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世界の合い言葉は歌

勇者スキル小説書き!なのじゃ。

ぐはぁ

 召喚されて勇者になった農家のとーちゃん36歳が荒れ地に鍬を突き刺した。

「勇者スキル、超耕作!」もこもこもこもこー。

荒れ地が一気に耕作地へ変貌する。

「ばーちゃん、出番だ。」

「あーいよぉ。」

勇者農家のばーちゃん65歳が右手を水平まで上げ、手のひらを耕作地へかざした。

「勇者スキル、超石拾い!」ぼこぼこぼこぼこー。

耕作地の土の中から大小の石ころが1mほどの高さに飛び出してくる。

ばーちゃんは右手を動かして石ころを左手の土手に集めて下ろした。

「勇者スキル、超種芋蒔き!」ぼとぼとぼとぼとー。

勇者農家のかーちゃん35歳が種芋を空中に放り投げた。種芋はきれいに整列して耕作地に落下すると土の中に潜り込んでいく。

「勇者スキル、超速成長!」わさわさわさわさー。

勇者農家の娘16歳が勇者パワーを種芋にそそぐとわずかな時間で発芽して茎を伸ばし、葉を広げた。

「勇者スキル、超芋拾い!」

「ばーちゃん、さっきの石拾いとどうちがうんだい。」

「さて、わたしゃ知らんし。なんかやりたいことを口に出すだけで実現してるんだなあ。長生きはするもんだねぇ。」

「ばーちゃん、すっごい量の芋がとれたよー。勇者パワーってすごいんだねー。」

娘が満面に笑みを浮かべ、採れたばかりの芋の山を眺めていた。


勇者農家達が農業生産物を大量に発生させていた頃、海岸に到達して漁を始めた勇者漁師一同は困難に直面していた。

「どうする、魚を一瞬で採りきっちまったぜ。」

「わたしにまーかせて。勇者スキル豊穣の海!」

漁協の事務のおねーさんが海に向かってぴしっと指さすと・・・視界に入る全ての海面から大小の魚が沸騰するように跳ね出した。


「我らが運ぶのはお客様の心です~。」

とか言いながら勇者運送業者のおにーさん達が勇者スキル大容量亜空間収納に農作物やら魚介類やら食料を詰め込み、時速250kmの駆け足で流通させていた。


世界各地で、拡散した召喚勇者達が勇者スキルを得て勇者料理人とか勇者保育士とか勇者大工、勇者縫製職人、勇者狩人、勇者漬け物人、勇者麺職人、勇者仕事人。勇者呼び込みなどなど勇者的なナニかでこの世界での新しい生活へ突き進んでいた。


そのころ、世界の片隅で、どうしてもつけなければならない決着が始まろうとしていた。


 この世界の魔王城、王の間で対峙する現地魔王と召還勇者魔王。

 そして向かい合うそれぞれの配下の四天王。

 膨大な魔力が渦巻く巨大な空間になぜかいる勇者カリスマ評論家。

 その隣には勇者魔王の息子、通称魔界王子もいた。いや、今は魔界勇者王子である。

 

 「父上、配信の準備ができました。」

 「ごくろう。では現地魔王よ、バトルを始めようではないか。」

 「ぬぐぐ、いかに貴様らが召喚されて勇者の力を得たとはいえ、この世界最強の我ら魔王直属四天王の攻撃を防ぐことはできぬはず!極低温の風に切り刻まれて死ぬがよい!」


 「おおっといきなり現地四天王の一番弱そうなヤツが風系切断魔法を放ったあああっ。」

 魔界勇者王子が実況を始めている。

 「極低温の風を高速旋回させて静電気を発生させ、一部真空にして放電し気流をプラズマ化することで破壊力をマシマシにしていると見た。四天王最弱とはいえ素晴らしい魔法だ!吾輩も感服せざるを得ない。」

 「最弱じゃないもん!」

 四天王から反論されつつ勇者カリスマ評論家が冷静な解説をしている通り、そういう凶悪な攻撃魔法が勇者魔王達へ迫撃していた。


 「ギター!」

 ぎゅおおーん、ぎゅわわーーん!

 勇者魔王のかけ声で勇者四天王の一人が抱えていた魔道具を作動させた。

 「ドラムス!」

 どたたたん!でたたん!どたたたん!

 勇者四天王達がまな板と棒を組み合わせたような魔道具に張り付いている細い鋼線を指で弾いたり(ギターと言うらしい)、太鼓をいくつも並べた魔道具(ドラムスと言うらしい)を引っぱたき爆音を発生させた。そして、勇者魔王がよく通る声を張り上げた。


 「鉄槌をぶん投げろ!」(曲名らしい)


 べいん、べむぼむ、べいん、べぬぼむ。(ベースというらしい)

 ぎゅわんぎゅわん、ぎゅわわーん。(先程のがリードギターでこちらはサイドギターというらしい)

 残りの勇者四天王もそれぞれ手にした魔道具を操作し始める。


 「世界は混迷し、人々は惑い、不満の声を上げる。

 我々は何をするのか。悪態をつき、それで終わるのか。

 断じて否!両足を大地に下ろし、天を見上げ、腕を突き上げ我々は叫ぶ、鉄槌をぶん投げろ!」

 勇者魔王が矢継ぎ早に詞を放つと現地四天王の攻撃魔法が霧散した。


 ぎゅいーん、ぎゅいーん、ぎゅややーん!ギターの音が唸る。

 魔王城の窓に亀裂が入った。

 どたたっどん!どたたっどん!べいんべんべんべむぼむ!ドラムスとベースの音が律動する。

 現地魔王達の攻撃は全て無効化され、魔王城が勇者魔王達の演奏音に包まれていく。


 「今日の父上達は乗ってますねぇ!」

 「うむ、このグルーブ感はいつ聞いても極上であるな!おおぅいえー!」

 「ちなみに今日の演奏は全世界に生中継しています。

 「各地で生存競争真っ最中の同胞勇者諸氏にも励みとなるであろう。わはははは!最高だ!勇者最高だぜ!」


 現地魔王達はなにがなんだかわからぬまま勇者達に敗北していた。

 なんでこいつらは歌っているんだ。なんで魔王なのに勇者なのだ。

 神はなにをしているのだ。責任者出てこい。

 ああもういい。こうなったら我々も歌ってしまうぞ!

 

 「おっけーい、次の曲行くぞおおおっ 最終審判の日をぶっとばせ!」

 でででけでけでけでけでけどん!

 「うううううーおおおおおお、お。神の裁きが来たるとき、俺の声はどこまでとどく。」

 べべんべんべん、びゅわわわわ!

 「俺の声が聞こえたなら、次には君が叫ぶのだ!俺たちはここにいるのだと天に向かって吠えるのだ。青い空を越えて遠くの海をも越えて。風に流され波にもまれても俺たちの声は消せないのだ!うぉおおおおー。」


 勇者達の歌は始まったばかりだ。


 「次はラブバラード行くぜーーー! 『君の夢を見たんだ。』」

劇中の歌詞は創作です。

勇者魔王が歌っているのはロックンロールです。

なんか評価していただければ次もあるかもです。

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