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100-09 即応性

 『魔法陣の即応性向上』というテーマで行われる会議に、仁も聞き役で参加している。

 聞き役とはいっても、重大なミスを見つけた場合は口を出すつもりである。


 参加メンバーは技術主任アーノルト、その秘書としてチェル。

 『ゴー研』からゴウとルビーナ。

 『魔法陣研究室』(魔陣研)室長のマック・ジ・サルーク。

 同じく副室長のロイム・エエ・イムッサ。

 『魔陣研』技術者のルリ・モーグワとラザ・エココア・クエ。

 そして仁と礼子、である。


*   *   *


「『魔法陣』の大きな欠点は、『即応性がない』ことでした」


 会議が始まり、まずゴウが発言する。


「これまでの『魔法陣』では、最も速いものでも起動から1秒以上を必要としています」

「そうだね。『魔導具』であれば実感できないほどタイムラグは小さい」


 ゴーレムや『自動人形(オートマタ)』の反応速度をみればわかる。

 そう考えると、『魔法陣』は『魔導具』の1億倍以上も起動が遅いということになる。


「これをもう少し速くしたいというのは誰もが考えることでしょう。我々……私とルビーナも、それをテーマにいろいろと考えました」


 ここから、発言はルビーナに交代する。


「ええと、まず考えたのはどうして『魔法陣』が遅いのか、という原因の究明です」

「うむ、我々もそれは日々考えている」


 『魔陣研』室長のマック・ジ・サルークが頷いた。


「1つには、その原理上の問題ですね。つまり、魔力がその図形を巡ることで効果を発生させるという構造上、どうしてもタイムラグが発生します」

「それは常々感じていることだな」


 渋い顔のマック・ジ・サルークである。


「ゆえに、『魔法陣』を小さくして魔力経路を短くすることも考えたのだが、それでは出力が落ちてしまうのだ」


 副室長のロイム・エエ・イムッサも事実を述べた。


「そこで、魔力回路を描画するインクを工夫したのだが、数パーセント程度の効果しかなかったのだ」


 悔しそうな顔のロイム・エエ・イムッサである。


 魔力回路の抵抗値は、電気回路の抵抗値になぞらえることができる。

 回路基板のパターンが細いと流せる電流も小さくなってしまうのと似たようなものだ。

 基板の銅箔を厚めに取るという工夫もあるが、限度がある。


 数パーセント程度の効果、とロイム・エエ・イムッサが残念がるのも無理はない。


「そうですね、私たちもそれは予備実験で確認しました」


 再び発言はゴウに代わる。


「ここで、考え方を変えてみました」

「ほう?」

「それを説明する前に……経緯をお話しします」

「うむ」

「最近『データベース』に追加されたデータに、興味深いものを見つけたのです」


 ここで、ルビーナが出席者に資料を配布した。


「資料は、『電子回路』についての文献からの抜粋と要約です」


 これは『異界の書』から有用そうな内容をデータベースに追加したわけだ(もちろん老君が)。


「こちらは、サイズを小さくするために『集積回路』というものを使う、とあります」

「ほほう……」

「小さくすればそれだけ反応性が高まりますが、取り出せる出力は弱くなります」

「当然だな」

「そこで、資料の2ページ目をご覧ください」


 そこには、集積回路からの出力をブーストする方法がイラストで描かれていた。

 特に、電力をブーストする方法が詳しく描かれている。


「電気回路の場合は『パワーアンプ』というものを使うらしいです」


 パワーアンプがどういうものかはとりあえず置いておいて、とゴウは言ってルビーナにバトンタッチする。


「大きな、あるいは強力な魔法を放つには、『魔法陣』も大きくする必要があります。そして、大きな魔法陣は即応性がない」

「そのとおりだ。いかに発動の前段階までを速くできても、発動に時間が掛かってしまっては意味がない」

「我々もそこでつまづいた」


 それを聞いたルビーナはにこっと笑った。


「さあそこで、私たちの手法です。3ページ目を見てください」


 そこには、大きな水タンクの蛇口を小さな『魔法陣』で操作する絵が描かれている。


「水タンクは例えです。つまり、あらかじめ魔法を準備しておき、微弱な制御魔力信号で発動させる。これが私たちの結論です」

「おお、なるほど!」

「これは考えつかなかったな……」

「さすが『総合技術士(プロファウンダー)』だ」


 ゴウとルビーナのこの考え方には、仁も感心させられた。


「魔法を準備して待機させる『魔法陣』も試作してみました。資料の4枚目をご覧ください」

「ふむふむ」


 そこには、大きな『魔法陣』、中くらいの『魔法陣』、小さな『魔法陣』が一部重なるように描かれていた。


「図はあくまでも概念です。小さい『魔法陣』は制御用ですが、もっともっと小さく作りますし、大きな『魔法陣』は積層にしてもいいと思っています」

「これはよさそうだな」

「うーん、見事だ。……ジン殿、何かありますか?」

「いや、特に問題はないと思う。見事だな、ゴウ、ルビーナ」

「ありがとうございます」


 仁からの褒詞ほうしに、笑顔になるゴウとルビーナ。


「『魔法陣』が得意とするのは、一定の出力を長く保つような用途だからな」


 逆に、出力を頻繁に上下させるような用途では反応速度が問題になるわけで、それを今回解決しようというわけである。


「試算では、既存の『魔法陣』に比べ、この『集積魔法陣』では100倍以上の反応性を得ることができると思います」

「おお、それは素晴らしい」


 ゴウとルビーナのこの発表を聞き、2人の成長を感じられて嬉しい仁であった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 次回更新は4月28日(火)12:00の予定です。


 20260426 修正

(誤)「こちらは、サイスを小さくするために『集積回路』というものを使う、とあります」

(正)「こちらは、サイズを小さくするために『集積回路』というものを使う、とあります」

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― 新着の感想 ―
コンデンサも容量が大きくなればなるほど、回路の反応がゆっくりになるから(笑) 昔の電子回路と現在では、大電流装置へのアプローチが真逆だからねぇ。 真空管時代は電動機などとの電圧差をそれほど気にしなく…
 私的には魔方陣に魔力が満たされることで発動するなら魔力の注入口を1つに絞るのではなく複数に出来ないか考えるかな。見た目的には携帯なんかに指紋を登録しようとすると全方位から読み取りの光の道が出来ていく…
>「こちらは、サイスを小さくするために『集積回路』というものを使う、とあります」 サイス→サイズ >「水タンクは例えです。つまり、あらかじめ魔法を準備しておき、微弱な制御魔力信号で発動させる。これ…
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