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100-08 参加

 『農業研』の見学を終えた仁たち。


「ジン兄、私はちょっと『アヴァロン病院』へ行ってみる」

「うん、わかった。俺はゴウたちのところに行く」

「ん、それじゃまた、あとで」

「お昼に食堂で、な」


 ということで、仁と礼子はまずアーノルトのところへ。

 そしてエルザは『アヴァロン病院』へと向かったのである。


*   *   *


 エルザはまず病院長のハーシャ・クラウドに挨拶。


「こんにちは」

「あ、エルザ様、来ていただけたんですね」

「ん、『自由魔力素(エーテル)貯蔵庫』の件で。で、みんなどうしているかと思って」

「ちょうどよかった。話し合いをするので、見ていていただけませんか?」

「いいけど、何の話し合い?」

「歯科です」

「歯……なるほど」


 この世界には『ストレプトコッカス・ミュータンス』、つまりいわゆる『虫歯菌』はいないらしく、虫歯患者は極めて少ない。

 が、決して0ではないため、歯科医の需要もある。

 そして歯科医は、虫歯のみならず、事故で折れた歯の処置や、子供の乳歯の抜歯、斜めに生えた親知らずの抜歯なども行う。


 併せて、『口腔外科』的な治療……口内炎やがく関節症も診たりする。


「今日は、義歯ぎしについての話し合いです」

「なるほど、興味深い」


 荒事を生業なりわいとする人たち……兵士や警備員などが、訓練中に歯を折ってしまうことはまれにある。

 特に前歯は、殴られたり前方に転んだりした際に折れることがあるのだ。

 また、歯だけでなく、歯茎や顎の骨にもダメージが加わり、出血することがある。

 歯茎(歯根膜しこんまく・骨・歯肉)のダメージは、程度によるものの自然治癒する。つまり、『医療魔法』で治癒を早められる。


 今回の話し合いは義歯ぎしについてなので、歯が欠損した場合の治療法である。

 骨と違って、歯の欠損は『治癒系の魔法』では治らないのだ……。


*   *   *


 15分後、小会議室で話し合いが始まった。

 出席者は病院長ハーシャ・クラウド、看護師協会初代協会長メイ・シャイ・ジョーイ、医師ポリアンナ・ペンドルトン、医師ナージャス・カーン、医師マイン・ニチエ、医師ニノ・シャイナル、薬剤師スーリヤ・サンク、そしてエルザである(女性ばかり)。


 挨拶の後、早速話し合いとなる。


「まずは、神経部分にまで達していない欠損の治療について、です」


 進行役はハーシャ・クラウドが務める。


「その欠損なら、歯に近い物質で修復できますね。問題は材質でしょうか」


 ニノ・シャイナルが意見を言う。


「もう1つ、元の歯との結合もしくは接着も考慮しなくてはなりませんね」


 補足したのはナージャス・カーンである。


「できれば、色も歯に近いほうがいいでしょう」

「そうなると、多少の色調整ができるような物質がいいかもしれません」

「硬さも重要でしょうね。前歯であれば、食物を噛み切るような使い方をしますから」


 等々、意見が出てくる。


「ええと、そうした要求に、かなり近いものがあります」

「え、スーリヤさん、それは?」

「セラミックスです」


 セラミックもしくはセラミックスとは、狭義には陶器などの焼き物、広義には無機物を焼き固めた焼結体をいう。


「なるほど、それはいいかもしれませんね」


 ここで、エルザが一言助言を口にする。


「みんなの考えからの流れはとてもいいけれど、1つだけ言わせてもらうと、元の歯より硬い物質は使わないほうが、いい」


 噛み合わせた場合、元の歯を削ってしまったり、再び折れるようなケースで、義歯側ではなく元の歯が折れてしまっては困るから、と説明したのである。


「ああ、よくわかりました」

「アドバイス、感謝します」


 義歯を丈夫にしすぎると、それを取り付けている元の歯の負担が大きくなる。

 それをエルザは指摘したのである。


「ああ……そうすると、レジン系がいいかもしれません」


 すぐにスーリヤ・サンクは代案を出してきた。


「レジン……なら、いいかも」


 エルザも賛成した。


「色の調整もできますし、元の歯への接着も簡単です。欠点は、硬度がちょっと低いことでしょうか」


 レジン……樹脂の硬度は、金属に比べて低い。

 プラスチックスと呼ばれる樹脂の中でもトップクラスのアクリル樹脂でさえアルミニウムと同程度である。

 これを硬いと見るか軟らかいと見るかは用途によるが……。


「場合によっては『硬化(ハードニング)』を軽く掛ければいいかもしれません」

「そういうことね」

「検討する価値はあるわね」


 こうして、『義歯』による歯の治療について、検討がなされていったのである。


*   *   *


 エルザが『アヴァロン病院』で義歯の話し合いに参加していたその時、仁はアーノルトと話し合っていた。


「ちょうどいい時に来てくれましたね」


 アーノルトが仁に言った。


「ゴウ君とルビーナさんが、新しいアイデアを披露してくれまして、その検討会を始めるところなんです」

「へえ……どんな?」

「『魔法陣の即応性向上』についてですね」

「ほう」

「是非、会議にご同席ください」

「喜んで」


 そんなわけで、仁は聞き役としてアーノルトたちの検討会に参加することとなったのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 次回更新は4月26日(日)12:00の予定です。


 20260424 修正

(誤)歯茎(歯根膜しこんまく・骨・歯肉のダメージは、程度によるものの自然治癒する。

(正)歯茎(歯根膜しこんまく)・骨・歯肉のダメージは、程度によるものの自然治癒する。

(誤)こうして、『義歯』による歯の治療について、検討がなされていったのである・

(正)こうして、『義歯』による歯の治療について、検討がなされていったのである。

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― 新着の感想 ―
 将来は歯が無くても食べられるように口の中に入れたものを粉砕するのと胃に入れたものを消化する小型なオートマターを作ろう。
>>ということで、仁と礼子はまずアーノルトのところへ。 >>エルザはまず病院長のハーシャ・クラウドに挨拶。 部外者なので許可をもらいに行きました。 >>そして歯科医は、虫歯のみならず、事故で折れた…
>>見学を終えた ハ「誰もそう思っては居ない」 エ「そうだろうとは思ってた」 仁「・・・・・」(´・ω・`) >>歯……なるほど ハ「駄洒落?」 仁「『ハハッ』とか」 エ「・・・・・・」(--メ)…
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