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第32話 部活の文化祭準備

翌日、やることのない俺たちのクラスは暇つぶしモードに入っている。ゲームをやるもの、勉強する者、外で遊ぶ者、カードゲームをやる者、雑談する者など様々だ。


「…久川君、どこへ?」

「部室、やることないからな。溶接部で作るやつは終わってるから花でもみてくるわ。」

「…私も行きます。」

「んじゃ行くか。」

「あ、僕もいいかな?棋道部で文化祭で使う教室の飾り付けに花が欲しいって話が出てて。」

「おう。んじゃ3人で行こうぜ。」


頭を掻きながら教室を出る。他の教室はデコレーション制作をして、ワイワイガヤガヤと楽しんでいる。文化祭の準備というのは青春の一ページの一つであり、1年に1回しかやらないからこそ、同じことは今後一生起きない。だからこそ楽しむ。

高校の文化祭は屋台を出し、教室でも店を出し、一般人や他校の生徒が楽しめる最大のイベントだ。中等部の生徒達も楽しむ機会。この楽しい喧騒は忘れることはないだろう。社会人になったらそんな機会はなくなる。


「柊、部活の方はどうなんだ?」

「んー、ぼちぼちだよ。緩い部活だから勝ち負けはあまり気にしないから。あ、再来週は練習試合だから勝ちたいけどね。」


緩い部活はそこがいい。厳しい部活というのはエンジョイ勢にとっては苦痛でしかない。

勝ち負けにこだわるのはわかるが、趣味で楽しくやるのと、本気でやる人間のやる気の差はかなりある。

やる気ある奴はそいつらだけでやれと昔から思ったからな。


「ねえ、久川君は習い事とか部活とかって中学生の頃はやってたの?」

「あー中学の頃卓球やったなー」

「…意外ですね。」


卓球やってたな。元の世界でだけど。けど…まぁ色々あったな。


「3ヶ月で辞めたけど。」

「「……え?」」

「いじめが酷くてさ、俺が言ってた中学校、クズの集まりみてえなところだからさ。精神壊れる前に辞めたよ。」


苦笑いしながら頭を掻いてボヤく俺に柊は申し訳なさそうな表情をする。気にするこたぁねえのに。元の世界の事だし、10年以上前だからな。


「ごめん、嫌なこと思い出させちゃったね。」

「気にすんな。昔のことだからよ。」


運動部なんていじめの巣窟だろあんなの。野球大好きだったやつが高校に進学して名門野球部入ったらあまりにもやばすぎて野球嫌いになったやついたからな。


「あら、意外ね。貴方がいじめられてたのはちょっと驚きだわ。」

「確かにな、普段の陽気さからは想像できねえ。」

「うん、あたしも驚いてるよ。あんなに強いのに。」

「お前ら着いてきてたんか!」

「ええ、私も園芸部に用があったの思い出したから。盗み聞きしたのは謝るわ。平賀君と島村さんは暇だからって。」


一ノ瀬が頭を下げる。別に気にしてないけどな。隠すことじゃないし。


「やっぱ運動部っていじめ酷いよな。俺の所もあったよ、サッカー部だったんだけどさ、上下関係が酷くて、同級生なんてパシリをさせられたりわざとサッカーボールをぶつけられた奴がいてさ、可哀想だったよ。」

「あたしのところもあったなー。バレー部の友達がいじめられてさ…。」

「大人になると1歳2歳差で粋がるとか恥ずかしいし経験と技術が見られるからな。ほんっとくだらねえよ。」


大人発言にみんながぽかんとする。いや事実だぞ?30歳の人間が50歳のおっさんに指示を出すのも当たり前になるからな。役職持ちと平社員と派遣じゃ年齢は関係ないんだよ。


「んでそういう事をしてたやつが大人になると『俺も丸くなったんだよ。後輩は大切にしないとね』とかほざくんだよな。殺すぞ」

「け、経験してきたような口ぶりだな。」

「何歳よ貴方。」


本当に経験してきたからな。元の世界では想像を絶するイジメに耐え、親にも、教師にも助けられてこなかったからな。クソみてえに荒れた中学にいたからな。


「気にすんな。そろそろ部室着くぞ。」

「顧問の先生は?」

「いつもいるから大丈夫。文化祭準備期間はいつもここにいるって言ってたからな。」


ノックして入ると緑川先生が驚いた表情をする。まぁそりゃ他のクラスは作業してるもんな。自習とか。


「あら…どうしたの?出し物の準備は?」

「終わったんで暇つぶしに。あとクラスメイトが花が欲しいと。」

「あ、棋道部の柊って言います。その…飾りの花が欲しいと部長から言われまして…」

「華道部の一ノ瀬です。同じく花を頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」

「あら、全然いいわよ。」


ぺこりと礼をする。柊はその見た目から親しみやすい雰囲気があるし真面目な奴だ。

一ノ瀬も同様で先生達の信頼も厚い。断られることはまずないし何度か緑川先生にもあってるしな。


「そういや華道部はともかくなんで棋道部が?」

「うん、将棋と囲碁をやるから雰囲気にって。彩も欲しいって副部長か提案してね。」

「なるほどなぁ。」


確かに彩は欲しい。将棋盤や碁盤しかなかったら殺風景だもんな。そういや他の部活見学した時のことを思い出した。華道部、茶道部、棋道部は隣同士の和室だったな。


「文化祭の日、遊びに行くかなー。将棋やりてえし。」

「勿論いいよ!久川君がくると楽しそうだし!それにね…」

「ええ、私も同じこと言おうと思ってたの。」


…なんだ2人して改まって。俺が何をした。


「久川君、有名人だから多分きたら騒ぎになるよ。」

「貴方溶接の件で部長が暴走機関車って言ってたわよ?」

「嘘だろ!?」


暴走機関車ってなんだよ!!喧嘩してねえぞ俺!


「まぁ想像つくよね。」

「…溶接部の一件、作業着で部活動、さらに前の山口さんのこと…短期間でやりすぎですよ。」

「実を言うと他クラスの友人からもお前のこと聞かれたぞ。自重しろバカ。」

「よし平賀テメーは殺す。」

「辞めなさいおバカ!」


マジか…俺そこまで有名になってたんか!!よし、学校サボろ。ほとぼり冷めるまで休もう。どうりで最近視線感じてたわけだよ!


「悪い意味じゃないからよくないか?」

「恥ずかしいわ!」

「あなた達何を騒いでるのよ。はい、柊君、一ノ瀬さん、これを持っていっていいわよ。」

「ありがとうございます。」

「すいません、ありがとうございます。」


俺と平賀の言い争いに花を持ってきた緑川先生がため息をつきながらテーブルの上に置く。

和室に似合う花だ。ツバキや菊の花、そこ他にも何種類か見繕っている。


「私が育てた花だから大切にね。」

「柊、俺も持ってくよ。」

「一ノ瀬さん、手伝うよ。」

「あ、私も一個持つよ。」

「ありがとう!」

「悪いわね。」


俺と平賀は2つずつ、島村は1つ持つ。力仕事は男がやるものだからな。暇つぶしに花の世話をしようとしただけだったんだがまぁこれも悪くない。つうか見学以来だな、他の部活の部室に行くの。


「早坂さんは?暇なら一緒に世話する?」

「…はい。久川君、私は残って先生と世話してますね。」

「わかった。俺も戻ったら手伝うわ。んじゃ行ってくる。」


島村が扉を開けて5人で出ていく。学校中、各教室が自習したり文化祭の準備をしてるのを背景にのんびりしてる俺たちは棋道部と華道部の部室に花を置いて別れる。そういや襖で分けられてるだけだったな。これ合同運用する感じか?そんな事を考えながら部室に戻って早坂さんと緑川先生と共に花の世話をする。

文化祭もそろそろだ。いやー楽しみだな。

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