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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
93 アヴァロン改革篇
3703/4340

93-24 アンダーギ鉱山

 また場面は変わって、エゲレア王国西部、アンダーギ鉱山。

 ここでは『魔法工学師マギクラフト・マイスター』が鉱石を買いに来たということでちょっとした騒ぎになっていた。

 とはいえ、大声で噂されたり、鉱石を買ってもらおうというやからが『ハリケーン改』の前にたむろしたりという程度だが。


「邪魔ですので道をあけてください」


 半ば強引に礼子が人垣を押しのけていく。

 仁Dはその後についていく形だ。


 向かうは『トレードセンター』。

 アンダーギの町で最大規模を誇る公認の取引所である。

 ここでは個人対個人、企業対個人、個人対企業、企業対企業の直接取引ができる。

 仲買人ブローカーを挟むことなく取引ができるので互いに利益が大きいのだ。

 仁がまず向かったのは当然と言えよう。


*   *   *


 『トレードセンター』は中学校の体育館くらいの広さがある(天井はそこまで高くなく、4メートルくらい)。

 売り手側は『個人』と『企業』で分かれており、さらにそれぞれ、『金属鉱石』と『魔結晶(マギクリスタル)』、『その他』と、3つのコーナーに分かれている。


 仁Dは『個人』で『その他』を扱っているブース(区画)へ向かった。

 『その他』を扱っているブースは3つあり、2つは『魔結晶(マギクリスタル)』も扱っていたが、1つだけは『その他』だけであった。

 仁Dは、まず『その他』だけのブースを覗いてみる。

 そこは若い男が店番をしていた。


「いらっしゃい。……もしや、ジン殿ですかい?」

「そうだよ。何か掘り出し物はないかと思ってね」

「それでしたらアクアマリンの原石がありますぜ?」

「アクアマリンか……見せてくれ」

「へい」


 出てきたのは子供の拳くらいあるアクアマリンの原石。

 ここから透明度の高い部分をカットしていけば、おそらく親指の先くらいになってしまうだろうと思われた。


「いいな。これをもらおう。幾らだ?」

「へい、5万1000トールですが。5万に負けておきましょう」

「高い。ここから使える部分を残して切り出すとかなり小さくなるぞ、4万だな」

「4万8000でどうです?」

「4万2000」

「うーん、4万5000」

「まあ、いいだろう」

「毎度あり」


 礼子がポケットから金貨4枚と(=4万トール)銀貨50枚(=5000トール)を出して支払った。

 そのブースには、他に目ぼしいものはなかったので、仁Dは隣のブースを覗いてみる。


「いらっしゃい。……聞こえてましたよ。『魔法工学師マギクラフト・マイスター』ジンの旦那なんですね! こりゃあ幸先がいいや」

「……」


 店番? 店主? は30くらいのノリのいい男だった。

「ジンの旦那、こんなのはどうです?」


 店主? が出してきたのはルビー、サファイア、トパーズの原石。いずれも質がいい。


「いいな。まとめて買おう。幾らになる?」

「まとめて? そりゃありがたい。それじゃあ全部で10万トールでどうです?」

「ずいぶん安い気がするが、いいのか?」

「そりゃもう。『魔法工学師マギクラフト・マイスター』にお買い上げいただくなんて名誉ですからね! その代わり……」

「その代わり?」

「こいつが一体何なのか、わかったら教えてもらえませんかねえ?」


 そう言いながら店主が出してきたのは巻き貝……のように見える宝石であった。


「……オパール……か?」

「やっぱりオパールですかい?」

「ああ、間違いない」


 こっそり『分析(アナライズ)』したが、オパールであった。


「なんで、こんな巻き貝の形に?」

「こいつは複雑な過程を経ているんだよな……」


 貝殻が海の底に沈み、土砂が堆積し、圧力が掛かり、年月を経ると化石になる。

 その後、その化石が溶けてなくなることがある(貝殻は炭酸カルシウムが主成分で、酸に溶けやすい)。

 すると貝殻の形の空洞が残るわけだ。

 そこに二酸化ケイ素を含んだ水が浸透し、水分が抜けると二酸化ケイ素が残る。これが濃縮されるとオパールになる。

 これはそれであろうと思われた。


「はあ、よくわかりませんが珍しいものなんですねえ」

「そうだよ。いくらで売る?」

「うーん、価値がわかる人なら高く買ってくれそうですが、そんな人はいそうもないので……1万トールでどうでしょう?」

「買った」


 ファイア(オパール独特のきらめき)もあり、貝の形もかなり綺麗に残っている。

 現代日本なら100万円はくだらないだろうから1万トール(約10万円)なら即買いだった。


*   *   *


 こうした買い物の合間に、仁Dは情報を収集していく。

 一番の収穫はといえば、ここ1ヵ月ほどの間に、採掘量が急に増えたという情報だろうか。

 その理由は、新人採掘者が現れ、採掘器具や採掘用の魔導具、ゴーレムなどを格安でメンテナンスしてくれたからだという。


「なかなか腕のいい『魔法工作士(マギクラフトマン)』でもありますぜ」


 とは金属鉱石を販売していた店主の言葉。

 他にも、


「採掘権を買って、自分でも掘っているけどな、あの場所じゃろくな鉱石は取れないと思うぜ」


 という情報があった。


「その場所は?」

「鉱山エリアの突外とっぱずれだ」


 ゆえに鉱脈も少ないはずだが、とその店主は言った。


「ありがとう」


 そしてもう1つの情報。


「『風力式浮揚機(ブローフローター)』が飛んでるのを見たんだが、誰の持ち物かな?」

「ああ、そりゃ今言った新人採掘者のだ。なんでも自分で作ったらしい。『魔法工学師マギクラフト・マイスター』が気にするなら、かなりの腕なんだな」

「実際、腕はいいと思うよ」

「そりゃいいことを聞いた」


 名が売れる前に仲よくなっておくとしよう、と、冗談とも本気ともつかないことを言う店主に礼を言い、仁Dは『トレードセンター』を出た。


*   *   *


「さて、少し見えてきたな」

『はい、御主人様(マイロード)

「技術者系の採掘者、そして人気のない坑道」

『はい、少なくとも地下に拠点がありますね。『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で確認できました』

「そうか、やはりな」


 蓬莱島では仁Dを操縦している仁が老君と相談を始めていた……。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。

     https://ncode.syosetu.com/n5250en/

     お楽しみいただけましたら幸いです。


 20230617 修正

(誤)とはいえ、大声で噂されたり、鉱石を買ってもらおうとおうやから

(正)とはいえ、大声で噂されたり、鉱石を買ってもらおうというやから

(誤)冗談とも本気ともつかないことを言う店主に礼を言い、仁は『トレードセンター』を出た。

(正)冗談とも本気ともつかないことを言う店主に礼を言い、仁Dは『トレードセンター』を出た。


(旧)ここでは個人対個人、企業対個人、個人対企業の直接取引ができる。

(新)ここでは個人対個人、企業対個人、個人対企業、企業対企業の直接取引ができる。

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― 新着の感想 ―
[一言] >半ば強引に礼子が人垣を押しのけていく。 強引にとかやべえw >その理由は、新人採掘者が現れ、採掘器具や採掘用の魔導具、ゴーレムなどを格安でメンテナンスしてくれたからだという。 メンテ…
[気になる点] >>ここでは個人対個人、企業対個人、個人対企業の直接取引ができる。 最後は企業対企業な気もするのです。 [一言] >>アンダーギ鉱山 サーダー >>半ば強引に礼子が人垣を押しのけ…
[一言] >ここでは『マギクラフト・マイスター』が鉱石を買いに来たということでちょっとした騒ぎになっていた。 場末の地方鉱山に大企業の社長が買い付けに来たような物だから、目立っても仕方ないですねww…
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