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金の髪を風に揺らしながら、日和は屋上で空を見上げていた。横で遼太郎がクァーと欠伸をして、日和に寄りかかった。
「紅緒も最近来ねぇなあ。暦と修行かなあ。」
「そうだな」
日和たちのグループには所謂、不良漫画によくある「敵グループ」や「派閥争い」「闘争」といったものはあまりない。
少々古い言葉を使えばチーマーやゾッキーなどではなく、ヤンキーが仲良しで固まってる状態と言えばいいだろうか。
他学年同士とはあまり仲はよくないし、他校の不良とも険悪な仲と言っていいだろう。もちろんのことながら教師との仲など論外である。
しかし日和たちは何かに勝とうとしているわけでも、何かを守ろうとしているわけでもない。そのため険悪な仲だからとて、下手に喧嘩を売ることはない。
目的は無く、ただ少し社会からはみ出してしまった連中で固まった。ただそれだけの話で、仲間であり友だちだがその間にルールや名前といった縛るものはない。
だから裏切るだとか抜けるという概念は、少なくとも日和と遼太郎には無い。
あまりつるまなくなったからといって、暦や紅緒と友だちを止める気はサラサラないし、別の連中と付き合いを持っていても裏切りだとか糾弾する気も制裁する気もない。
日和は口数があまり多い方ではないし、他人に無関心なのかと思われてしまうほどに一見「来る者拒まず去る者追わず」のスタンスだが、実際は気に入った人間は何時まで経っても心の中では友だちという、仲間想いの心根のいい男なのである。
それをよく知っている遼太郎はトラブルメーカーながらも愛嬌があり、誰からも可愛がられる弟キャラで、日和たちのグループの中心メンバーで一番親しみやすく、日和たちを慕って集まってくる少年たちを取りまとめるポジションについている。
また、日和や暦、紅緒といった癖の強い面々をまとめているのも遼太郎である。遼太郎がニコニコ笑っているからこのグループはグループとして存在しているのだ。
頭は悪いが性格はいい、それが遼太郎である。
別に絶交したわけでもなしそんなカリカリするなよ、
というのが二人の考えなのだが、
日和たちの考えを他所に、日和たちを慕う者たちの考えは違い暴走しつつあった。
「オレ見たぜ、野郎が紅緒と暦を侍らせてるの。」
「ああソレ俺も見た!」
「俺なんかケーサツみてぇのと、白衣着た男と楽しそうに暦が話してるの見たぜ。」
「俺は誰かのカーチャンみてぇなのと紅緒が何か話し合ってるの見た。」
野郎というのは鴇のことである。ケーサツは道路工事の警備員、白衣は道夫だ。そして誰かのカーチャンは鴇のファンクラブメンバーである。しかしこの場の面々はそんなこと知る由もない。
日和はため息をついた。遼太郎は頬杖をついて他の少年たちを眺めている。
「ねー日和ーどうすんの?なんかガチャガチャしてんぜ?いっそくしょくはつ?みたいな?」
「一触即発な。どうすんのっつったってなあ…どうにかするしかねーだろ」




