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むりむりむり

案の定。

 城に併設された聖堂の丸い広間。床に描かれた勇者召喚の魔方陣の中に人間が出現した。

 「勇者よ、我らの世界へようこそ!現在我々人間は魔王軍の侵攻によって滅びる寸前である。貴公の力で我々を救って欲しいのだ!」

 「ああ?なんだって?」

 また1人出現した。

 「なんだあ?ここはどこだ?」

 3人目が出現した。

 「ったく、チラチラした光が見えたかと思ったら、あ、めがね、俺のめがねはどこ行ったんだ。」


 魔方陣から続々と人間が現れ、それぞれがなんだ何がが起きたんだと騒ぎ出した。現れる人間が増えていった。


 「陛下、陛下!勇者がどんどん召還されて来ます。どうしましょう。おろおろ。」

 大神官がわなわなと震えていた。


 「どうしろって言ったってな、騎士団長!なんとかしろっ」


 「おいっ前の方のヤツ!後ろから人が溢れているんだ、止まっていないで進んでくれ。」

 「ちょっと変なとこ触んないでよ!痴漢がいます!ここに痴漢がっ。」

 「誤解だぁ。」

 「あぎゃ~わあああんわああん!」

 「おーい、赤ん坊がつぶされそうだ。外へ進んでくれー。っていうか、親はどこいったんだ~。」


 出現する勇者の波は止まらなかった。


 「みなさーん、外へ誘導しますから前の勇者を押さないでくださーい。はいこちらです。あ、お子さん連れの方は右の方へ行くと食堂がありますから何か食べさせてあげてくださいーい。なお、トイレは左手になります。」


 騎士団長が交通整理を始めていた。わりと有能らしかった。

 ゾロゾロと勇者が増えていく。一度に現れる数が多くなってきていた。聖堂の広間が勇者で埋め尽くされ、人圧に負けて壁に亀裂が走った。ぴしっ。

 ガラガラドッシャーン!

 天井が勇者達の頭上に落下してきた。


 「うおおりゃあ!」

 「覇っ!」

 「廬山昇「かめは「はど「あたたたたたっ!」


 勇者達が降り注いでくる天井材を迎え撃って消していく。


 召喚された勇者は老若男女を問わず、人間、エルフ、ドワーフ、獣人など種族もばらばら、とりあえず人類の範疇に入るものは全ているようだった。わいわいがやがや。人数はすでに千人を越えていた。


 「ふはははははは!これはいったい何事であるか?おおい、きついぞ、皆の衆、外へ進むのだぁあああああっ。」


 出現したばかりの男が凄まじい音量で声を発した。最後の方は1オクターヴ上がってシャウトしていた。


 「うるせー、なんだお前は。」

 「ふむ、吾輩を知らんのか?吾輩は勇者だ、たぶん。」

 「あ、あなたは、カリスマ評論家の吾輩様ではありませんかっ。しまった色紙を持ってきていない。不覚!」

 「まあ、そういうことだ。だが吾輩が今言わねばならないのは・・・責任者出て来ーい!」

 「責任者って言えばここの王様だろ?どこ行ったんだ。」

 「だ~れぇ?責任者?」

 「おい、王様だってよ、外側にいるヤツ、見なかったか?」

 「だ、だれが王様だ。」

 「こいつじゃないか?」


 王様が吊し上げられた。

 「貴様が責任者か。では、問おう!我々はなぜこんなところにいるのだ?」

 「ゆ、勇者を召還して魔王を退治してもらおうと思ったのだっ。それがなぜこんなに大勢出てくるのだぁぁぁっ。」

 「ふむ、まさに責任者出てこいと言いたいのであろうが、生憎責任者は貴様だ。」

 「黙れ下郎!その言動は陛下に対して失礼極まる。この場で切り捨ててやる!」

 「勇者パンチ!」

 「あんぎゃー。」


 カリスマ評論家に剣を向けた騎士が、隣にいた学生っぽい少年に殴られ、天井を破壊して空へ飛んでいった。

 「吾輩様、続けてください!」

 「おお、少年、ナイスフォローだ。では責任者、この人数を捌くための権限を吾輩に委譲してもらおう。そうか任された!では勇者諸君、第一の行動としてこの場所から外側へ拡散してくれ!吾輩の予想では我々がいた世界の人類全員がここに出てくるだろう。」

 「そこまでかっ。」

 「は、早く移動してくれぇ、後がつかえてるんだよ。」

 勇者の出現は止むことがなく、勇者の人混みは聖堂を越え、王城を越え、城下町へと広がりつつあった。


 「第二の行動として、衣食住の確保である。無論家族の再会とか、それよりトイレの確保も優先事項だな!おい、行政官でその辺りを担当していた者がいたら率先して動いてくれ。今や勇者行政官だろうからクリエイトラバトリーとか唱えると空中から出現するかもしれんぞ!わはははははははっ」

 「クリエイトラバトリー!あ、出てきた。」

 「まさか。」

 「クリエイトラバトリー。」「クリエイトラバトリー。」「クリエイトラバトリー。」「ふう~。」

 あちらこちらにトイレが出現した。切羽詰まった勇者達が安堵のため息をついていた。 

「デリートラバトリー。うむ、後処理も問題ないな。」

「クリエイト串焼き屋!」「クリエイト肉まん屋!」「クリエイトどんどん焼き屋!」「クリエイト立ち飲み屋!」「クリエイト焼き栗屋!」「クリエイト腸詰め屋!」

屋台屋系勇者が軽食を提供し始め、空腹になった勇者達の胃袋を満たしていった。


「いったい、ここはどこなのであるか?それにこれはどういう事態なのだ?」

「きゃあああああああああああああああああああああああ!魔王様よ!魔王様が降臨されましたわっ!」

召還陣の方から女性勇者達の歓喜の叫びが沸き上がってきた。


「魔王だと?魔王まで召喚してしまったのか?せ、世界の終わりだ。」

この世界の王が絶望していた。

「んん?なにか認識の違いがあるとしか思えんが。そういえば、魔王退治で吾輩達を呼んだとか語っていたなぁ。なぜ魔王が退治されなければならないのだ。3行で答えてくれ。」

「魔王は、

人間を

滅ぼそうとしているからだ。」

「1行で足りたな。」

「何言ってんのよあんたっ。うちらの魔王様はエンターティナーの至高!あふれ出る魔力を使ったイリュージョンの神!超絶美形のパワーアクター!誰が呼んだかマダムキラー!地上に降りた最後の堕天使!しかも子持ち!」

「なんだって?」

「魔界の王子様はまだ召喚されてなさらないのかしら-?」

「ああっ王子様!皆様―っ魔界の王子様が現れましたわーーーっ」

「きゃーーーーーーーーーーーーー!」

「おーーーじさまー」

何人か気絶する女子勇者が発生していた。

「息子よ、おまえも勇者属性を得たようだな。」

「父上、父上こそ勇者魔王とか訳わからない属性を得ていますが。」

「そのようだな。それはそうと、吾輩はこの世界の魔王と雌雄を決せなければならない運命にあるようだ。」

「なんと、それは真でしょうか。」

「おお、貴公は評論家の吾輩殿ではないか!吾輩も召喚されたらしいのだ。奇遇だな!」

「吾輩が先に召喚されましたので事情を説明いたしましょう。実はかくかくしかじか。」

「それでわかるんかい!」魔王の息子が突っ込みを入れた。絶妙の間だった。

「うむ、吾輩は吾輩同士であうんの呼吸なのだ。」

「意味不明だが。」

「つづく。」


作者は山形内陸の人なので、ローカル屋台も出ます。

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