93-25 アンダーギ鉱山 2
『アンダーギ鉱山』の外れにある坑道奥に作られた拠点。
仁は老君から詳細を聞いているところ。
「そこはどんな感じだ?」
『はい、御主人様。荒削りに岩肌がむき出しではありますが、居室、研究室、台所、シャワールームにトイレまで揃った居住空間になっています』
「ほう……で、住人は?」
『はい、御主人様。今現在確認できたのは2人と22体です』
「22体……はゴーレムか?」
『はい。そして住民2名は20代半ばくらいの男性2名です。ゴーレムは汎用と思われる成人男性タイプ2体と、身長40センチの小型ゴーレム20体です』
これで大分様子が飲み込めてきた、と仁は感じた。
特に小型ゴーレム。それを作ったのはおそらくここの住人であろう、と。
「逃げた『風力式浮揚機』は?」
『はい御主人様、岩棚の下に隠してあります』
「なるほど、滑走路のいらない『風力式浮揚機』だからな。岩棚の下なら上空からは見えないし、格納庫にはもってこいだ」
『周囲には偽装用のシートが張り巡らせてあります』
周囲の岩と同じような迷彩柄のシートで岩棚の下を囲んでいるため、遠目にはそこに格納庫があるとはわからないようになっていた。
「用意周到だな」
『はい。そして工学魔法の腕前も、かなりのもののようです』
「だろうな」
拠点の様子を聞いただけでも想像がつくというものだ、と仁は思った。
「それじゃあ、これから仁Dがそいつのところへ行くのは危険かな?」
『今の段階ではまだ情報不足で判断がつきかねます。ですが仮定と推測を交えての考察では、『敵対視される可能性』があります』
敵対視はされるが、危険はない。
今の仁Dもまた、人並みになるようリミッターが掛かっているとはいえ、強度・出力ともに100倍に強化されているので危険はないということになる。
とはいえ目的が『賊についての情報収集』なので、いきなり敵対することは避けたいわけだ。
「やっぱりここは『第5列』の出番か」
『はい御主人様、それがいいと思います』
「わかった。適任は誰がいる?」
『はい、御主人様。エゲレア王国西部でしたら『レグルス17』、通称『ビクトル』がいます』
『ビクトル』は商人としてエゲレア王国西部の町を巡っているということだった。
そして『アンダーギ鉱山』にも幾度か買い付けに来てはいるが、まだ件の人物とは面識がないという。
「ちょうどいいな」
『はい、御主人様』
買い付けに来て、新たな採掘者に挨拶を……ということなら不自然さはないだろうと考えたわけだ。
『早速手配いたします』
今現在はどこかの町中ではなく、移動中という建前で蓬莱島にいるという。つまり例の改造中ということだ。
『あと10分で終わります』
「ちょうどいいな」
『第5列』の改造も終盤だという。あとは『遊撃』担当の改造を残すのみということだった。
「随分進んだな」
『はい、御主人様。あとは『デウス・エクス・マキナ3世』の『アルカディア』関連の改造を残すのみです』
「そうか、頼むぞ」
『はい、お任せください』
* * *
『アンダーギの町』は鉱山から歩いて30分……2キロほど離れた場所にある。
そこまで『ゴーレム馬車』に乗ってきた、という体裁で『レグルス17』、通称『ビクトル』は到着。
前日は野営、その前はアンダーギの2つ手前の『ナカライ』の町にいたことになっている。というか実際にいたので辻褄合わせは問題ない。
「やあ、久しぶりだな」
「ビクトルさんか。元気そうじゃねえか」
ちょうど見知った鉱夫がいたので、『レグルス17』=『ビクトル』は声を掛けた。
「おかげさんでね」
「ここんとこ来なかったが、どうしてたんです?」
「ああ、北の方へ行ってたんだ」
「というとヤダ鉱山ですかい? 向こうはどんな感じで?」
「相変わらずさ」
「というと、宝石類の採掘でやんすね」
「そういうことさ」
「とするとビクトルさんは、こっちには金属鉱石の買い付けで?」
「そのつもりだ。他にも依頼されているがな」
このような会話からも情報が得られるので、『レグルス17』=『ビクトル』は面倒がることはない。
「こっちは何か変わったことがあったかい?」
「新人の採掘者が来ましてねえ。あまり掘ってはいませんが、技術者のようでいろいろ修理してくれてますぜ」
「へえ。名前は?」
「確か『ミハイル』って言ってたかと」
「なるほど、ミハイルか」
これで調査対象の名前が判明した。
「そのミハイルさんは今日はいるかな?」
「そういやここ2日くらい見かけてねえっすね。坑道に潜ってんじゃねえですかね?」
「というと、自分の坑道を持っているのかい?」
「そうそう。鉱山の外れだからかなり安かったようですぜ。その分、大して鉱石は採れないみたいですがね」
「なるほどな。どうやら変わり者らしいな」
「違えねえ」
「それじゃ、またな」
「俺も今度は金属鉱石を狙うから、買ってくだせえよ」
「その時はな」
この相手から聞けることは聞いたので、『レグルス17』=『ビクトル』は男と別れ、まずは『トレードセンター』へ。
そこで無難な金属鉱石を購入する。
「お、ビクトルさん、しばらくだねえ。買い付けかい?」
「うん。今回はレア鉱石が欲しくてね」
「レア……というと、アダマンタイトかミスリルとかかい?」
「それもあるが、バナジウムやモリブデンの鉱石もあるといいかな」
「そりゃまた珍しいものを探してるなあ」
「まあ、メインはアダマスロックだがね」
アダマスロックはアダマンタイトの主要な鉱石である。
かなり重い鉱石で、比重は6から10。
重い方がアダマンタイトの含有率が多い。
『レグルス17』=『ビクトル』が購入したのは比重が7から8のもの、そこそこ優秀な鉱石である。
ひととおり購入したあとで、『レグルス17』=『ビクトル』はその店の主人に尋ねる。
「俺の顧客で、珍しい石を集めている収集家がいるんだが、何かいい石はないかな?」
「うーん、心当たりはないですねえ。そもそも珍しいというだけでは売れませんからね。……あ、そうそう、この前『貝みたいなオパール』を売ってた奴がいましたっけ」
「ほう……『その他』の区画だね?」
「だと思います。……もう売れてしまったみたいですが。買ったのは『魔法工学師』だって話ですぜ」
「まあ、行ってみるさ」
こうして『レグルス17』=『ビクトル』もまた、情報を集めていくのである……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20230618 修正
(誤)ですが仮定と推測を交えての考察では、『敵対視される可能性が』あります』
(正)ですが仮定と推測を交えての考察では、『敵対視される可能性』があります』
(旧)「自分の坑道を持っているんだっけ?」
(新)「というと、自分の坑道を持っているのかい?」




