100-04 マグス岬
『惑星ヘール』に『マグス岬』を作り出す。
……という目標を掲げ、仁は行動を開始した。
「まずは場所を厳密に決定しよう」
一旦仁は礼子と『職人』10、11、12を連れてアルスの『マグス岬』へ。
そこの風景を『職人』3体に別角度から記憶してもらうわけだ。
それを老君に解析してもらうことで3次元データが得られる。
それを用いて『惑星ヘール』の『マグス岬』を整備しようというわけである。
「シュウキさんは、故郷の『足摺岬』とよく似た風景が気に入ったということだから、念入りに整備しよう」
『足摺岬』のデータがあれば一番よかったのだが、さすがにそれはないものねだりというものであろう。
とにかく、老君は得られたデータを解析し、必要な3次元データをおよそ5分掛けて構築してくれたのである。
* * *
一方、ハンナ。
『精神生命体』とのコンタクトについて老君と話し合う前に、ハンナは自分の考えをまとめている。
「うーん……まずは、『オリジナル』のおにーちゃんがこっちの時間に出現した時のデータがほしいなあ……でもあの時、老君は結界の中だったから観測していないんだよね……」
3899年7月2日のことである。
ハンナたちは『人造人間』として月にいた。
過去に戻った仁から、日時については聞いていたので、月で見守っていたのだ。
「だとすると、月の魔導頭脳、『ジャック』もデータを持っているかも」
そう思い至ったハンナは、月の『ジャック』と連絡を取った。
《こちらジャックです》
『ハンナです。ちょっと聞きたいことがあるのだけれど』
《はい、なんでしょう》
『3899年7月2日の時空間データってありますか?』
《『オリジナルのジン様』がこちらに出現した日時ですね》
『そうです』
《はい、ございます。そちら……ヘールですね。そちらへお送りしましょうか?》
『お願いします』
《わかりました。では、早速に》
こうしたやり取りをして2分後、月の『ジャック』から、データ入りの『魔結晶』が送られてきた。
ハンナは早速解析を開始する。
自分の家の地下に設置した、特殊な魔導頭脳を使って、である。
ちなみに名前は『ガウス』。
データ解析に特化した魔導頭脳で、ハンナが仕様を設計し、仁が製作したもので、『亜自由魔力素技術』も使われている。
「……あ……宇宙空間からの観測データだから、空間データは地上からのものよりも精度がいくらか高いんだ」
これなら、仁が現れた場所……パンドール大陸との距離の差による観測精度の低下は帳消しになりそうである。
「おにーちゃんが戻ってきた時の方向がわかるといいんだけどな……」
方向といっても、単純に3次元的な方向ではない。
多次元的に考え、方向を把握する必要がある。
「レーコおねーちゃんだって、最初におにーちゃんを見つけるまで、3601の世界を調べたって言ってたし」
大体の方向がわかれば、せいぜいが数十、うまくいけば数個の世界を調べれば済む可能性が高い、とハンナは考えている。
受け取ったデータを解析していくハンナは、仁の願いを叶えてあげようという想いに突き動かされていた。
* * *
『マグス岬』の3次元データを作成し終わった老君は仁と話をしている。
『御主人様、早速工事に取り掛かりますか?』
「そうだな、早いほうがいいだろう」
『わかりました。『ダイダラ』2体と『職人』300体を送ります』
「頼む」
やることが決まれば、老君のフットワークは軽い。
重作業用ゴーレム『ダイダラ2』と『ダイダラ3』の2体、それに技術ゴーレム『職人』201から500までの300体が工事現場である東海岸に送られてきた。
場所は、アルスの『マグス岬』とほぼ同じ緯度、北緯30度付近。
ここなら、太陽セランの見かけの高度はアルスと同じになるはずである。
「よし、早速工事に取り掛かってくれ」
「了解」
* * *
実際に工事を指揮するのは老君である。
各ゴーレムの目……視覚センサーを通じて現場の状態を把握し、302体のゴーレムに個別の指示を出す。
『亜自由魔力素技術』により性能アップした今の老君であれば、その機能の0.01パーセントでこれが可能である。
仁は現場監督……とはいえ、ただ見ているだけである。
その仁が見ているうちに地形は変わっていく。
岬の突端は切り立った岸壁となっている。
なので、元々の絶壁に多少の手が加わり、更に急峻に。
少し離れた場所には砂浜ではなく砂利の浜辺が。
全体に、日本の『足摺岬』に雰囲気は似ているが、規模はこちらの方が小規模であるので、工事は1日で終わった。
岬を中心に、東西南北20キロくらいの範囲の地形(海底含む)がアルスの『マグス岬』とそっくりになった。
つまり、工事を開始した翌日の夕方。
「うん、植生を除けばそっくりだ。よくやってくれた」
仁の目で見て、全く違和感がなかった。
岬から『ツェツィ島』も見えている。
『ご満足いただけて、光栄です』
職人201が代表で仁からの賛辞を受け取った。
「植生はロロナさんと相談してじっくりやっていくよ」
こうして、ヘールへ遺構を移動する、という一大プロジェクトが始まったのである。
いつもお読みいただきありがとうございます。
次回更新は4月17日(金)12:00の予定です。
20260414 修正
(誤)『わかりました。『ダイダラ』2体と『職人』100体を送ります』
(正)『わかりました。『ダイダラ』2体と『職人』300体を送ります』




