96-09 試作の完成と製品への展開
「さあ、できたぞ」
「こっちもできた」
ほぼ同時に、仁とマキナ3世の試作2号機が完成した。
大きさ・形状は、前回とほとんど変わっていない。
「す、凄かったね」
「ええ……」
「これが本気のマキナ様か……」
「凄まじいね……」
見ていた者たちは口々に称賛と呆れと畏怖の混じった言葉を口にした。
「さあ、テストしてみよう」
「……楽しみですね」
ということで、まずはマキナが作った『動作解析』の方からだ。
「今回は秒間50コマで10秒間、20コマなら25秒間撮影して解析できる」
「随分性能アップしたんですね」
「最終的には秒間1000コマで30秒くらいは撮影したいな」
高速動作の解析ならそのくらいは必要だろうとマキナ。
「うん、高速で動いているゴーレムや飛行機、自動車なんかの動作解析ならそのくらいは必要だろうな」
「……」
「……」
仁とマキナの2人は納得した顔で頷き合っているが、他の4人は『ええ……』という顔で顔を見合わせていた。
仁がいた世界には1秒間に20万コマも撮影できるカメラがあるのだが、それを知らないのだから無理もない。
* * *
仁が作った試作2号機も成功。
かなり鮮明に体内の様子を観察することができた。
「これを使えば、肺結核もすぐに見つけられるな」
とはいえ、この世界には結核患者は少ない。
体質的なものか、魔力があるからか。
が、他の肺疾患にも使えるので、無駄になることはないだろう。
「よくは知らないけど、レントゲンとエコーとCTとMRIを合わせたような魔導具になったようだな……」
これはこれで、医療現場で大いに活躍してくれるだろうと思われた。
* * *
再度検討が行われる。
「構造、使い方はだいたいこれでいいかな?」
「いいと思います」
「あとは外見だな」
緊急用であれば小型な物の方がいいが、実際の医療現場だと、据え置き型の方が使い勝手がいいという場合もあるだろう。
「確かにそうですね」
「両方用意するか」
「小型はこれまでの発展形でいいとして、据え置き型はどうします?」
「それこそ、使い方を含めて検討しよう」
ここで仁は、先日少しだけ見た『MRI』の外観を思い出した。
そしてそれとなく誘導してみる。
「まず医療用だが……患者は仰向けに寝た状態、というのが多いんじゃないかな?」
「そうでしょうね。具合が悪いわけですから」
「ならば、仰向けに寝た状態の患者を頭から足の方へスキャンする方式はどうだろう?」
これに応じたのはデウス・エクス・マキナ3世。
「いいんじゃないか? 患者の体勢としても理にかなっているし、一部分だけのスキャンだってできるだろうし」
「そうですよね。仮に腕のスキャンだって、横になって行えばいいだけですから」
「僕もそう思います」
マキナ3世の意見に続き、他の者たちも肯定的な意見を口にする。
が、敢えて仁は、1つの可能性を口にする。
「仮に、横になれない患者がいたらどうする?」
「立ったままでスキャンする……でしょうか?」
「その場合、ベッドと本体を90度回転させられればなんとかなるな」
「あ、確かに」
こうした意見が交わされた。
そして最後に、
「手軽に、気軽に使えるような魔導具もしくは魔導機にしたいものだな」
と仁は付け加えた。
「あ、確かに、準備に時間が掛かったり、手順が面倒だったりすると、使うのが面倒だと感じてしまいますよね」
「ゴウの言うとおりだな。それこそ、聴診器のように手軽に使えるようにしたいな」
この思想はその後の医療機器の開発に受け継がれていくことになる。
* * *
「……と、いうわけさ」
「そう、それは楽しみ」
同日夜、仁はエルザに報告を行っていた。
「そういう計測器ができれば、医療の正確さが向上する」
「そうだよな」
「目指すのは、『誰でも』患者を助けられる病院。一部のベテラン治癒師、ベテラン医師ではなく、医師なら誰でも患者を治せる、そんな環境」
「うん、わかる気がする」
「で、名前は?」
「え?」
「新医療機器の、名前」
「あー……考えてなかった。エルザが付けてくれ」
「いいの? じゃあ……『魔力波身体走査機』……『MBS』は?」
「MBSか……いいんじゃないか?」
というわけで、この医療機器は『MBS』と名付けられたのである。
「あとは、心電図と、脳波がわかるといいんだけど」
「そうだな。魔法で電気信号をどうやって検知するかがポイントだと思う」
「電気……『雷属性』?」
「そう考えればできるかもな……うん、できそうな気がしてきた」
要するに『雷属性魔法』を検知する魔導具を作り、その強さを電圧として縦軸に表示、時間軸を横軸に取ればいいわけだ。
「時間軸をどうやって定量化するかだな……」
「時間を測定する魔法って、ないんだっけ?」
「ない、な……」
「ないなら、作れない?」
「検討してみる価値はあるな」
この場合、ネック(問題点)になるのは基準となるクロックである。
「数を数える魔法って、あった?」
「ええと、あるぞ。『計数』だな」
『計数』は、ネジや釘など、同一形状のものを数える工学魔法である。
「それを改造すれば、クロックを数える魔法にできない?」
「……できそうな気がするな……だが、できたとしても、そのクロックをどうするか、だ」
「うん……」
この場合の『クロック』は時計ではなく、電子回路において各部の動作の歩調が合うように周期的に発する信号のこと。
コンピューターの動作速度は、この信号の周波数(クロック周波数)に依存する。
「1秒に1回、とか10回、とか、定常的に何か……」
「そんな都合のいい魔法はなあ……」
仁とエルザは共に頭を悩ませるのであった……。
いつもお読みいただきありがとうございます。




