96-08 『アヴァロン3』の食堂
仁とマキナ、2人の試作が成功だったので、より機能を高めるための検討が開始された……が。
「ちょうどお昼だな」
時刻は正午、昼休みとなった。
皆で食堂へ向かおうとしたが、デウス・エクス・マキナ3世が、
「ここから『アヴァロン1』の食堂はちょっと遠いから、『アヴァロン3』の方の食堂に案内しよう。で、今日は俺のおごりだ」
と言った。
「わ、それは楽しみです!」
はしゃぐルビーナ。
元『アルカディア』であった『アヴァロン3』の食堂は、仁も訪れることを想定して作られているので、『アヴァロン1』以上に充実している(主に仁の好みという意味で)。
「ここだ」
「わあ……」
3分ほど歩いて到着したそこは、仁がファミリーレストラン風にデザインした内装の食堂である。
『アヴァロン1』の食堂は社内食堂風だったので、雰囲気が違う。
テーブルは基本4人掛け。必要に応じて移動させれば大人数にも対応できる。
椅子はより座り心地がよく、壁際はソファ風の作り付けだ。
造花ではあるがグリーンインテリアも飾られており、寛げる空間として構成されていた。
「めったに人は来ないけどな」
とはいえきちんと掃除されており、清潔感がある。
ウェイトレス風の衣装を着た自動人形が水を持って注文を聞きに来てくれるあたり、ほぼファミレスである。
「なんというか……変わってますね」
こういう雰囲気の食堂はあまり多くないので、ゴウもルビーナも、エイラもグローマも物珍しそうにきょろきょろしている。
メニューを見て各自が注文を終えると、ウェイトレス自動人形は下がっていった。
ちなみに『日替わり定食』(ゴウ)、『海の幸定食』(ルビーナ)、『ハンバーグ定食』(エイラ)、『カツ丼』(グローマ)、『天丼』(仁)、『うな丼』(マキナ3世)と、それぞればらばらの注文であった。
* * *
「ああ、美味しかったです」
「マキナ様、ごちそうさまでした」
「おう」
他に客もいないので、食後のお茶を飲みながら6人はゆっくりしていた。
だが。
なんとなくそわそわしているゴウとルビーナを見て、
「何だ、のんびりするのは性に合わないか?」
とマキナ3世が声を掛けると、
「えっと……実はそうなんです」
という答えが返ってきた。
「仕方ない奴だな。……じゃあ、少し技術の話でもするか」
「はい!」
その返事に苦笑しながら、マキナ3世は口を開いた。
「今回、エイラとグローマが考案した動作解析方法だが、初代『魔法工学師』はどうやっていたか、それを話そう」
「お願いします」
「うん、聞いてみたいですね」
ゴウとグローマの言葉に頷き、マキナ3世は話を続けた。
「人間そっくりのゴーレムや自動人形を作るためには、やはり動作解析が必要不可欠だったわけだ」
「そうでしょうね」
「『走る』という動作を解析する際には、モデルとなる人間の身体に『マーカー』を取り付けて走ってもらい、その『マーカー』の座標を記録して解析したらしい」
「なるほど……」
「体全体の動きを記録して解析するのは情報量が膨大なものになるが、『マーカー』だけだとそれほどでもなくなるからな」
「そうか……そこまでは思いつけなかったなあ」
ちょっと悔しそうなグローマ。
「いや、解析に時間が掛かるだけで、体全体の動作解析の方がより精密なデータが取れるし、馬の場合はかえってよかったんじゃないかと思うぞ」
仁がフォローする。
人間と違って、馬の場合はこちらが望むような動作をしてくれるとは限らないわけで、マーカー解析よりも体全体のデータを解析する方が向いていただろうというわけである。
「なるほど、それを聞いて少しほっとしたよ」
エイラも気にしていたらしい。
「……で、マーカー解析の場合は……」
マキナの話は15分ほど続き、ゴウ、ルビーナ、エイラ、グローマらには好評であった。
* * *
「さて、作業再開だ」
午後1時、昼休み終了である。
午前中に作った『動作解析用』と『体内解析用』の試作1号機2台の性能向上についての話し合いだ。
「まず考えられるのは『魔導頭脳』の性能アップだろうな」
「それは当然だ」
「次は記憶容量アップ」
「わかる」
「表示する画面はもう少し大きいといいな」
「ああ、確かにな、……じゃあ、画面を大きくする分、厚さを薄くして軽量化に努めるか」
と、意見が多出した。
それらを元に、仁とマキナ3世はそれぞれが作った試作機を改良することにしたのである。
「今回は作業を見学させてください!」
「そうだな、いいぞ」
仁とマキナ3世が同時に工房へ行くので、空いた時間に講義をしてくれる人がおらず、それなら作業の見学がしたい、というわけだ。
ゴウとルビーナは仁の、エイラとグローマはマキナ3世の作業を見学することになったのである。
* * *
「処理速度を上げるなら、品質のいい『魔結晶』を使うのが一番手っ取り早い」
「ですね……」
「それができないなら、こうだ」
仁は『純化』と『結晶化』を使い、並品質の『魔結晶』を高品質のものに変えてしまった。
「画面を大きくするのは単純に素材の問題だから、こっちは楽だ」
その分コストアップになるから、どこかでコストダウンの検討をした方がいいかな、と仁は補足。
一方のマキナ3世も、同じようにグレードアップを行っていくのだった。
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