96-90 4つ脚歩行のアイデア披露
エイラとグローマへの、アーノルトの助言はまだ続いている。
「雪山を歩く時には、いろいろな追加装備が必要なんだけどね」
「……はあ」
「雪が軟らかいと足が潜るから、『かんじき』というものを足につけるんだよ」
「かんじき……ですか」
「うん。要は接地面積を増やして圧力を下げ、雪に潜りにくくするんだ」
「ああ、なるほど……そういうことですか」
「参考になったかな?」
「はい。接地部分の面積を増やしてみます」
「うん、頑張ってくれ」
「はい!」
自分のアドバイスがどう生かされるか、楽しみなアーノルトであった。
* * *
同日夜。
仁とエルザは1日の様子を話し合っている。
「『中継基地』も無事済んで、よかった」
「うん。そっちはどうだ?」
「看護師教育も、順調」
「なら安心だな。問題はないのか?」
「今のところは。ナルンも頑張っているし、ライモンドも女性の中にあって、頑張ってる」
「そうか」
「そっちの、『魔導高分子合成機』は?」
「運用上、いろいろな要求が出ているよ」
「ん、わかる」
基本的に、産業レベルなら1基が1つの樹脂、とするのが望ましそうだとエルザは言うのだった。
「そうだよな」
「量産機は、かなり大型に?」
「どうかなあ? 小型じゃ間に合わないのは確かだけど、巨大なものを1基よりは大きめのものを3基、の方が生産調整しやすいんじゃないかな?」
「ん、故障時にも有利かも」
「故障時なあ……」
『ミツホ』の『工場』も似たような扱いである。
400年前に仁一行が訪れた際にはほぼ稼働していない状態であった。
仁に頼らずとも修理できるのが望ましいが、万が一のことも考えておく必要がある。
「修理用のゴーレムを数体用意して、互いに整備・修理し合うようにしておくか」
「ん、それから非常用のゴーレムも、どこかに」
「そういう非常用のシステムがあるといいな」
「『アヴァロン』も、同じじゃない?」
「そうだな……」
同様に、『アヴァロン』の修理も重要である。
これについては、『アヴァロン1』『アヴァロン2』『アヴァロン3』それぞれの『管理魔導頭脳』にそういう機能を付加しておけばいいかな、と仁は考えた。
今後『アヴァロン4』以降が増えたなら、そこにも、ということになる。
「今すぐじゃないから、ベターな方法を考えてみよう」
「ん、賛成」
そういうことになった。
この日は話し合いはそこまでとし、床に就いたのであった。
* * *
『アヴァロン』午後10時。
夜勤の者以外は休んでいる……はずだが……。
「うーん……やっぱり、これしかないかな?」
「うん、どう考えてもこれが一番よさそうだ」
まだ休んでいない者がいた。
言わずと知れた、エイラとグローマである。
「この方法でいけそうだ」
「うん、主任に……ああ、もうこんな時間だ……」
「これ以上研究をしていたら怒られそうだな」
「いや、もう十分怒られると思うぞ……」
と、ようやく休むことにしたようである……。
* * *
明けて2月4日。
眠い目を擦って起きたエイラとグローマは、朝食を済ませると早速技術主任であるアーノルトのところへ。
「主任、案がまとまりました」
「おお、それはよかったね。……だけど、昨夜遅くまで検討していたんじゃないかい?」
「う……そ、それは……」
「図星か」
「はい……」
「熱心なのはいいが、身体のことも考えないと駄目だよ」
「すみません……」
「まあいい。それじゃあ研究室へ行こうか」
と、一言お小言を喰らわせた後、アーノルトはグローマと共に彼らの研究室へ向かった。
「主任、わざわざどうも」
「エイラ、君も自主残業したんだろう? 駄目だよ?」
「え? あ、はい、すみません……」
「2人とも、健康管理には気を付けてくれよ? あまり酷いようだと、監視が付くようになるからな?」
「はい、気を付けます……」
「まあいい。それじゃあ改善案を聞かせてもらおうか」
「はい」
「エイラ、説明してくれ」
「いいのか?」
「エイラのアイデアが主だからな」
「……わかった。…………主任、主任のアドバイスで考えたんだ。『脚』じゃなくて『足』。接地部の面積を増やせば、安定度が増すわけだよね?」
アーノルトは頷いた。
「そう、そういうことだ」
もちろんこれは解の1つでしかない、だがなかなか優れた解である。
「まだ詳細検討はしていないんだけど、『足首』から下を広く取って、接地面積を増やす。足首部にも緩衝装置を入れ、ショックを吸収する。……今はこんな感じ」
「うん、いいと思うよ。まあ、まずは模型で試してみることからかな?」
「そうですね、やってみます」
今度はグローマが答えた。
「全長1メートルくらいの模型なら十分検証できるでしょう」
「そうだな。楽しみにしてるよ」
そう言ってアーノルトは研究室を出ていった。
「ありがとうございました」
エイラとグローマは、その背中に礼を言うのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日4月4日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20240404 修正
(誤)「はい。設置部分の面積を増やしてみます」
(正)「はい。接地部分の面積を増やしてみます」




