べるねー。」

「足りねえけどな。本当はあとおにぎり2つ欲しい。」

「炭水化物取りすぎだよ〜?」

「うん、夜ご飯食べられなくなるよ。」

「足りん!足りなすぎる!俺の腹を満たせるものか!」


中村と園山先輩が俺の食べる量に驚くが気にしない。むしろ足りないと言ったら目を丸くしている。


「これからどうするの?」

「あー華道部と棋道部に友人がいるんで見に行こうかと。」

「…前から久川君と一緒に文化祭を歩く事を約束してまして…。」


早坂さんが少し顔を赤くしながらみんなに伝えると園芸部と溶接部の部員達が「おおー!?」と驚いた後笑いながら囃し立てる。カップルみたいじゃないの。山口さんが少しだけ口を尖らせるが、それに気づいた早坂さんはほんの少し、悪戯な笑みを浮かべる。


「いいなー。部長、溶接部にも女子来ないっすかね?」

「来ないな。工業科に女子いないし。」

「美術科は女子の方が多いですよ?」


それを聞いた溶接部の部員達の目が光る。あ、こいつら行く気だ。


「行こう。」

「よし、男の本領を見せてこよう。」

「行ってこい。」


俺がジト目で見ながらいうと即座に飯を食い終わして出ていく。男って単純だね。

まぁ俺と早坂さんもいくが。スープを飲み干して、ゴミはゴミ箱に捨てる。


「じゃ、行くか。」

「…はい。」


お辞儀をして部室を出る。山口さんの視線が妙に怖かったが気にするのはやめよう。

さて、華道部に行くか。


生徒達でごった返してる廊下を抜け、華道部と棋道部の前に着いたから2人で華道部に入る。お、島村と平賀もいるな。

華道部は部員達が作った30以上の作品が置かれてて、棋道部の方は将棋、囲碁、チェスが10個ずつだ。


「あら、本当に来たのね。もう終わったの?」

「ああ。どうだ?売れてるか?」

「売ってないわよ。見てもらうだけだもの。」


ジョークだよジョーク。あ、やっぱり襖開けて棋道部と合同でやってるな。おっ、柊が手を振ってくる。平賀と将棋を打ってるな。島村はゆっくりと花を見ている。


「早坂さんはどうするんだ?」

「…私は花を見ますよ。一ノ瀬さん、もしよければ一ノ瀬さんの作品を見せてもらっても…」

「いいわよ。自信作だから見てね?」

「あ、早坂さん!一ノ瀬さんの凄く綺麗だよ!生け花とかよくわからないけど!」

「…私少し分かりますので教えますよ。」

「ありがとう!お願い!」


女子グループに対して俺は棋道部の方に行く。

「よう平賀。柊と対局やってんのか?」

「ああ。将棋は久々だからちょっと教えてもらいながらやってるんだよ。チェスなら好きなんだけど。」

「勝てたか?」

「いやー無理だな。強いぞ?」

「それじゃ俺とやるべ。柊、代わってもらっていいか?」

「うん!」


椅子に座り、駒を並べる。俺と平賀で勝負をする。平賀はイケメンで、俺は変な意味で目立ってる。

パチン、パチンという将棋特有の音が響く。一手、二手…やはり楽しいな。


「お、飛車ゲット。」

「チッ、取られたか。」

「平賀君上手いね!」

「こいつと違って頭の出来がいいんだぜ?…あ。」

「こっちも角とったぞ。バカを舐めんなよイケメン。」


互いに挑発しあい、ジュースを飲みながらやる。もちろん本気ではない、仲がいいからこそやれる事だ。真面目にやってる人もいれば雑談しながらやる生徒もいる。文化祭でやる将棋はそんなもんさ。


「え、久川将棋できるの?」

「ああ。小学生の頃友達とやってたからな。」

「互角ね。見てて面白いわ。」


前の世界で祖父に教わったからな。将棋教室行きたかったんだけど親にダメって言われてな。兄も妹もやりたい事をやったのに俺だけやらせてもらえなかったからなぁ。小遣い貯めて、将棋盤を買ってやったもんだよ友達と。

休みをもらった一ノ瀬と早坂が俺の方を、島村は平賀の動きを見る。うーん、これはわからんな…。


「柊、特別ルールで2歩やっていい?」

「流石にダメだよ。」

「ルール無用すぎるだろ。」


流石に笑われる。そりゃ反則認めろと言ったらな。

駒を取り合い、互いに集中すると部屋がざわつく。


「お、おい!ARの2人と平川君だ!」

「ここにきてくれるなんて!」

「あら、生け花がすごい綺麗だわ。」


七里がクールに評する。一ノ瀬がその言葉を聞いて少し笑みを浮かべる。

仲本は興味津々に生け花を見て平川は将棋を見ている。


「あ、久川君たちもいるんですね!」

「私と柊君はここの部活に参加してるの。いつものメンバーが集まったけどね。」

「へー、一ノ瀬さんは確かに似合いそうだもんな。」

「ありがとう。モデルの平川君にそう言われるなんて光栄だわ。」


有名人3人が俺たちいつものメンバーに話しかける。

だが俺と平賀は将棋に夢中になっていて気づかない。攻め手に欠いてるのだ。腕を組み考え込む。


「しゅ、集中してますね。」

「本気じゃない。」


そりゃ勝ち負けがあるからな。どうもマジになってしまう。判断が難しいな。だけどプロの人は何手も先を考えてるのだからすげえよ。


「どうした久川、降参するか?」

「抜かしやがれ。取ってる駒の数は同じだからまだ負けねえぞ?」


互いに笑みを浮かべてコマを動かす。その時、平賀がある提案をしてきた。


「負けた方が焼肉奢りな?」

「上等。一番高いコースで頼むぜ。」


ちょっと有利だからってやりやがって。まぁいい、負けるつもりはないけどな。


「2人とも、そろそろ終わりだよ。」

「あー時間?」

「うん、他の生徒も使うからね。」

「どっちが勝ちだと思う?」

「うーん…、今回は久川くんの勝ちかな。上手く行ってたら王手取れてる寸前だよ。」


数分後に柊に止められる。結果判明を頼んだら俺の勝ちに平賀が悔しそうにする。


「マジか!?」

「よし、焼肉箱舟の一番高いコースな。5000円だから楽しみだぜ。」

「うわー!?提案するんじゃなかった!」

「今回は久川くんの方が一枚上手ね。」

「…おめでとうございます。」


よし、最高のメシにありつけるな。焼肉最高!


「それじゃ平賀らあたしにも奢りね!」

「私にもお願いね?」

「勘弁してくれ!バイト代が飛んじまうよ!」

「みんなして追い詰めてるな。」

「我が軍の勝利である。慈悲はない。」

「久川君買ったから暴走してる…」


仲本さんのツッコミと平川の唖然としてる姿ををみて笑ってしまう。


「平賀がお前らにも奢ってくれるってよ。」

「ふざけんな!?」

「いやいや!俺金はあるから!」

「わ、私もです!」

「ええい!このブルジョワめが!」

「自分で言うのもなんだけど人気アイドルとモデルだもの。当たり前じゃない。行くけどね。」


なんて奴らだ!同年代とは思えんぞ!いいなー。


「嘘嘘!自分の分は自分で出すからね!」

「ええ。予定があったらみんなで行きましょ?」


島村と一ノ瀬は流石に自分で金を出すそうだ。何その俺も出さなきゃいけなくなる空気。勝った意味がなくなるじゃないか!


「つか来る気満々かよ!アイドルもモデルも体型とか気にしろ!食べ放題だぞ!?焼肉行くんだぞ!」

「大丈夫よ。たまにはね?」

「あら、アイドルなのに意外な反応ね。」

「一ノ瀬さんだって行く気満々だからお互いさまよ?」

「店内が困惑するやつや!」


室内が笑いに包まれる。花を鑑賞し、華道部と棋道部の先輩達に代わって柊や一ノ瀬、1年生と一部の2年生は自由行動になる。


さて、出店でも回るか!


「たこ焼きうめー」

「久川君食べ過ぎよ?」

「す、凄い量だなお前‥」


そりゃそうよ。たこ焼き、ポテト、お好み焼き、唐揚げ、団子…美味い美味い。


「次はどこに行く?」

「あっちの校舎の中に行くか、お化け屋敷とかあるらしいし。」

「よし行こう!」


第一校舎に向かうと人混みがすごい。


「お化け屋敷ですよー!300円でーす!」

「喫茶店やってまーす!」


校庭の出店にも負けない呼び込みだ。よし、お化け屋敷に入るか!


「早坂さん、入る?」

「………!!こ、怖いのですが‥」

「やめとく?」


怖いものが苦手なのだろう。ちょっと震えている。あまり無理させないほうがいいな。


「僕と一ノ瀬さんは入るよ!」

「行ってみるわ、面白そうじゃない。」

「…が、頑張ってください!」

「任せなさい?」

「それじゃいってくるよー!」


2人が金を払い中に入る。さて、どんな感じか?


「キャアー!!」

「うわぁー!怖いよー!!」


あ、これガチなやつだ。すっげえ悲鳴。早坂さん顔が青ざめてんぞ。


「マジなやつだこれ!?」

「一ノ瀬さんの悲鳴初めて聞いたよ!?」


なんかドンドンドン!って音してるし!


「怖いわよ!な、なに!?」

「ちょっ、一ノ瀬さん、裾引っ張らないで!」


ドアが開くと冷や汗ダラダラの2人が出てくる。息を切らせて少し震えている。


「こ、怖かった〜」

「ひ、柊君、ごめんなさいね?」

「大丈夫だよ。すごく怖かったね…」


2人が廊下に座る。柊は少し困惑した笑みを浮かべ、一ノ瀬は笑いながら震えている。


「島村、行くか?」

「うん!行こうよ!」


島村と平賀がお金を払い入っていく。どんな悲鳴が聞けるんだ?


「うわっ、暗!!」

「ちょっ、怖いって!!」


真っ暗なのか、これは楽しみになってくるじゃないの!


「どわぁぁぁぁぁ!?」

「ヒィィィィィ!!」


お、平賀のアホみたいな悲鳴が聞こえる。島村の悲鳴意外と可愛いなおい!


「な、なんか触ってきた!!」

「私じゃないよ!?」

「わ、わかって…うわぁぁぁぁぁ!?」


走る音が聞こえてくると扉を勢いよく開けて出てくる。


「こ、怖!?怖すぎるって!」

「び、びっくりしたぁ…」

「おめーらびびりすぎだろ!」

「んじゃお前いけよ!」

「上等だ!1人で行ってやろうじゃねえか!」


ほう、1人で行ってやるよおい!


「んじゃ俺行くわ。1人ね。」

「まじでお前1人か!?」

「いやいや、やめた方がいいわよ!?」


七里と平川が止めてくる。怖くねえって。文化祭のお化け屋敷だろ?


「…私も行きます。」

「早坂さん!?」

「…大丈夫です。行きます!」

「無理するなよ?」

「…はい。」


おお、早坂さんが行く気になるとは。よし、行くか!


扉を開けると真っ暗闇だ。生徒が勢いよく扉を閉め、びっくりした早坂さんが俺の手を握りしめてくる。教室内とはいえ迷路みたいにしてるな。


「こ、怖い‥」

「大丈夫大丈夫」


ドンドン!と音がする。暗闇で見えないから不意打ち気味に早坂さんが驚いてしまう。


「ひぅ!?」


早坂さんの悲鳴が可愛い。最高やないか!しかし暗くてよく見えないな。


「でていけぇ〜」

「ひぃぃ!」


めっちゃ早坂さんがビビる。俺は内心鼻歌を歌いながら進もうとするのだが怯えた早坂さんが握りしめてくる。


「大丈夫だって。」

「な、なんで平気なんですか‥」


まるでエスコートするように歩く。結構本格的なお化け屋敷だな。

周りを見渡しながら歩いていたら何かに躓いて転んでしまう。


「痛え!!」

「ひぅぅ!?」

「ごめん、なんかに踏んで転んだ。」

「は、はいぃ…」

「あ、すいません、すぐどかしますね。」


ダンボールを叩く役の生徒がスマホのライトをつけて椅子をどかす。


「あ、怖さ半減。」

「これは仕方ないよ。ごめん、先に進んでね。」

「あいよ。」


さてさて、最後になにがくるかな?


「うあぁぁぁぁぁぁ!!!」

「キャアー!!」

「おー本格的。」


隠れてたピエロのお面を被った生徒が追いかけてくる。早坂さんは俺の手を引っ張り、俺は少し苦笑いしながら出る。


「…こ、怖かったです‥」

「お前なんでびびらねえんだよ!?」

「凄!全然久川の悲鳴聞こえなかったよ!」

「怖くねえだろ。」

「ええっ!?本格的にやったのに!?」


受付の生徒と教室内の生徒が驚きの声を上げる。あまりにも俺は平然としてたからなおさらだ。


「普通普通。俺ならもうちょっと怖くできるよ。」

「な、なにをするの?」


受付の女子生徒が頭に?を浮かべる。


「いいからいいから。ちょっと中入るよ。」

「?わかりました。」


ノックをして合図すると許可がでたから入り、さっき椅子をどかしてくれた生徒にある事を提案する。


「おお、これいいね。」

「最高だろ?」

「よし、やるよ。」


俺と受付が出てくる。並んでる生徒やいつものメンバー全員がなにをしたんだろ?という表情をする。

結構な行列だ。並んでた3人の生徒がお金を払って入る。


「こわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「な、なになに!?ゾンビ!?」

「なんか変な声聞こえたぁぁぁぁぁぁ!」


悲鳴が聞こえる。うーん大成功。完璧だな。


「大成功!」

「な、なにをやったの!?」


一ノ瀬が驚いた顔で俺を問い詰めようとする。いつものメンバーと有名人3人を集め、こっそり、周りに聞こえないように耳打ちする。


「単純だよ。動画サイトのホラーゲームを流してるだけ。BGMとかゾンビの声とか。あの環境ならビビるさ。」

「悪魔かお前は…」

「そういやお前らは行かないの?」

「私達はいいわ。」

「う、うん…」

「遠慮しとく。」


有名人3人は苦笑いしながらため息をつく。まぁいいや、怖がらせるなら本格的に。受付の女子生徒がサムズアップしてきたから俺も返すと移動して喫茶店に向かう。

さて、今日の分も楽しみますか。

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