97-77 試作機への道
いよいよ『思考会議』についての打ち合わせが始まった。
「一昨日でしたっけ、グローマさんが『読み出しの魔法と暗示を組み合わせたような魔法ができないか』と言っていましたよね」
「ああ、言ったな」
「僕らも考えてみました」
「ほう、で、どうだった?」
「はい。できそうな気がします」
「おお、そうか! 聞かせてもらえるかい?」
「もちろんです」
ゴウは、『長老』ターレスに教わった概念を説明していった。
「なるほど……」
「こう組み合わせて、ここをこう変えていけば、人体への悪影響はなくなるはずです」
「だが、接続しにくくなるのではないか?」
「そのくらいでいいと思います。多少意識を集中するくらいで……」
「ふうむ……そのへんは可変にできないかな?」
「できると思いますよ。試験機では可変にしましょうか」
「それがいいだろう」
と、こんな感じで進んでいく。
ルビーナも、エイラに処理の流れを説明している。
「本人が与えたいと思う情報だけを送り出すというか、読み出させたいよなあ」
「それについても、考えていますよ」
「ふうん、ルビーナとゴウは、昨日こんなことを考えていたのか……主任に怒られるぞ。休むときは休めって」
「あ、あはは……」
その主任も同じ場所にいました、とはいえないルビーナであった……。
午前10時の中休みまで、ゴウとルビーナは『新しい』(実は古の)魔法の説明を行ったのである。
* * *
「うーん、さすがゴウとルビーナだな!」
休み時間、エイラは感心することしきりだ。
「昨日、いろいろ調べたんですよ。ジン様にもアドバイスをもらいました」
「それでもだよ、これができたならすごいぞ!」
「さすがだね、君たちは」
グローマも脱帽のようだ。
中休みのあと、具体的な構成を検討し始めた。
「これを使えるなら、ここをこうしよう」
「あ、ジン様の案、すごくいいです」
「人体に影響がなく、思考を送り出せるというのはすごいですね」
「実は、大きなヒントは『データベース』にあったんですよ」
「え? 本当かい?」
ゴウの説明にエイラが驚いた顔をする。
「はい。『人体に影響のない思考読み取り』で検索すると出てきます」
実は昨日の午後に入力されたデータである。
『始祖』が使っていた遊戯用の魔導機に使われていた魔法技術だ。
それは、言うなれば魔法版の『VRゲーム』。
そう、『始祖』は、会議ではなく遊戯のためにこの技術を使わんがため、研究を重ねたらしい……。
「ううん、そういうキーワードで検索したことはなかったものなあ」
そして、そのキーワードがこれまで使われていないことも、ログから確認済みなのである。
かつて使われていた技術を元にしているため、構成の検討もとんとん拍子に進み、昼休み前には九分どおりできあがっていたのである。
* * *
「……と、いうわけだったのよ」
「ふふ、活躍したんですね、ルビちゃんとゴウさん」
ゴウとルビーナは、メルツェと共に昼食を摂っていた。
今日は『アヴァロン1』の食堂だ。
「そういうメルちゃんは?」
「うーん……私が教えてもらった内容は、すぐに現場で使えるものじゃないですからね」
「あ、そっか」
「でも、心構えとか、考え方とか、いろいろ勉強になりました」
「それならよかった……のかな?」
そんな感じで、昼休みは気分転換とリフレッシュできたゴウとルビーナ、そしてメルツェであった。
* * *
そして午後。
「ここをこうすれば、より安全になるのでは?」
「そうだな。……これだと効率は、まあ3倍弱、ってところかな?」
「それでも、3日掛かる会議が1日で済むと考えれば効率アップですよ」
「それはそうだな」
「あとは、各自が自分の姿をどう投影させるか、でしょうか」
「そうだなあ……どうするべきかな」
これについても、『人間同士が向き合い声を交わし合う、旧来の会議も捨てがたい』のではないか、という疑問に対し、1つの答えを出している。
すなわち、『アバター』もしくは『キャラ作成』の考え方である。
仁が現代日本にいた頃少しだけ読んだことがある近未来的小説に登場する『VRMMO』つまり『仮想現実大規模多人数オンライン』(Virtual Reality Massively Multiplayer Online)のようなものだ。
これはコンピューターネットワークの中に仮想空間を作り、3Dの仮想体を使って実際に五感を伴う一人称視点で遊ぶゲームのことである(仁がいた時代の地球ではまだ実現してはいない)。
行うのはゲームではなく会議であるが。
「これは本人の姿をそのまま投影すればいいでしょう」
「それが一番わかりやすいな」
「ちゃんと表情も変わるし、手も動かせますよ」
「それはすごい」
元がゲーム用の技術なので当然の機能が付いている。
「つまり、『魔結晶』の中で会議を行うわけか」
「そうなります、エイラさん」
「じゃあさ、会議室も現実に似せて設定しなきゃな」
こちらは現在『世界会議』を行っている会議室を参考にすればよい。
「それは僕が作るよ」
ゴウが自ら引き受ける。
「よし、これでひととおり決まったな。それじゃあさっそく試作を作ってみよう」
「はい」
「よっしゃ」
「はい!」
「いわば『会議室』にする『魔結晶』は特別に品質のいいものを使いたいな」
これは仁が『純化』や『結晶化』を使えば、低品質な『魔結晶』でも最高級のものになる。
検討を繰り返した先ほどまでとは違い、それを形にするという作業はやはり楽しかったとみえ、皆喜々として加工・組み立てを行っていく。
おかげで、午後4時には試作機が完成したのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日6月30日(日)は14:00に
『蓬莱島の工作箱』を更新します。
https://ncode.syosetu.com/n0493fy/
お楽しみいただけましたら幸いです。
20240630 修正
(誤)検討を繰り返した先ほどまでは違い
(正)検討を繰り返した先ほどまでとは違い
20241016 修正
(旧)
仁自身はやったことがなかったが、『VRMMO』つまり『仮想現実大規模多人数オンライン』(Virtual Reality Massively Multiplayer Online)のようなものだ。
(新)
仁が現代日本にいた頃少しだけ読んだことがある近未来的小説に登場する『VRMMO』つまり『仮想現実大規模多人数オンライン』(Virtual Reality Massively Multiplayer Online)のようなものだ。
これはコンピューターネットワークの中に仮想空間を作り、3Dの仮想体を使って実際に五感を伴う一人称視点で遊ぶゲームのことである(仁がいた時代の地球ではまだ実現してはいない)。




