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100-03 方針決定

 ハンナが口にした、とてつもないアイデア。

 それは、『『精神生命体』に手伝ってもらう』というものだった。


「ハンナ……」

「あたしは、『今の』おにーちゃんより、『精神生命体』について詳しい……かも」


 それはとりも直さず、元の時間軸に戻った『オリジナルの仁』から『経験』した話を直接聞いているからに他ならない。

 こちらの『複体の仁』は『経験』ではなく『知識』として知っているため、理解度において半歩劣るのである。


「おにーちゃんが……あ、『オリジナルの』おにーちゃんが元の時代に帰る時、『自由魔力素(エーテル)の雲』のほとんどを消費したことで可能になったわけだけど」

「そうだったな」

「今回は物体を送り出すんじゃなくて連絡をつけるだけだから、そこまでのエネルギーは消費しないと思うんだ」

「なるほど」

「で、もしも手伝ってくれるんなら『精神生命体』なら自分の力でこっちに来られるんじゃないかとも思うし」


 通信の糸が繋がってさえいれば、それを辿たどってくることはできるだろう、とハンナは言った。


「できないなら来ない。ただそれだけだろうしね」

「そりゃそうだ」


 ここで老君も発言。


御主人様(マイロード)、第2惑星軌道付近の『自由魔力素(エーテル)濃度』はいまだに増加中です。ですのでそれを使えば有効利用、ということになるでしょう』

「ああ、それがあったな」


 太陽セランを中心に、濃密な『自由魔力素(エーテル)』が空間に分布している。

 同時に『自由魔力素(エーテル)波のノイズ』も空間に充満していると言われており、並の魔導機(マギマシン)は暴走してしまい、正常に働かなくなってしまうのだ。

 そのため、『惑星ヘール』の先住民だった『始祖(オリジン)』たちも、資源を内惑星に求めることはできなかったのである。


 だが、仁は違う。

 限定的ではあるが『(サブ)自由魔力素(エーテル)技術』を持っているからだ。

 これにより、『始祖(オリジン)』にはできなかった、『第2惑星ジパート』の探査を行うことができたのである(実際には『自由魔力素(エーテル)波のノイズ』はなかったのだが)。


「第2惑星軌道付近の『自由魔力素(エーテル)濃度』は、確か『自由魔力素(エーテル)の雲』の10倍以上だったな」

『はい、御主人様(マイロード)


 しかも、少しずつその範囲が拡大しつつあるのだ。

 仮に数万年後、アルスやヘールがその範囲に取り込まれた場合、全ての魔導具、魔導機(マギマシン)が誤動作、暴走する可能性が高い。


「使ってしまったほうがいい、ということもあるな」

御主人様(マイロード)、そのとおりです』

「よし、エネルギー源に関してはそれでいこう」


 『(サブ)自由魔力素(エーテル)波』の発生には、『自由魔力素(エーテル)波』の発生の100倍以上の『自由魔力素(エーテル)』を必要とする。

 通信のみとはいえ異空間に繋げるため、桁違いの『自由魔力素(エーテル)』が必要になるが、第2惑星軌道付近の『自由魔力素(エーテル)』はこの上ないエネルギー源であった。


「じゃあ、あたしは老君と協力して『精神生命体』に連絡できないかどうか研究してみるね」

「……頼んだ、ハンナ」

「うん」


 というわけで、まずは『精神生命体』とのコンタクトが最優先という、とんでもない結論となったのである……。


*   *   *


「さて、それじゃあ、できることをやっておくか……」


 仕切り直しである。


「『マグス岬』をこっちにも作っておこうと思う」

「うん、それならいいだろうな」


 地形を加工するだけのことである。

 ラインハルトが頷いた。

 建物の移動ではなく、こちらなら仁にも十分可能だ。


「そっちは老君と相談して進めておこう」


 そういうことになった。


「遺構についてはそれでいいと思うんだけどな、仁」


 グースが新たな意見を口にする。


「『初代魔法工学師マギクラフト・マイスター』に関しては記念館を作ったし、『賢者(マグス)』に対しても少し紹介されていると思うけど、まだまだ周知はされていないと思うんだ」

「それは確かにそうだ」

「そこを、今後アルスで行われる『世界史』の中に入れるかどうするか、も難しい話だと思う」

「そうだな……」


 先人の業績が広く知られるようになるのは喜ばしい。

 が、その反面、心ない者もいるわけで、世間に知られたことによって、遺構を傷付ける者が出てこないとは言い切れない。

 現に、現代日本でも文化財や国宝に落書きをはじめとした悪さをする者が後を絶たないのだから……。


 だからこそ仁は、先人たちの業績を広く知ってもらうと同時に、確実な保護をしたいと考えているのである。


「文化財の保護は、難しい問題よね」


 ヴィヴィアンも、その矛盾……一般公開して広く知ってもらいたいが、毀損きそんされる可能性を捨てきれないため躊躇ちゅうちょしてしまう……は悩ましい問題だ、と言った。


「まあ、『マグス岬』や『ツェツィ島』は、知ってもらう必要はないわけだしな」

「それはそうね。ジン君の言うとおりだわ」


 わざわざ不特定多数の人々に見てもらうようなものではない、とヴィヴィアン。


「だよな」

「かといって、人目に触れないように隠すというのも違う気がするものね」

「ヴィーの言うとおりだと思うわ」


 ステアリーナも意見を述べる。


「『マグス岬』が見える場所、ということで先代は『ツェツィ島』を墓所に選んだわけだし」

「そうよね、墓所を不特定多数の人に見てもらいたいと思うはずがないもの」


 ステアリーナとヴィヴィアンの意見は一致した。


「よし、それじゃあ、とりあえず始動だ」


 いよいよ仁が動き出す……。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 次回更新は4月14日(火)12:00の予定です。

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― 新着の感想 ―
精神生命体つまり幽体のようなものを呼ぶなら十字架とニンニクと流れる水を用意しとかないと!  文化を残すなら精密な絵が残っているのを基にしたミニチュアというジオラマと写真の記念館と日記などの複写でいい…
精神生命体に… 連絡とれるんかい!(笑) 来られるんじゃないかと… 前に誰かさんに憑依していた個体がいましたね(笑) 来たとしても誰に取り憑かせるのかな? 専用の自動人形を作って依代にするとか? …
>が、その反面、心ない者もいるわけで、世間に知られたことによって、遺構を傷付ける者が出てこないとは言い切れない。 仁がタフンをかけまくった遺構を傷つけるなんてほぼ不可能では?w 基本的には警備ゴーレ…
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